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読書の森

飢えは世界を動かす 

こんな婆が論じられるような簡単なテーマではありませんけど、本日は「戦争(戦い)と飢え」の相関関係について日頃思う事をお話したいと思います。



漫画の神様、手塚治虫作の『すきっ腹のブルース』は戦後日本の混乱期に食糧が足りなくて餓死(!)に至る現実をリアルに描いた作品です。
私小説じゃなくて私コミックとでも言うのでしょうか。ほぼ等身大の作者の姿が描かれてます。

昭和21年、漫画家志望の学生、ふとした偶然から大寒鉄郎は美しい編集者河原和子と出会います。和子は鉄郎の漫画を読んで感動し、編集長に紹介しました。

これで当面の収入が得られると喜んだ鉄郎ですが、次第に優しくて綺麗な和子に心を惹かれていくのです。

そして、、勇気を奮って彼女にデートを申し込み、彼女は暖かく受け入れて「自分の家に遊びに来ないか」と言ってくれるのでした。

それが6時の約束、しかし。「腹が減っては戦ができぬ」と彼は行きつけの安い料理店で材料を仕入れてくる店長を待つのです。

ところが、、店長は「買い出しの取り締まり」に捕まり、待てど暮らせど現れない。
若い鉄郎は意地でも料理を食べたくなる。この時点で食欲が彼の全てを支配してる。
6時はとうに過ぎてるの。

やっと帰ってきた料理人は呆れて、、「一時の食欲より人を思う気持ちの方がずっと大切だ」と言ってしまった。それでも彼は出来上がりまで待ち全て食べきります。
「お腹が空き過ぎて死ぬよりマシ」という事。
お腹を満たした彼は元気を回復して一躍和子の下宿に向かいます。

が、哀れその部屋の窓は固く閉ざされて灯りは点いていません。ここで簡単に諦める鉄郎はまだまだ若い学生なのですね。

上の写真はこの物語の最後のシーンです。

昭和20年当時の闇市の食事風景です。

同じく昭和20年の漫画。


日本の戦前、戦中、戦後を通して、食糧難が国民を襲いました。日本は食糧需給率が非常に低い国なので、流通が途絶えると大変な事になるのです。
ちょっと前なら「餓死?そんなバカな事が今の日本にあるわけないよ」と笑って済ませられたのに。
ひょっとして、このままいくと現実に起きそうで怖いです。

見出しの写真はマリーアントワネット。お嬢様育ちでワガママではあるけど、お高くもなく冷たい人でもない、お世辞に乗り易く、そして当時の文化には造詣が深い女性だったそうです。
非常に非常識で世間知らずのため、当時のフランスの国民事情を全く知らずに「民はパンが食べられなくて困ってるそうです」という臣下の諫め(贅沢を慎め)を本気にせず「パンが無いの?じゃあお菓子を食べればいい」と言ったとか。

経済危機で明日のパンを得るのにも苦しむ国民感情を逆撫でする彼女の発言が伝わって、血気盛んなフランス国民の気持ちを逆撫でしてフランス革命を招いたと言われてます。

血で血を洗うフランス革命も元はと言えば、飢えからきたのかも知れない。

そんな事がしきりと気になる昨今であります。







読んでいただき心から感謝いたします。

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