心の傷

人の心は幾つもの面を持つ立体のようなものである

サイコロを思い浮かべると分かりやすい

この物質体を通して

一時に現れることが出来るのは

一つの面だけである

同時に複数の面を現出させる事は出来ない

心に傷を負う時

その時現れていた面に傷が刻まれる

他の無傷な面が出ている時

その人は傷のことを完全に忘れている

傷が刻まれた面が出た時

その人は傷を思い出し

その痛みに苦しみ

人に助けと理解を求め

多くの場合無意識に

同じ傷を他人に負わせようとする

しかし

傷の面が出ている時にしか

その傷の治療は出来ない

また

傷付いた心の時間が進み

自然治癒が進むことはない

傷の面を伏せている間

その心の面の時間は停止しているからである

心の傷を癒そうと望む者に

試練に似た体験が訪れるのは

以上のことが理由である

傷付いた面を現出させなければ

癒すことが出来ないからだ

癒しを促進するには

専門的な知識と経験が必要だが

傷と向かい合い

心の時間を進ませるだけでも

自然治癒は進む

一番避けるべき事は

汚れた心で傷口に触れること

触れさせることである

往々にして

善意で人の傷口に触れて来る者がいる

その無知なる善意から心を守らなくてはならない

また他人の心の傷に汚れた心で触れてはいけない