多くの問題(制作費・スポンサー・脚本・俳優・規制ほか)を抱える日本のテレビ業界ではもはや大人が楽しめるドラマづくりを期待するのは困難と言っていいかもしれません。
そんなことを考えているとき、あのドラマのことがふと浮かんできました。アマルがまだティーンエージャーだった頃、このドラマのエンディング近くから涙が出始めて、家族(親や妹)に泣き顔を見られまいとすぐに風呂に入りしゃくり泣き、湯船で泣き顔を洗った思い出があります。多感な年齢でした。
半世紀近い年月が経っているのにあのドラマのことは忘れられないんです。
北海道放送(HBC)の制作、TBS系列・日曜劇場で放送された『りんりんと』(1974年作品)脚本は倉本聰さんのオリジナル。母親を田中絹代さん、息子を渡瀬恒彦さん、父親(声)を大滝秀治さん。
東京から北海道・苫小牧へ向かう1隻のフェリーを舞台に、母親と息子の交錯する人生の感慨を描く。2人だけの、たった2日間の船旅。そこで感じ取った、老いた母の人生の黄昏の姿や人生の重みを、息子はどう感じるだろうか。また、母はなぜ、息子たちを捨ててまで故郷に向かうのか。
【ストーリー】
東京・晴海埠頭。信(渡瀬恒彦)は、年老いた母・さわ(田中絹代)とともに、北海道・苫小牧行きのフェリーに乗り込んだ。苫小牧は、さわにとって生まれ故郷。50年ぶりの帰省に、さわはまるで観光旅行にでも出かけるように浮き立っていた。だが実際、苫小牧に向かう目的は、そこにある老人ホームに入るためだった。息子たちの反対を押し切って、さわはそこに行くことを選んだ。信には、さわの心中が分からなかった…。
アマルがこのドラマを観たとき、田中絹代さんに馴染みがなかったので(昭和の大女優とも知らず)単に高齢の女優さんが演じているものとだけ観ていました。 脚本も倉本聰さんとはドラマ視聴後に知りました。父親役の大滝秀治さんは声だけの出演にも関わらず(さすが劇団民藝の名優)姿が浮かぶような見事な演技でした。
ドラマは老人ホームへ向かう息子と母のやりとりを見ていて、どこか『楢山節考』姥捨て山のストーリーとも重なるものがあり、ホームへ送り届けてから最後は一人車を運転し泣きながら帰る息子(渡瀬恒彦さん)の姿に涙があふれ出しました。
このドラマは映画監督の是枝裕和さんも若い頃見ていてお好きなようですね。
話しは飛んで、テレビ離れ(ドラマ離れ)の昨今ながら、小松左京氏の『日本沈没』をTBS(日曜劇場10月期)ではどのように描くのかちょっと楽しみです。
優しい時間【最終回】
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