長く話しているうちに電話の向こうの社長は少し落ち着いてきたらしく、
ーつまり、なんだかんだ言っても誰もお前たちを引き離せなかったわけだ。
(そんな…麻也さん…)
諒は自分の行動を悔いるばかりだった。
ーでもお前たち2人は、やっぱり人の一生狂わすくらい、すごいってことだな…それなのに、守りきれなくて、すまなかった…
ーそして、今度から俺も仕事は選ぶよ、若いやつにも麻也は毒だ。
本当に長い電話になっていたようだが…
その時、リビングで大きな音がした。
何かが倒れたような。
嫌な予感がして諒は携帯を切るのも忘れ、握りしめたまま急いでリビングに戻った。
リビング? なぜ?
ドアを開けると諒の目に飛び込んできたものは飛び散った白い錠剤、そして倒れこんでいる麻也…
(なぜ麻也さんがここに…?)
シャンパンの瓶もグラスも絨毯の上に倒れていた。
あわてて諒は麻也の脇にしゃがみこんだ。
リアリティーがない。
と、次の瞬間諒は我に返り、叫びながら麻也の体を抱きかかえて揺さぶった
「麻也さん! 麻也さん!」
麻也は目を開けてくれない。
「麻也さんしっかりして!」
その時だるそうに麻也は目を開けた。