アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

第八章 アプリコットプリンセス クリスマスの奇跡2

2015-12-25 17:37:15 | 漫画


教会の中には異国の子供が正座して座っていた。

アプリコット
「こんにちは、私はチューリップ国のアプリコットです」
「それから、この子は私の大切なお友達の王子ちゃんです」

武智世
「王子!貴様が王子か!」

アプリコット
「・・・・・・・」

王子
「・・・・」

しばらく間、重苦しい沈黙が続いた。




武智世
「私は、信長公の命令により差し出された人質の武智世である」

アプリコット
「それでは、貴方は日出国の王子様なのですね!」

武智世
「いかにも、その通りだが、日出国には王が二人存在している」
「父王の信長公と敵対勢力の信玄公だ!」

アプリコット
「なにか深い事情がありそうね・・・・」

武智世
「エゾンベラ王は信長公と同盟を結ぶにあたって
私を人質に出すことを要求したのだ。
信玄公の脅威に対抗しつつ外国からの攻撃には耐えられない」
「エゾンベラ王は
弱みに付け込んで無理難題を突き付けてきたのだ!」

アプリコット
「でも、そんな大切な人質をこんな酷い場所に閉じ込めておくなんて・・・」

武智世
「そうさ、私の役目は終わったのだよ」
「エゾンベラ王は信玄公と同盟を結び
信長公との同盟を破棄してきたのだ!」

アプリコット
「お国の事情で酷い目に会ったのね・・
でも、私たちはそんな大人たちの身勝手に振り回されたりしないわ」
「武智世さん・・・私たち仲良しのお友達になりましょうよ!」

武智世
「・・・・・・」

アプリコット
「私の国も旱魃による飢餓が国民を苦しめています」

武智世
「チューリップ国のことは父信長公から聞かされている・・・
たしか、閑散士と間延士が間者として送り込まれている筈だ」

アプリコット
「チューリップ国は小さな弱い国です。
資源も無く、農地も限られています。
そんな弱い国に間者が入る理由は何かしら?」

武智世
「世界征服の足がかりとして目星を付けたのさ」

アプリコット
「弱い国から征服しようとしているのね」

武智世
「チューリップ国には強い造船力がある。
これからの世界貿易は造船力が重要なのだと聞いている
だから、この権利を奪い取ることが目的なんだ」

アプリコット
「チューリップ国は弱い国なのよ
争いを好まない平和主義なの

でも、今、国民は飢餓に苦しんでいます。
そこに、追い打ちして他国からの侵略を受ければ
多くの国民が路頭に迷い死んでしまう
大変だわ!

武智世さん、力になってください
平和な世界は子供たちの手で作るしかないわ
大人たちの身勝手を許していてはだめよ」


武智世
「今は戦国の世なんだ!
誰かが天下統一をしなければ平安な世の中にはならない
滅ぼされたくなければ戦うしかないのだ!」


アプリコット
「戦うなんて駄目よ、私たちは仲良しのお友達なのよ
皆で手をつないで協力し合い、弱きを助け強きを挫くのよ
弱いものをいじめて世界征服すれば世界が幸せになると思っているの?」

武智世
「少なくとも、世界征服によって統治されれば戦国時代は終わりを告げる」
「貧しい者は豊かな者に服従し
強い者は弱い者を支配するのだ!」


アプリコット
「武智世さん・・・・・
私たち皆、容姿や性格が違っているわ
何で、豊かな者や貧しい人がいるの・・・
そして、強い者や弱い人がいるの・・・・

それは、仮の姿なのよ
今、誰かが強くて豊かな世界に浸っていても
それは神様から授かった仮の世界なのよ
もし、その力と富を間違った方法で使ったとすれば
報いを受けるのよ」

「この物性世界は不平等に見えていても
神聖世界は厳密に平等なのよ
いま、苦しんでいる弱い人や貧しい人を助けるために
不平等が存在していると考えられないかしら」

武智世
「・・・・・
アプリコットさん、父信長公は報いを受けるのでしょうか?」

アプリコット
「大丈夫よ、きっと分かってもらえます
私は日出国の王様とお会いしたいわ
きっと分かってもらえると思うの」



サイモンド博士は挨拶もそこそこに国の状況を報告した。

チューリップ王
「反乱軍を制圧する!
博士が乗ってきた船で帰国するぞ!」

サイモンド博士
「反乱軍は国民の支持を得て大きな勢力になっています。
今、王が帰国すれば、反乱軍の絶好の標的になり、
国民の怒りの吐け口になるでしょう。
国に帰れば処刑されることを覚悟しなければなりません」

チューリップ王
「馬鹿なことを言う!
反乱軍を制圧に行くのに国民の支持が得られないと言うのか!」

サイモンド博士
「もう少し早ければ対処の仕方もありましたが手遅れです。
今は、王が帰るのを手ぐすね引いて待っており、
処刑台を作って公開処刑を目論んでいます」

チューリップ王
「私は死ぬことを恐れはしない」
「なぜ、戦わずに逃げなければならぬのじゃ!」

サイモンド博士
「いいえ、逃げるのではありません。
時機をみて対処する必要があると申し上げております」

チューリップ王は儒術師の言葉を思い出していた。
・・・・生き恥をさらしても生き続けること・・・・・・

チューリップ王
「博士 ・・・
今、国が反乱軍によって治められているのであれば
良しとしよう!
私が帰ることで内戦になれば大切な国民を不幸にしてしまう」

サイモンド博士
「それが宜しい
王を死なせては
私がここへ来たことが仇になったしまうところだ」

「ところで、おちびちゃんがみえんようじゃなァ・・」

チューリップ王
「アプリコットは王子とともに行方不明になっておるのだ!」

サイモンド博士
「あれは結構シッカリ者だから大丈夫だと思うが」
「それで、儒術師を呼んだのですな」

チューリップ王
「んー
儒術師によればアプリコットは暗闇に居るそうだ」

サイモンド博士
「なるほど
おちびちゃんの居場所が分かり申した」

チューリップ王
「なんと!
博士には分かるのか!」

サイモンド博士
「おちびちゃんは絶対に入ってはいけない場所に入って行ったようじゃ」
「あれは、向う見ずな性格じゃからな
王子を連れて収容所に入って行ったんじゃよ」


チューリップ王
「そうか!きっとそうかもしれないぞ!
収容所は誰も入れないし探せない
アプリコットは強制収容所に入ったんだ!」

サイモンド博士
「では、姫様をお迎えに参りましょうか」

チューリップ王
「あそこに入るにはエゾンベラ王の許可がいるぞ
許可なく入れば絶対に出ることが出来ない構造になっている
先ずはエゾンベラ王を説得しなければなるまいな」

サイモンド博士
「王子が一緒なら父王も快諾する筈だ」

チューリップ王
「それが難しいのじゃよ
お后様もあそこから出ることが許されておらんからなァ・・・」

サイモンド博士
「そうですか・・・
それでは。一度、エゾンベラ王にお会いして
頼んでみましょう」

チューリップ王
「博士!
大丈夫だろうか
大変な頑固だぞ!」

サイモンド博士はエゾンベラ王の性格と状況を
こと細かく聞いて対策を立てることにした。





サイモンド博士は信玄公の家来になりすまして
エゾンベラ王に近づいた。

エゾンベラ王
「遠路、御苦労であった。信玄公はお元気ですかな」

サイモンド博士
「親方様は健勝にございますれば、快活にございます。
天下統一も近いでしょう」

エゾンベラ王は儒術師が殺されたことを信じていたので
呪いが解けて元気になったと思っていた。

エゾンベラ王
「信玄公の約束は確かだと心得ておるが
いかように申しておられたか」

サイモンド博士は信玄公と交わされた約束など知らなかったが
エゾンベラ王の本性を探る為にカマをかけてみた。

サイモンド博士
「信長公は世界制覇を目指すにあたって
造船能力を増強する計画です。
これは信玄公も同じ考えでありますが、
造船能力を奪い取ることは叶いませぬ」

エゾンベラ王
「んー
して、どうするのじゃ」

サイモンド博士
「約束道りにございまする」

エゾンベラ王
「そうか、チューリップ国はエゾンベラに
統治させると申しておったのか」

サイモンド博士
「いかにも、その通りにございまする」

エゾンベラ王
「チューリップ国など滅ぼすのに血を流す必要もないわ、
大国は労せず世界を奪い取るのじゃ」

サイモンド博士はエゾンベラ王の企みに気が付いていたが
確信は持てなかった。
しかし、ついにエゾンベラ王が本性を現したのだ。

サイモンド博士
「儒術師が行方不明の子供たちの在りかを明らかにした後
約束通り始末しております」

エゾンベラ王
「して、何処におるのじゃ」

サイモンド博士
「バラダッグにございます」

エゾンベラ王
「そうか」

サイモンド博士
「救出をお手伝いいたします」

エゾンベラ王
「必要ない」

サイモンド博士
「それでは、エゾンベラ王 自ら救出に向かわれるので・・・」

エゾンベラ王
「もう必要が無くなったのじゃ
チューリップ国は手に入ったのじゃ
アプリコットは不要になった」

サイモンド博士
「ご子息は?」

エゾンベラ王
「あのような出来そこないは不要じゃ」

サイモンド博士は救出作戦を変更する必要があった。
エゾンベラ王は完全に権力欲に取りつかれている
全ての権力を自分のものとしなければ納得しないのである。

サイモンド博士
「これは、南蛮渡来の妙薬です。少し、お疲れとお見受けいたしますれば
是非、ご愛飲なさいますように・・・・」

エゾンベラ王
「そうか、では給仕に毒見させよ」

エゾンベラ王はサイモンド博士が持参した薬を飲んで気持ち良くなった。

エゾンベラ王
「この妙薬は素晴らしい、実に素晴らしい」
「気持ち良くなって眠くなってきた・・・」

エゾンベラ王はそのまま寝てしまった。

サイモンド博士はベッドで寝ているエゾンベラ王を
バラダッグ強制収容所に連れて行って
そのまま突き落とした。



サイモンド博士がバラダッグの出口を探していると憲兵が現れて威嚇してきた。

憲兵
「貴様!何をしとる!」

サイモンド博士
「バラダッグの出口を探しています」

憲兵
「馬鹿な事を言うな!
バラダッグには出口など無いぞ!」
「それから、バラダッグに近づく者は
無条件で射殺してもよいことになっておる」

サイモンド博士
「申し訳ない、気になることがあって
確認していたのだ」

憲兵
「貴様が来賓客扱いでなければ殺されていたところだぞ」

サイモンド博士
「私はエゾンベラ王を探していたのです」

憲兵
「エゾンベラ王はこのような所にはおらんぞ!
直ちに立ち去れ!」

サイモンド博士
「エゾンベラ王が行方不明になってしまったのです」

憲兵
「そのよな話は聞いていない」

サイモンド博士
「実は、エゾンベラ王がパラダックに落ちたのではないかと思って
出口を探していたのです」

憲兵
「エゾンベラ王は誰にも会わないと申している」
「お前が信玄公の使者だと言うので特別に面会機会が与えられたのだ」

サイモンド博士
「それでは、貴方もエゾンベラ王の居場所が分からぬのですな」

憲兵
「居場所は分からないが、このような場所には絶対にいない」
「直ちに立ち去れ!」

サイモンド博士
「パラダックの入り口から王の声が聞こえるのだが
空耳だろうか・・・・」

サイモンド博士は憲兵に聞こえるような小さな声で
独り言を言って立ち去った。




エゾンベラ王は何が起こったのか分からなかったが、
しばらくして自分の置かれている状況を理解した。

アプリコット
「まァ 王様自ら
私たちを迎えに来て下さったのですね」

エゾンベラ王
「・・・・・」

王子
「ねぇ パパ王さん お城に帰ろーよ
僕はお腹がすいたよ・・・」

エゾンベラ王
「ここから出ることは出来んぞ!」

王子
「お腹がすいた!」

王子は早くお城に帰ってお腹いっぱい食事がしたかった。

アプリコット
「ここには おき・・・」

アプリコットはお后様のことを聞こうとしたが止めておいた。
ここで王様を怒らせたら大変なことになると思ったのです。

エゾンベラ王はイライラしていた。
「あの信玄公の使者は偽者であったのか・・・・」

武智世は見捨てられた人質だと思っていたので
エゾンベラ王が現れたことが転機になると考えた。

武智世
「父信長公は短気な性格ゆえ誤解されたのだと思われますが
決して王様の意向に沿えない訳ではありません」

エゾンベラ王
「・・・・・」

武智世
「信玄公は偽りの神仏を敬い利用する策略家です」
「父信長公は自由貿易を進めるにあたって
エゾンベラの国に大量の黄金を提供する用意があります」

エゾンベラ王
「信玄公が神仏を利用する策略家だと申したな!」

武智世
「信玄公が天下を握れば日出国は宗教国家になります」

エゾンベラ王
「宗教国家は・・・・」

武智世
「日出国は信長公により治められることになります」

エゾンベラ王
「信玄公は戦上手で無敗の強敵だと聞いている
それに比べて信長公は籠城戦で凌いでいるそうではないか?」

武智世
「籠城は見せかけです
父信長公は信玄公の本隊を見定めて鬼神のごとく
攻め上がるのです」

エゾンベラ王
「信長公の重臣である開間臣は信玄公の騎馬部隊が現れるや
一戦もせずに逃げ帰ったというぞ!」

武智世
「開間臣のことが王様の耳にまで届いていたのですか・・・」

「開間臣は他の重臣の戦いが不利とみて逃げ帰ったことで
信長公から激しいお叱りを受けておりました」

エゾンベラ王
「やはり情報は確かなようだ
この戦いは信玄公に有利のようだな・・・」

武智世
「・・・・・・・・」

武智世は信玄公の強大な力が父信長公を滅ぼすとは
思いたくなかったが実力の差は明らかであった。




エゾンベラ王の声を聞いて奥の部屋から王妃のマリーテレサがあらわれた。

王子は泣きながら母親にすがりついたが、
エゾンベラ王は不機嫌だった。

マリーテレサ
「どうなさったのでしょうか・・・」

エゾンベラ王
「・・・・・・・」

マリーテレサ
「迎えに来たのではありませんの?」

エゾンベラ王
「・・・・・・・」

マリーテレサ
「先ほどまでお話声が聞こえておりましたから
口がきけなくなった訳ではなさそうですけど?」

エゾンベラ王
「うるさい、黙っておれ」

マリーテレサ
「・・・・・・・」

教会の中は重苦しい静寂に包まれていた。

エゾンベラ王
「俺様がここに来たからここから出れると思うなよ」

王子
「パパ王さん、早くお城で食事をとろうよ」

エゾンベラ王
「お前はなんて弱虫なんだ
ここで死ぬ覚悟もできないのか」

王子は母親に会ってお城に帰れると思いうれし涙を流していたが、
王の言葉に凍りついた。父は自分達を見殺しにするつもりだと気付いたのだ。

アプリコット
「御王様・・・・
なんだか気になることがあります」
「王様の顔色が優れないようです
かなり体調が悪いのではありませんか?」

エゾンベラ王
「・・・・・・・・」

アプリコット
「王様は、この国を治めていく必要があると思うのだけど
王様がここで病気になればどうなるのかしら・・・・」

エゾンベラ王
「・・・・・・・」

アプリコット
「王様には深いお考えがあると思います。
しかし、今は体調を戻して
元気になることが一番良いのではないかしら・・・・・」

エゾンベラ王
「もう良い・・・・
少し静かにしておれ・・・・」

エゾンベラ王には世界制覇を成し遂げる強い野望があった。
その野望を満たすためには家族や国民、全世界の人々を
敵に回しても構わないと思った。
更には、人の命より自分の野望を達成することのほうが尊く、
また更には、自分の命よりも優先すべき野望になっていた。




お妃さまが現れたので、皆が集まってきた。

教会の中には非常食があり、
井戸もあったので、
食べていくことは出来たのですが、
そろそろ限界に近付いていた。

王妃
「もうすぐ食べるものがなくなってしまいそうです」

子供
「僕は食べなくてもいいからお妃さまが食べてください」

王妃
「大丈夫よ、私たちの食糧事情を察して王様が救いの手を
差し伸べてきました」

子供1
「王様 ありがとうございます」

子供2
「王様は僕たちを許して下さったのですね!」

王妃
「クリスマスには奇跡が起こり、
王様が改心して、
人々を自由に開放して下さいます」

エゾンベラ王
「お前は、まだそんな事を言っているのか」

王妃
「王様は優しいお方です、
人々の苦しみを良く分かってます」

「王様のお蔭でこの国は豊かで強くなりました」

「王様のお蔭で、私たちは生かされています」

「皆で王様に感謝しましょうね」

子供3
「王様は僕たちがお腹を空かしていることを
心配して降りてきてくれたのですね」

王妃
「そうよ、ここの食糧事情を心配して
様子を見に来てくれたのですよ」

「もし、私たちを見殺しにするつもりならば
生き埋めにすればよかったのです。
ここで生かされていることは王様の好意なのよ」

「皆さんは王様に愛されているのです」

アプリコット
「お妃さま、皆でお祝いしましょうよ」

お妃
「そうね、干からびたチーズと硬い乾パンしかないけど
おチビちゃんたちでお祝いしましょうね」

アプリコット
「王様とお妃さまが仲良しで良かったわ」

お妃さまは最後に残っていた食料をすべて使って王様のために
歓迎会を開いた。

子供たち
「こんなにたくさんの食事を取るのは久しぶりだね」

王妃
「さあ、今日は王様の歓迎会だから遠慮しないで
たくさんお食べなさい」

貧しい子供たち
「嬉しいな、こんな日がくるとは夢にも思わなかったもん」

王妃
「王様は私たちを救うために自ら危険を冒してまでして
ここに来てくれたのですよ」

「皆で王様にお礼を言いましょうね」
 
貧しい子供たち
「王様 ありがとうございます」
「こんなにおいしい食事は生まれてはじめてです」
「王子様も食べようよ!」

王子は一口食べて吐き出した。

王子
「不味いよ 早くお城に帰っておいしい食事をしようよ」

お妃
「この食事は、皆の命を繋ぎ止めてきた大切なものなのよ
この干からびたチーズと硬い乾パンがなければ
ここにいるみんなは、とっくに餓死していたわ」

王子
「・・・・・・」

お妃
「さあ、皆に謝りなさい」

王子
「やだよ・・・・」

お妃
「皆さんごめんなさいね
王子にはここの食事は無理のようでした」

アプリコット
「私にも少し分けてもらえないかしら」

お妃
「食べなれないと耐えられないかもしれないわよ・・・」


アプリコットはお腹がすいていたが
ここの食事は耐えられないほど不味かった。

しかし、吐き出しそうになるのを無理して飲み込んだ。

アプリコット
「皆さん、お食事を分けて頂いて
ありがとうございました」

アプリコットはポケットに入っていた飴玉をすべて出して
皆に分け与えた。

お妃
「アプリコットちゃんは優しいのね」

王子
「ぼくも持ってるよ」

王子も自分のポケットから飴玉を出して
母親に渡した」

お妃
「マァ!
お母さんは嬉しいわ!」
王子にも神様のご加護がありますよ」

お妃さまはアプリコットと王子から貰った
飴玉を皆に分けてあげた。

貧しい子供
「お妃さまはお腹がすいていないの?」

お妃
「私は大丈夫よ皆で食べてね」

貧しい子供
「こんな美味しいお菓子は生まれてはじめてだ!」

子供たちは歓声を上げて喜んだ。

エゾンベラ王
「・・・・・・・」

エゾンベラ王は寂しくなった。
しかし、王妃のもとにいって
歓迎会の輪に入ろうとは思わなかった。



王様が来てくれたことで多くの収容者が集まってきた。
そして、口々にお許しがおりたことを感謝し、
生きて地上に戻れる喜びに浸っていた。

しかし、エゾンベラ王は囚人を開放するつもりはなかった。

エゾンベラ王
「貴様らは何か誤解をしとるようだが
俺様は、ここを開放するつもりは一切ないぞ」

王様の言葉に集まった人々は凍り付いた。
直ぐにでもここから出られると思っていた人々は
喜びが失望と落胆にかわり
生きる気力も奪ってしまった」

そのとき、地上から縄梯子とロープが下りてきた。

地上の憲兵隊長
「王様!
体に縛り付けるロープと縄梯子を下しました!」

エゾンベラ王
「俺様がここにいることが良く分かったな!」

憲兵隊長
「王様の声が聞こえましたので、
救出に参りました」


エゾンベラ王が胸にロープを縛り付けて
縄梯子を登り始めると周りの収容者が
縄梯子にしがみついてきた。

エゾンベラ王
「お前ら!
お前らは地上には戻れんぞ!
梯子から離れろ!」

囚人
「私たちも地上に上がりたいのです」

エゾンベラ王
「皆が梯子に群がると危険だ
手を離せ!」

囚人
「王様だけがここから逃げ出そうとするのは卑怯です」

エゾンベラ王
「貴様!
俺様を卑怯呼ばわりしよってから許せん!
貴様には即刻死罪を申し付ける」

囚人
「死罪でも何でも構いません。
私はここから出たいのです」

囚人たちは死罪を恐れてはいなかった。
ここにいても飢え死にすることが分かっているので
ロープや梯子にしがみついて
王様と一緒に登ろうとした。

エゾンベラ王
「分からん奴らだ!
一度に登ることは出来んじゃろーが
一人ずつじゃ
先ずは俺様が登る。
それから一人ずつ登ってくればよかろーが」

囚人
「王様は私たちを見殺しにするおつもりです」

エゾンベラ王
「馬鹿を申すな!
一人ずつ登るのじゃ!」

囚人
「いいえ王様は私たちを見殺しにするつもりです」

エゾンベラ王
「では何か
俺様を嘘つき呼ばわりしたいのか!」

囚人
「・・・・」

エゾンベラ王
「俺様が上がり終えたら
一人ずつ救出に向かうぞ!
それまで、黙っておとなしくしておれ」

王様が脱出してしまえば救出される見込みはないと思っていたので、
囚人たちは何を言われても王様の命令には従わなかった。

堪りかねた王様は憲兵隊長に協力を求めてきた。

エゾンベラ王
「おーい 憲兵隊!
こ奴らが国王に歯向かっておる
ここへ降りてきて制裁を加えてくれ!」

憲兵隊長
「分かりました!」

憲兵隊は囚人たちを取り押さえて王を脱出させた。

憲兵隊長
「王様!
今度は私を救出してください」

すると、囚人たちは憲兵隊長にしがみついて
離れようとしなかった。

憲兵隊長
「王様!
私は囚人たちに取り囲まれて梯子を登れません!」


エゾンベラ王
「縄梯子とロープをそのままにしておくわけにはいかんのー・・・」

エゾンベラ王は憲兵隊長を見殺しにして縄梯子とロープを引き上げた。



サイモンド博士の作戦は完全に失敗してしまった。

エゾンベラ王
「貴様!よくも騙してくれたな」

サイモンド博士
「よく出てこれましたな!」

エゾンベラ王
「俺様の代わりに憲兵の奴が入っておるわ(# ゜Д゜)」

サイモンド博士
「あのような場所は壊してしまうがよろしい」

エゾンベラ王
「貴様は自分が置かれている状況が理解出来ていないようだな」

サイモンド博士
「分かっているさ
ただ、こんなに早く出てこれるとは思わなかったよ」

エゾンベラ王
「貴様は、生かしておく訳にはいかん」

サイモンド博士
「では、なぜ殺さんのだ」

エゾンベラ王
「貴様の親玉を自白させるためだ
貴様は誰の命令で動いているのだ」

サイモンド博士
「当然、親方は信玄公だ」

エゾンベラ王
「もう、そのようなまやかしは通用しないぞ」
「貴様は、チューリップ王の命令で俺様を騙したのであろうが(# ゜Д゜)」

サイモンド博士
「誰ですかな? チューリップ王とやらは」

エゾンベラ王
「うそぶくのはやめろ」

サイモンド博士
「私は、信玄公の使者である」

エゾンベラ王
「ならば、信玄公の使者である証拠を見せろ」

サイモンド博士は信玄公の花押が押された親書を偽造して用意していた。

サイモンド博士
「さあ、信玄公の親書である、どうぞお検めてください」

エゾンベラ王
「偽造だ!」

サイモンド博士
「・・・・・・」

エゾンベラ王
「貴様の親玉を吐かせた後で貴様を処刑してやる」

サイモンド博士
「親方は信玄公である」

エゾンベラ王
「もうよい、今日はこれまでじゃ
自白するまで取り調べがあるぞ!
今度は新しい憲兵隊長を任命しているから
そいつの厳しい追及があると思え(# ゜Д゜)」

サイモンド博士は完全に失敗してしまったことを悟ったが
どうすることもできなかった。



見殺しにされた憲兵隊長に代わって、新しい憲兵隊長が任命され、
サイモンド博士の取り調べが行われていた。

新しい憲兵隊長
「言っておくが、お前の罪は確定している」

サイモンド博士
「そうでしょうな」

新しい憲兵隊長
「エゾンベラ王様から、お前を処刑する許可を得ている」

サイモンド博士
「そうですか」

新しい憲兵隊長
「命乞いすれば助けて上げられないでもないが?」

サイモンド博士
「では、助けて貰えるのですかな?」

新しい憲兵隊長
「ただ、条件があるのだよ」
「お前は、誰の命令でエゾンベラ王に危害を加えたのだ!」

サイモンド博士
「私の個人的な判断で行ったことです」

新しい憲兵隊長
「悪いことは言わないから正直に言ってみろよ」
「チューリップ王がお前の背後にいるのであろう」

サイモンド博士
「親方様は信玄公です」

新しい憲兵隊長
「嘘でもいいから、チューリップ王の命令で
エゾンベラ王の失脚を目論んだのだと言ったらどうだ!」

サイモンド博士
「では、そういうことにしておいて
処刑すればよい」

新しい憲兵隊長
「私は、お前を助けてあげようとしているのだ」
「エゾンベラ王にそのように申し上げてよいのだな!」

サイモンド博士
「親方様は信玄公です」

新しい憲兵隊長
「お前が意地を張っていると取り調べが厳しくなるのだぞ」
「何でもいいから、こちらの言っていることに従って
答えればよいではないか」


サイモンド博士
「何度も同じことを言うが、
親方様は信玄公なのです」

新しい憲兵隊長
「お前は俺を怒らせないほうがよいぞ」
「お前が自白しなければ酷いことをしなければならなくなる」


サイモンド博士
「私が自白したことにして処刑すればよい」


新しい憲兵隊長
「そうか、ではそのように報告してよいのだな」

サイモンド博士
「親方は信玄公です」

新しい憲兵隊長
「嘆かわしいぞ!」
「もし、仮にお前の親方とやらが
信玄公であったとしたら
主君への裏切りになるとは思わんのか?」


サイモンド博士
「そうさ、私の独断でやったことだ!」

新しい憲兵隊長は次第に焦りはじめた。
この男に自白させることが隊長任命後の初仕事だったのだ。

サイモンド博士
「ところで、貴方の上司であった
前の憲兵隊長は如何しているのでしょうか?」


新しい憲兵隊長
「お前には関係ないことだ!」
 
サイモンド博士
「私には関係なくても
貴方には関係あるのではありませんか?」

新しい憲兵隊長
「彼は、大臣に昇格して国政を担うことになったのだ
そこで、空いたポストに私が入ることになったのだ」

サイモンド博士
「そのように聞かされていたのですか?」

新しい憲兵隊長
「変な言い方をするな!
まるで、嘘の情報を吹き込まされていると
言いたげではないか!」

サイモンド博士
「では、確認しては如何かな?」
「私はエゾンベラ王から直接聞いたのですぞ!」

新しい憲兵隊長は更に焦りの色を深めていった。

サイモンド博士
「エゾンベラ王は前の憲兵隊長を見殺しにして
収容所から脱出したと言っていた」

新しい憲兵隊長
「それは、きっと前の憲兵隊長に落度があったからだ!
彼が、国家転覆に加担したとして落とされたのだ!」

サイモンド博士
「私の情報では、前の憲兵隊長はエゾンベラ王を
助けるために自ら犠牲になったと聞いているがね」

新しい憲兵隊長
「・・・・・・・」

サイモンド博士
「これから、前の憲兵隊長の家族や親戚が姿を隠すことになりますぞ」
「よく考えて、行動しなければ貴方も同じ運命になると思うがね」

新しい憲兵隊長は、だんだん恐ろしくなってきた。
この男の言っていることを確認してから行動しなければ
自分だけでなく家族や親戚を巻き込んで
大きな災難が降りかかってきそうな恐怖を感じていた。



サイモンド博士が厳しい取り調べを受けているころ、
チューリップ王はアプリコットに会うために収容所に侵入していた。

チューリップ王はサイモンド博士からアプリコットがここに落ちていることを
聞いていたので、決死の覚悟で助けにきたのだ。

チューリップ王
「アプリコット!」

アプリコット
「お王様!」

二人は名前を呼びあって再会を喜び合っていた。


アプリコット
「お王様が来てくださったから、安心よ!」

チューリップ王
「実は、上はあまり良い状況ではないようなんだ。
エゾンベラの王様は病気が切っ掛けで
性格がおかしくなってしまった」

アプリコット
「少し前はエゾンベラの王様がここへ来られたわ」
「そして、今度はお王様がここへ来たのよ」
「今度は、何方がここへ来るのかしら♪」

チューリップ王
「アプリコット! こんな大変な状況下で・・・・・
お前は なんて強い子供なんだ!」

アプリコット
「私は、皆と一緒に苦しみを分かち合いたいのよ」
「お王様は、私を愛してくださいます」
「私は、お王様も、ここにいる子供たちも、お妃さまも、
王子様も、武智世さんも、皆、大好きなのよ!」
「それから、エゾンベラの王様も愛しています!」

チューリップ王
「馬鹿を言うな!」
「エゾンベラ王は気が狂っている(# ゜Д゜)」

アプリコット
「これも他生の縁なのよ♪」

チューリップ王
「んー いまいち、お前という子供が分からなくなる・・・・」

アプリコット
「私は、お王様の愛娘なのよ!」
「お王様は私の尊敬する立派な王様!」

チューリップ王
「アプリコット・・・・
ありがとう・・
お前といると、苦しみも楽しみに変わってしまうよ!」

アプリコット
「そうでしょ♪
私は愛の化身なのよ♪
私の名前はアプリコットだけど
マリアだったり、マーガレットだったりするのよ」
「苦しくても暗闇の中にいても
私の周りには明かりが灯っているのよ」
「お王様は、そんな家宝者の愛娘を授かったのですよ」

チューリップ王
「なんと・・・・・

チューリップ王はアプリコットの冗談が可笑しくて
顔がほころんでしまった」

アプリコット
「なんだか、お二人が並んでいると
私のお母さまが一緒のような気がするわ♪」

チューリップ王は振り返ってお妃さまへ挨拶した。

チューリップ王
「いやー失礼しました」
「お妃さまとの挨拶が遅れてしまいました」

マリーテレサ
「わたくしこそ、大変に申し訳なく思っています・・・・」
「エゾンベラ王は傲慢で強情な人でなしでした」
「私は、彼が改心してここの人々を開放することを望んでいましたが、
無理でした・・・・私は皆様に謝罪しなければなりません」

チューリップ王
「貴方は立派な方です!
多くの人々がマリーテレサを称賛していますよ」

マリーテレサ
「わたくしは、非力です・・・・
わたくしには何の力もありません・・・
情けない・・・・」


チューリップ王
「それは、貴方の責任ではありませんよ!
私は、マリーテレサの予言を信じています。
クリスマスにはエゾンベラ王が改心してバラダッグを開放する
絶対にクリスマスの奇跡は起こります!」

マリーテレサ
「そうね・・・・でも、すごく昔のことのようだわ・・・
そんな希望を持っていたのね・・・」

チューリップ王
「希望ではなくて実現しますよ!」

マリーテレサ
「そうよね、チューリップ王様ありがとうございます。
私もクリスマスの奇跡を信じます!」




サイモンド博士の失敗はチューリップ王への不信感をまねき、
さらには、殺されているはずの儒術師が生きていることがわかり、
チューリップ王は追い詰められていた。

居場所を失ったチューリップ王はアプリコットを救うために
バラダッグに降りた。

エゾンベラ王の体調は回復しつつあったが、
儒術師が生きていることが分かると
途端に悪くなっていくように感じていた。

エゾンベラ王
「貴様は俺様に呪いの魔術をかけているのか(# ゜Д゜)」

儒術師
「呪いはかけるものではなく
呪いはかかるものなのだ」
「貴方がそのように感じるのは
貴方の行いと思いによるものであって
他からの影響ではごらざん」

エゾンベラ王
「貴様の屁理屈など聞く気はない
貴様が俺様に呪いをかけたことはあきらかなのだ(# ゜Д゜)
俺様は呪いなど怖がりはしない
貴様の命は俺様に委ねられておることを肝に銘じておれ(# ゜Д゜)」

儒術師
「ははは・・・・」

エゾンベラ王
「笑うのをやめろ(# ゜Д゜)」

儒術師
「可笑しなことを言うな
私を殺すのであれば問答無用ではないのかな」
「生かしておく理由がおありかな?」

エゾンベラ王
「そんなに殺されたいのか(# ゜Д゜)」

儒術師
「人には宿命があるのだ
運命は変えることができるが
宿命は変えることはできぬ」

エゾンベラ王
「俺様は恐怖で人を支配している
俺様に偉そうな口をきいていると
後悔することになるぞ(# ゜Д゜)」

儒術師
「ははは・・・・」

エゾンベラ王
「また笑いやがったな(# ゜Д゜)」

儒術師
「貴方は、体調が優れない
そして、体調が悪いのは私の呪いのせいだと言っておる。
だから、私を苦しめれば呪いが解けると思っているのかな?
では、貴方が苦しめている国民は如何思うぞ!
国民は貴方が苦しむことを望まんのかな?
この悪い望みの多くは自らに跳ね返る
そして、一部は貴方に向かって作用すると考えなされ」

エゾンベラ王は更に体調が悪くなってきた。
体調の悪さは冷静な判断力を奪い
態度を硬直化させて開き直っていった。

エゾンベラ王
「おーい 憲兵隊長!
こ奴を苦しめて殺せ!」



エゾンベラ王の命令を受けた憲兵隊長は
儒術師を苦しめて殺さなければならなかった。

憲兵隊長
「エゾンベラ王の命令でお前を苦しめて殺す!」

儒術師
「できまい」

憲兵隊長
「・・・・・」

儒術師
「お前に私を殺すことはおろか、苦しめることもできぬは」

憲兵隊長
「なぜだ!」

儒術師
「お前がよく分かっているだろう」

憲兵隊長
「俺が気弱だからか?」

儒術師
「お前は、今、迷っている
一つは、自分の身に災難が降りかかってくること
一つは、自分の身内に災難が広がっていくこと
一つは、この国の人々がクリスマスの奇跡を信じていること」

憲兵隊長
「そんなことか!
そんな迷いはないぞ!
それよりも、お前を苦しめて殺さなければ
エゾンベラ王から厳しい処分があるのだ
お前は、絶対に処刑されなければならないし、
処刑しなければ私に災難が降りかかる」

儒術師
「そうだろ
だから、迷いがあると言っておる」

憲兵隊長
「うるさい!」

いきなり、憲兵隊長は落ちていた石を儒術師に投げつけた。

儒術師
「そんなことで、私を苦しめることは出来ぬぞ!」

憲兵隊長は自信を失っていた。
こんな役目は真面な精神の人間には務まらないと思っていた。

憲兵隊長
「・・・・・・・」

儒術師
「やはり、お前には無理のようだな」

憲兵隊長
「・・・・・・・」

儒術師
「お前の上司はエゾンベラ王に見捨てられて暗闇の中にいる。
そして、まもなく、お前も、その暗闇の中に入るのだ」

憲兵隊長
「そんな・・・・」

儒術師
「お前は、最初の任務を上手くこなすことが出来なかった。
そして、私を殺すことも、苦しめることも出来なかった。
エゾンベラ王は非情だ。お前を見捨てて暗闇の中に捨てる」

憲兵隊長は儒術師の魔術に掛かってしまったように感じていたが、
儒術師の大きさを思い知らされていた。

憲兵隊長
「・・・・・たしかに」

儒術師
「お前が助かる方法はエゾンベラ王を暗闇に落とすことだ」

憲兵隊長
「・・・・・・・」

儒術師
「今晩、王はお気に入りの秘薬を飲んでぐっすりと寝ているから、
そのまま突き落したらよい」




エゾンベラ王は再び突き落された。

またもや突き落されたエゾンベラ王は混乱していた。
今回は、誰に突き落されたのか全く分からなかったのだ。

エゾンベラ王
「チューリップ王よ!
其方は我を許さんだろうな!」

チューリップ王
「御大王様!
私の方こそ、貴方に許してもらわなければなりません」

エゾンベラ王
「では、やはり其方の陰謀か?」

チューリップ王
「実は、私はアプリコットに教えられたのですよ。
アプリコットは貴方を愛していると言いました」

エゾンベラ王
「・・・・・・・・」

チューリップ王
「私を疑い追い詰めて、
子供たちやお妃さまや家来を見殺しにする
そんな王を愛せますか?」

エゾンベラ王
「そうか、こんなチビちゃんが
けなげにも、こんな恐ろしい王を愛すると言ってくれたのか・・・」

チューリップ王
「アプリコットと一緒にいると
こんな暗闇も天国に変わってしまいます」

エゾンベラ王
「そうか、俺は覚悟は出来ている
俺は、お前たちを見殺しにした非情な王なのだ。
ここにいる者たちは皆、儂を憎んでおろうな・・・」

チューリップ王
「今日はクリスマスです。
上からごちそうも一緒に落とされてきたので
皆で一緒にクリスマスパーティーをしましょう!」

エゾンベラ王
「一緒に祝ってもよいかのォ」

アプリコット
「マァー素敵!
クリスマスが嫌いだったお王様が!
クリスマスって奇跡が起こるのね!」