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読書の森

夏樹静子『白愁のとき』

旅の疲れが出たのでしょうか、珍しく眠れぬ夜更けです。

最近、自分達世代にとってお馴染みの有名人の突然の死が相次いでひどく心細い思いがします。
同時に、もう私はいつ死んでもおかしくない歳になったと感じます。
不思議なことに、母の介護をしていたときには全然意識する事がありませんでしたが。

いつ死んでもそれは寿命で仕方ないが、呆けて死にたくは無いと、痛切に思うのです。
医者に怒られそうですが、最近の私はよっぽど身体に異常が無い限り通院検査を避けてます。
日本人の寿命がこれだけ伸びたのは医療技術が進化した賜物だと思います。日本ほど、安い医療費で高度の医療を受けられる所はないとも思いますが。

ただし、身体が治療を受けて丈夫になろうと、脳の衰えは避けられないです。
哀しい事に身体と脳の老化の進行は並行して起こらないようです。

物凄い反発を受けそうで、ずっと言いませんでしたが、これが医者嫌い介護嫌いの自分の本音です。


こんな時、ふと昔読んだ夏樹静子の小説、『白愁のとき』が思い浮かびました。

これは働き盛り(50代)のエリート造園技術者が若年性アルツハイマー病に罹ったお話です。

男らしく鋭敏な神経の彼は、年齢を経て俗になった妻とは全く異なる清純な女性に心惹かれていきます。その時点では知的機能の衰えが見られなかったのに、恋の進行と共にアルツハイマー病が進行していくのです。

現実にこんな事にあったとすれば、非常に怖い残酷な話です。作者は綿密に調べた上でアルツハイマー病に罹った状態を描いているのでリアリティがあります。

今では犯罪並みに御法度(?)の「不倫」の物語ですが、不倫の当事者からすれば必死の純愛なのですね。

病気の進行は残酷で、これ以上お互いに苦しみたくないと最愛の恋人に別れを告げた彼。ラストシーンが印象的でした。
確かな記憶が途切れていく朧げな頭を持て余しながら、自分を縛っている何ものも捨てたくて、高価な腕時計を引きちぎって投げ捨てるのです。

この小説の筋書きは、私の記憶を頼りに綴りました。確かではありませんので、原作と違ってたら本当にごめんなさい。
ただ読んだ頃には全然分からなかった男女の想いや切なさが、今とてもよく理解できるようになりました。
遅過ぎる理解でありますが。

追記:写真は小説とは関係のない住吉大社付近のものです。



読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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