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連城三紀彦は1981年発表された『戻り川心中』の叙情的な魅力から人気の出た作家です。
この本を一読した私は、大正ロマンを感じる一途な悲恋の物語の世界に引き込まれました。
私に限らず、彼の描く美しい文章と物語の古風な背景から恋愛小説だと幻惑された読者は多いと思います。
実は、『戻り川心中』は恋物語というより、巧緻なトリックを仕掛けたミステリーだったのです。それを知って私はガッカリしたのを覚えています。
本日紹介するミステリーにも屈折した男女の愛情が潜んでいます。
物語は、ある晩、37歳独身の女性弁護士の部屋に突然正体不明の男が飛び込んでくるところから始まります。
登場人物は彼女と彼と、その男の殺された妻(?)だけ。そして、三人は青春を共にした旧知の間柄だったのです。
もどかしい二人の会話から、次第に殺人事件の全容が明らかになっていく物語です。
この殺人の状況をテレビに繋いだビデオカメラが映していたという設定、1990年代末の作品ですが、面白いなと思いました。現代でもパソコンなどで応用すれば、十分通用する小道具ですね。
推理の展開と同時に描かれた男女の愛憎は、他の作家の作品と一味違ったものがあります。
繊細で優しくて、恐ろしく残酷、疲れるものがあります。
連城三紀彦はダンディな男性でしたが、非常にシャイな人で生涯独身でした。私としては「隔靴掻痒、情熱をもってもう一押しすればいいのに」と思います。ただそういう自分も独身ですので文句言う資格はないのでしょうね。
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この本を図書館で借りた帰りに、「幸せの黄色いメロンパン」を買いました。自然できれいな黄色のパン、甘くてとろける美味しさでしたよ。