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読書の森

横山秀夫『動機』

作家、横山秀夫は「事件記者」出身です。
「事件記者」と言ってもピンと来ない世代が多いと思いますが、「主として警察署などに詰めて、刑事事件や事故を受け持つ新聞記者」を指します。

この言葉は昭和30年代始めのTVドラマ『事件記者』から使われてました。
そのドラマの中で競合各社の行きつけの飲み屋が何故か同じ「ひさご」。
和み系の優しく美しい女将が居るお店です。
他社を出し抜くニュースを狙ってる各紙の猛者が和気藹々と世間話で盛り上がる、人情ドラマの世界がありました。
かなり緩い社会ではあったのですね。

横山秀夫の作品はこの古く懐かしい時代を彷彿とさせるものがあります。

外見は取っつき難くて無骨な刑事、頑固で一途で正義感に燃えてる硬派、そのくせ人情に脆い人、そんな主人公が活躍するミステリーであります。


『動機』は、某県警本部警務課で一括保管していた勤務外の警察官の警察手帳が何者かによってゴッソリ盗まれた事件から始まります。

本来なら警察官の責務として警察手帳は常時自己責任で保持していなければなりません。これは法律で定められております。
ただし、一定の役職以上の上司の命が有れば、これを預けても可、という例外の条項があるのです。

小説の中の主人公、貝瀬警視は「手帳紛失防止」の為、一括保管制度を提案して実施されたのです。
プライベートに於いても警察手帳を四六時中持つと、「ついうっかり」紛失という事態が起きがちだからです。

実は貝瀬の本音は別にあります。
警察官と言えども人間である、プライベートな世界、家族団欒の短いひとときも、警察手帳の呪縛を受けるのは、非人間的な制度ではないか?
という深い思いがあったからです。

しかし、これが恐ろしい結果を招いてしまった。
マスコミが聞きつけ情報が流されて市民の怒り嘲笑を買う顛末が、貝瀬には目に見える様に分かります。

警察官を騙る詐欺事件防止の為には発表せざるを得ない、迫られる中、貝瀬の頭に閃いたのは、「内部犯行」の文字でした。
内部犯行の可能性があれば、調査の為僅かな時間稼ぎが出来るからです。

そして貝瀬の必死の調査探索で暴かれた真犯人とその犯行動機は?

おそらく、大震災やコロナ禍を生き抜いた人は誰も考え付かないであろう、動機でした。
有為の人の為に行われた思いやりで犯行を犯した。今なら決して許されない犯行は犯人側の持つ条件によって温情で見逃される。
な、訳ないよ、という展開が待ってますよ。

この作品は1999年発表当時ベストセラーになり、TVドラマ化もされてます。

時代背景の差を実感する物語です。



この頃、花屋の店先が寂しくなったな、と実感いたします。
世の中がこうでは、精神的な要素以上に経済的に、花を買う余裕が失せてしまったのかも知れません。

特に今の時期は売れ残りの鉢が目立ちます。
そこで見つけたこの一鉢、安いけど正価なのですが、哀れ全滅寸前のトレニア、別名夏すみれ(芸名でなく夏に咲くすみれなので)です。
手入れが下手になったか、愛情不足か、最近お陀仏にした植木がありますので、供養(?)のつもりで購入します。

多分目立たなくて知られてないので、売れ残りになってしまったのでしょうね。
可愛い黄色と紫の混じった花を咲かせてます。

この花言葉が「ひらめき」なんです。何か私にも閃いてくれないでしょうか?

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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