Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

シフォン色の人

2009-03-14 | tenue... yosoou
先週末、東京&実家にひょいと一瞬だけ帰ったのは、法事があったためでした。
久々に家族と犬たち、懐かしい顔に会えるのはとても嬉しいけれど、用が法事なだけに、ずっと誰もが黒い服を着ているのが、ちょっと。
黒はアクセントに効かせるとかっこいい色ですが、全員が着ているとなんだか雰囲気が。哀悼の意をかきたて過ぎてしまい、気分的にも視覚的にもあまり盛り上がらない光景であることは確かです。
しかも、素材がしっとりと重厚感をもっていると、なおさら・・・。
色の心理的影響について、あらためてその重要さを認識しました。


さらにさかのぼって、3月初め、寒い雨の日。
大阪の友達と梅田を歩きました。
お喋りしながら歩く場所は、ショッピングビル。
彼女のバースデーランチを『ブリーゼ ブリーゼ』の『ブノワ』でとり(予約入れていただいたのですが)、あとは軽やかな春の服たちを見ながらあれこれ他愛ない話をする。
人とお洋服を見に行き、その人に似合うものを見るのが、今でもとても好きです。
共に冬の装いのわたしたち、お互いに当ててみるのが春のふんわりした素材の綺麗色たちばかりで、印象がそれでがらっと変わるのを楽しみました。

しっとりした落ち着きを静かに漂わせ、目鼻立ちのくっきりした背の高い彼女には、春の服として、パリッと爽やかな綿の生地がよく似合いました。
さくっと辛めの白いシャツ、きりっとシンプルなライトグレーのワンピース。などなど。
どれもワードローブにないということで、余計に相性の新鮮さが魅力的でした。

大人になってくると誰もがただでさえ似たような服を選んでしまいがちなので、

「いかに新しい挑戦をし、見慣れた自分に対して新しいプレゼンテーションを出来るか」

が、魅力の発露に不可欠なのだと思います。
装いに限らず、想像もつかなかったものとの出会いは尽きることなんてないから、いつもその感激・喜びを予感していたい。
服でも、出来事でも。

もとからシフォンのようなしっとり・ふんわりした魅力がある人には、さらりと乾いた肌触りの綿の生地。
それも、太陽の下が良く似合うような、パステル寄りの涼しげな色が最高です。
人柄の潤いが、かえって引き立ちます。

逆に、動きがちょこまかした不器用タイプなら、ここぞと優雅なシフォンの生地を。
布の揺れる柔らかな残像で印象を和らげ、実際の動きもシフォンに倣った優しいものに導いてくれる。
色はやっぱり明るく、透けるような風合いを目いっぱい楽しめるように。
淡い卵色、ピンク、ラベンダー、ライムグリーンなどが女性の潤んだ肌色にはよく溶け込んで似合います。
肌寒い日だって、色を合わせたビビッド色のやわらかストールを首にぐるぐる巻いてみたり、カッチリしたラインのジャケットを羽織ってみたりと、好きなように遊べて楽しい。

「どうしても黒が多くなる」
女性がよくつぶやいてしまう言葉ですし、実際自分も黒い服ばっかりを安心感を求めるあまりに着ていたことがありますが、喪服の群れを見ていて思うに、黒一色の格好はやっぱり《未来への期待感》のようなものを抱かせません。
そしてそういう心持は、怖いことに「習慣」になってしまうように思うのです。

黒を着るなら、最上級だけを、覚悟を持って。
逃げない黒、美しい黒を、キリリと着る。・・・自信あふれる銀髪の世代になれてから、かな?わたしの場合は。

ともあれ啓蟄の春は、シフォンのやわらかな明るさと質感。
綿の発色のきりりとした清潔感。
常にどんな変化をも身軽に歓迎できるような精神でいたいから。
これを心の色にして、暮らしに広げていこうと思います。

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