お元気でいらっしゃいますか?
私は暑さより寒さに強いのですが、よる年波には勝てず(?)もっぱらモコモコとした布団と仲良くしてます。
寝転んで読書するのが一番の楽しみです。
最近は軽い短編小説が殆どで、今日紹介するのはその中の一冊です。
坂木司の『物件探し』。
離婚後、家を失った女性。一人っ子で両親がいないし親戚も没交渉、子供もいない。
「要するにこれは天涯孤独という状態に限りなく近づいてはいまいか」
現在ウイークリーマンション暮らしの30代半ばの女性は、崖っぷちに立たされた気分になってる。
とりあえず家探しに出掛けて遭遇した街は
「ゆっくりと歩を進めると、頭上で古式ゆかしい造花の飾りがひらひらと踊っている。
立ち並ぶ個人商店はどれも年季の入った建物ばかりで(中略)
あたりにはお茶を焙じるいい香りが漂い、八百屋が客寄せする威勢のいい声が聞こえる」
この人ホントに30代なの?と思う昔風の趣味の女性です。
暗中模索で知らない街を彷徨くこの人の前に、奇跡の様に現れた不思議な不動産屋の老女(テレパスを持ってるみたい)。
彼女の紹介によって、自分ピッタリの格安物件に住む事ができ、かつアパートの大家の老夫婦の世話を週一する事で他の住人と親しくなれて孤独感からも解放されました。
「な、話あるわけ無い」とは思いますが、心安まる一編でした。
作者坂本司さんは生年月日、学歴経歴は公表してますが、性別は秘密です。
作家の人生に興味を持つより「作品」そのものを読んで欲しい、という思いからだそうです。
現実に疲れた時に、パラパラページをめくって本の世界に入る喜びやときめきを、この作家も大事にしてるのだな、と感じました。
(上の写真は高円寺駅前で小説とは全く無関係ですよ)
北海道内のエゾクロテン。
昔はかなりいたそうですが、今は準絶滅危惧種になってるそうです。
とっても愛くるしい仔なのに毛皮目的の乱獲で数が激減してしまいました。
人間様の営利目的の商売と自然の状況はどうも一致して無い様です。
『物件探し』のように奇跡の様に無欲な不動産さんなどこの世にいませんけど、物欲だけで動く世の中だとやっぱり寂しいとは思います。