読書の森

セピア色の昭和20年代



私にとって、昭和20年代の思い出は一様でない。
外側から見ると、惨めだったとしても、内側で豊かな生活を送る事も出来る。
私の場合、豊富に与えられた本の世界と目まぐるしく変わる環境や人々の面白さ、四季に恵まれた自然が、忘れられない思い出を作ってくれた。

私が二歳の時、祖父が亡くなった。
祖父の死後、負債を整理し、大家族は離散した。
父の仕事は定まらず、両親と共に転々とした訳である。

ただ、戦後の人々の暮らしはそれぞれ波乱万丈で、私一人がどうのこうのと言った時代ではなかった。

かすかに覚えている、黒い別珍の衿のねんねこと母の背中の温もり、外は粉雪が舞っていたようだ。
そんな昔の事を記憶してるはずは無いのか。
夢の様な思い出の中のシーンである。



大垣の緑町(?)に落ち着いた時、仔犬を飼った。
朝食は甘い紅茶にパンを浸して食べた。
ちょっとモダンだと思った。

家のそばに川が流れている。
飼い犬に意地悪をするご近所のデブ猫に腹を立て、猫を抱いて川に捨てようとしたら、怒られた。

子どもは死を実感出来ない、かなり残酷な事も平気で出来るのだなと思った。

ともあれ、緑町は優しい町で、お城にも駅にも近かった。
駅前の噴水の中に亀がいた。
夏になると、豊富な水を活かした水饅頭が売られた。

私は長い事、水菓子とは水饅頭だと思い込んでいた。
冷たい饅頭をつるんと呑み込む食感は今でも一番好きである。

読んでいただき心から感謝いたします。

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