靴ひとつで

久々に、一目惚れしてしまった靴。
金曜日の昼休み、D&Gの前を通ってハッとした。
急いで引き返して、つくづく、マネキンが履いている様子、ガラスの棚にしゃなりと置かれている様子を眺め、いったんはそこで引き揚げたものの。
夜、会社を出てから、待ち合わせの前にちょっとだけ、のつもりでブティックに寄り、今度は履いてみたら。
その心地良い足のおさまり具合に、ゾクゾクしました。
しかも、靴だけ見るより、履いた感じが、断然キレイ。

「35.5はひとつしかありません」

の声に、ああ、ふらふらとお財布を出してしまいましたよ。
けれど、靴ばかりは出会いなので、逃したら絶対後悔する。
（下着もそうね。肌に直に触れるものはみんな、条件が厳しくなるものですよね）

赤が溶け込んだ茶色の革は落ち着く。ストラップのほんのりピンク色がかわいい。
この色たち、ぴったり肌色に溶け込み、わくわくさせられる。
靴底の金色がなめらかに光り、（地面に触れる底は履く前に張るので隠れちゃうけど）
中敷の、ピンク地に踊る黒い水玉模様がお茶目。
そして、ヒールの小気味良いライン。
美しい線を描きながらも、しっかりぴったり、立つ時・歩く時のバランスをとってくれるこの位置も、実用的で素晴らしい。

うれしくて、部屋の中で履いて、歩き回る。
歩き心地に、うれしい緊張感があって、気持ちを高揚させる。
靴ひとつで、幸せ。
やめられないわ。
こんな出会いは、女を愉しむことを、やめられなくさせる。