それぞれ好みが全然異なって、そのおかげで邦画の時代劇、戦中戦後の洋画、その頃評判の洋画、ジャンルの異なる名画を鑑賞出来ました。
今じゃ遠い昔、昭和20、30年代のことです。現実とは思えないギラギラ光る暑い夏に、帰り来ぬ映画の中の世界を懐かしんでます。
大体に於いて、肉食の時代であってもその手の映画でなければ、恋愛に関してはずっと控えめな表現がされてました。
幼い私が、そこで初めて目にしたキスシーンは、1957年上映された『くちづけ』の中の川口浩と野添ひとみの切ない触れ合いです。
この二人は後にホントの夫婦となり芸能界を退いて、非常に仲睦まじかったですが、好事魔多しで、夫は癌で若死に、妻も後を追うように亡くなりました。
残念ながら写真がup出来ませんが、野添ひとみさんはたいそう美しい大きな瞳を持つ方でした。オードリーヘップパーンのような感じの丸い瞳です。そこから芸名が付いたと言います。ただしヘップパーンよりずっと素朴な印象がありました。
彼女が有名になったのが、『まごころ』と言う映画、死病を患う薄幸の乙女と良家の学生の恋の話です。
『くちづけ』では若い二人の事情を抱えて会うこともままならない恋が描かれてます。戦時中の話ではありません、経歴や家庭事情がお互いを縛った訳。
ネットどころか携帯など無い時代、お互いの愛を確かめる事も出来ない、苦しい恋の末の初めての接吻。
幼い乙女(?)の心をグイグイ引きつけました。キスって素敵❣️とその時思ったのですがね。
未経験のままの青春時代、意地悪なサークル仲間が「所詮、粘膜と粘膜の触れ合いに過ぎん」とかほざくので、夢が醒めてしまったのです。トホ。
ともあれ、日本人は人目に立つラブシーンを非常に恥ずかしがる民族のようです。
その前は記録にも残って無いけど、多分江戸時代の封建制度が影響してるのでしょうね。庶民はともあれ武士階級の女性はかなり制約されてたようです。
感情を露わに出すのが下品な事とされたのです。この感覚が戦中に非常に強くて、男女の人目に立つ触れ合いは心無い人に告発されて、村八分にされたとか聞きました(リアルタイムで経験した人に聞いた)。
そこで、庶民の暮らしを映す邦画の世界でも永くラブシーンそのものは出てこなかった。
邦画史上初めてのキスシーンとは、昭和21年5月上映の『二十歳の青春』であったそうですよ🤭
それもGHQに強力に勧められたそうです。彼らは、日常的にハグやキス(家族や友人)してる自分達の習慣を日本人に身につけて、同化して欲しかったのですかね。
ただ、あれから長い長い年月が過ぎているのに「恋は秘事」の言葉が未だ生きてる土壌です。これって民族性なのでしょうか?
それだけ、この『まごころ』と『くちづけ』のネーミングは柔らかく懐かしく響いてまいります。