BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説20-21「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-26 21:27:32 | ★ディスティニー20章
 真樹もそれは同じだったようで、
「飲ませられすぎて急性アル中で救急車? でも前の事務所ならあるのかなあ…」
 そしてらしくもなく口ごもる。が、思い切ったように、
「何かこんなこと言いたくはないけど、俺たちはロックだっていうのにさー、結局はザ・芸能界だよね。環境の大半が」
「いきなりどうしたの?」
と、諒は何でもないように返すつもりだったが、苦笑いになってしまう。
「兄貴は別に何も昨夜も言ってくれなかった。でもやっぱりあの出稼ぎはまずかったんだと思うんだよね。かなり嫌なことがあったのかもな、って」
 そして、
「それしか考えられないと思うんだよね、他の事はうまくいってるし」
とも言う。
 しかし、諒は真樹の言葉を待つしかなかった。真樹の方も諒が何も言わないので仕方なく続ける感じだ。
「諒も知ってると思うけど、俺たちがあの大事務所の保護を受けてるみたいに言われてるのが…」
 諒はますます困ってしまった。
 自分はここで言ってしまった方がいいのだろうか…
 でも、あんなけがらわしい出来事、口にするのも嫌だ…
 真樹も目をそらしたまま、
「でも社長は契約はちゃんとクリアになってるから安心しろってさ…」
 しかしやっぱり真樹には何かを見通されていたようだ。
「諒、何か知ってるんじゃないの? 兄貴には言わないから俺には話してよ。もう俺もそんなにちょっとやそっとのことじゃ驚かないから言ってみてよ」
 それでも諒には決心がつかない。すると真樹は目をそらしたまま、
「兄貴は…諒は聞いてた? その…兄貴に横恋慕してたオッサンがいて…」
 諒はショックで血の気が引いていくのを感じていた。それを見た真樹が、彼らしくもなく真っ青になるのも…
「ごめん、あの…俺もあくまでウワサでしか聞いてないんだけど…離婚して子供とも別れて…」
 それは諒が初めて聞く話だった。
「…で?」
「一緒になるつもりだったって…」

★BLロック王子小説20-20「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-26 21:23:07 | ★ディスティニー20章
「諒、ごめん…下戸の三田さんがライブ良かったって盛り上がってくれてたのが嬉しくて…すすめられて、悪いなと思ってつい一杯だけって…」
 麻也にそう言われれば諒も何も言えなくなる。三田だってバンドの不完全な状態はわかるだろうに、酒の席を盛り上げてくれたのだ……
(そういう場から変な噂が出ないようにしてくれたんだろうな…でもだからって王子様を無断で誘拐されても…)
 そんな時、部屋の電話が鳴った。
ー諒、ごめん、そっちに俺の携帯ない? 
 真樹だった。見ればテーブルの上に真樹の携帯が…真樹と話したかった諒は、
「あるよ、持っていこうか?」
ーお願いしていい?
 諒は喜んで引き受け、
「真樹にケータイ届けてくるわ」
とだけ麻也に言いおいてさっさと部屋を出た。
 真樹は携帯を受け取ると、ごめんねと言い、諒を部屋に招き入れた。
「兄貴共々、昨夜はごめんね。迷惑かけちゃって」
「いやいや俺こそ…」
 諒と同じく疲れた様子の真樹はベッドに腰掛け、
「ごめんね。俺も色々考えるんだけどさ、でもやっぱり諒ほどの苦労はしてないから…」
「いやいやいきなりどうしたの? 俺、全然苦労なんかしてないよ」
「それでさあ、兄貴に飲ませないには…」
 と、真樹は苦り切った表情で、
「二次会で日本酒ばかりの店にするくらいしかないと思うんだよね。兄貴は日本酒嫌いじゃん」
「あ、そういえばそうだね」
そうなのだ。そのことを諒に訊かれたことすら麻也は不快な様子だったのを、諒は覚えている。
「昔は親父と飲んだりもしてたんだけど…そうだなあ、前のバンドから帰ってきたら、飲まなくなってたんだ。一升瓶でさえ、見るのも触るのもイヤ、みたいな…どういう生活してたんだろうって、親父も親戚のおじさんも不審がってた」
暴力? イッキ飲みの強要? そんな事が諒の頭をよぎる。

★BLロック王子小説20-19「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 21:27:36 | ★ディスティニー20章
 ややこしくなるので、もう遅いからと女性たちは帰して、諒は男三人を部屋に入れた。
「一体何があったんですか? 鈴木くんまで巻かれてしまって! ひど過ぎますよ!」
と、須藤が怒るのに、諒はケンが色々助けてくれたことと、ポラロイド写真を見せながら王子様の撮影会の顛末を説明した。
「まあ麻也さんが無事にこの部屋に戻ってこれたので良かったです……」
と、疲れも痛々しい様子の鈴木が言えば、
お灸は明日たっぷり据えさせてもらいます、と須藤は言う。
 真樹は周囲への申し訳なさと兄への怒りがないまぜになっているのが諒にも伝わってくる。
 しかし諒にとってはパートナーの問題なので、自分から謝った。
「……ごめん、俺も明日からは二次会に出て、責任持って連れて帰るから」
「いや、俺の方こそ……」
それが聞こえているのが聞こえていないのか麻也はあらぬ方を見たまま、
「諒、服脱がせてぇ~めんどくさい……」
と叫ぶ……
 諒もあきれてしまった。
 しかしとりあえず事故はなかったので、須藤たちは帰っていった……
 二人っきりになると諒は、ベッドの上で麻也のそばに座り込んでしまった。
「麻也さん……」
麻也も横になって眠ってしまいそうな様子である。まあ、麻也もストレスがたまるのだろうが……
 でも、服薬もままならない状態だというのに……は腹が立って仕方がなかった。
 いくらストレスが溜まっているとはいえ、どうしてこんな時に酒なんか飲んだんだろう……
 明日はまだ移動日だからいいようなものの、ライブの打ち上げの度にこの人はまた同じことを繰り返すんだろうか……
(まだツアー前半なのに!)
こんな壊れた姫君を連れてツアーを続けるのか……

 次の日の朝。諒は怒りを押し殺しながら麻也の分も荷物をバッグに詰めていた。よっぽど言ってやりたかった。何考えてんの? バカじゃないの?……
ベッドには二日酔い気味の麻也が毛布にくるまっている。

★BLロック王子小説20-18「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 20:40:53 | ★ディスティニー20章
 すると、麻也はまたまたウキウキと、
「諒、あんよのアレ、出して」
(あのアンクレット持ってきてのか、ここまで…)
 しかしさすがにこの状況では、諒も喜べなかった。
 それでも、仕方なく諒は麻也のバッグから例の誕プレのアンクレットを取り出して渡した。
 それを勝手に受け取った三田は、
「わー、素敵!…ペリドットなんだ…いやぁ、やっぱり全部本物で麻也ちゃん飾りたかった…」
すっかり出来上がった麻也は得意気に、
「諒がくれた誕プレ。諒の目の色とおんなじなんらよ…」
ペリドットとゴールドの、細いながらも美しいアンクレット。
 三田はますます盛り上がり、
「諒くん凄い!何より麻也さんだけだわ、これ似合うの…諒クンの愛を感じる…」
さらに麻也は得意そうに、
「諒ったら、これつけた俺撮るためこんな立派なカメラ買っちゃって…」
「違うじゃん。麻也さんからのプレゼントだったんじゃん。」
 居合わせたみんながびっくりした。
「麻也さんからのプレゼントなの! すご~い!」
 そんな妙な空気の中、仕方なく諒は麻也の写真を撮り始めた。
 麻也も調子に乗っていつものフォトセッションのようにあれこれとポーズを取り始める。
 まあ酔っているので可愛い瞬間もあるけれど…イマイチ…
 ポーズをあれこれするうちに麻也は、
「疲れちゃった。諒、もう寝ようよぉ~」
 公衆の面前でなんてことを、と諒は焦ってしまったが、
「いやーん、可愛い~」
と女性陣はメロメロだ。
「じゃあ、私たちもアクセサリー外すわね」
 ありがたいことに三田たち女性チームは自分たちがつけたアクセサリーを回収して、ティアラだけは置いていった。
「それじゃあ諒くん、明日写真楽しみにしてるわね。おやすみなさい~」
と、三田たちが部屋を出て行くところで鉢合わせたのが、鈴木と真樹と須藤だった。

★BLロック王子小説20-17「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-24 21:31:44 | ★ディスティニー20章
「諒くん気にしないで。悪いけど全部フェイクだから。なくしても大丈夫だから。」
と、三田は言う。
(いや、そういう問題じゃないんだけどな…)
「前からやってみたかったの。酔って寝てる人の顔に落書きするみたいに、麻也ちゃん完全王子化計画よ!」
 いやこれが事前に聞いていたことだったら、そしてこんな遅い時間じゃなかったら諒も大賛成だったが 。
「何で事前に言ってくれないの!」
思わず諒が叫ぶと
「えー、だってー、疲れてる~」
と麻也は訳のわからないことを言い、ノリノリの三田の方はこう叫ぶ。
「誰かカメラ持ってない?」
 諒は知らないふりをしたが、麻也はウキウキと、
「諒が持ってきてるよ。ポラロイド2台も。」
「えー、諒くんお願いー!」
「嫌です! こんな遅くに! それに写真撮っても見せたくないよ!」
諒がそう言うと、
マネージャーの鈴木がいないせいなのか、酔っていないケンが、ローディーだからと責任を感じたらしく、
「いややっぱりそんな写真が流出したりしても困るでしょう」
と諒の肩を持ってくれた。
 しかし三田やアシスタントたちや麻也本人が聞く耳を持たない。
「大丈夫。絶対に他の人になんか見せないし、大事にしまっておくから」
 酒に慣れない三田とその若いスタッフに写真を渡すなんてとんでもない、と諒が怒りを隠せなくなった時、またケンが助け舟を出してくれた。
「もう遅いから、写真は明日2人に選んでからにしてもらいましょう」
 それは酔っ払いたちにはいい提案だった。その一方で、三田の新人の女性アシスタントは時間が気になりだしたらしくほっとした表情を浮かべた。それが目に入り、諒も少しほっとした。しかし麻也たちが納得したので仕方なく、諒はクロゼットからモノクロ用のポラロイドカメラを取り出した。