前回は、B級プッシュプルとトランスリニアバイアスとを比較したが、今回は範囲を広げてAB級やA級も含めて比較してみる。トラジスタはデフォルトのモデルを使用。トランスリニアバイアス回路は、「図5 初代アンプの出力段の簡略化した回路」として示されていたもの。
1KHzの正弦波の出力をFFTして、最も大きい高調波成分が基本波に対して何デシベルかを表にした。
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B級 (0.95V) |
AB級 (1.3V) |
A級 (1.9V) |
トランスリニアバイアス |
大信号 (28.28V p-p) |
-74.9 dB (3次) |
-48.9dB (3次) |
-79.8dB (3次) |
-64.5dB (3次) |
小信号 (2.828V p-p) |
-55.7 dB (3次) |
-101dB (3次) |
-122dB (3次) |
-69.4dB (3次) |
微小信号(0.2828V p-p) |
-97.8dB (3次) |
-144dB (3次) |
-155dB (16次) |
-105dB (3次) |
AB級は、原理からして分かるようにある振幅から歪が増加する。B級は、今回 28Vp-pの信号に対して最良となるようバイアスをとったので途中の電圧で一旦歪が増える。トランスリニアバイアスだと、決して歪自身は小さくないが、振幅で歪率が大きく変化することはない。
さて、これで良いのか?
[1]: 黒田 徹、「ひずみ率0.0005%! 40W高効率パワー・アンプの製作」、トランジスタ技術 2019年5月号、p179-189.