アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

第十三章 アプリコットプリンセス 太閤対家康

2017-11-26 20:09:28 | 漫画


家康
「悪いことは言わぬ。早くこの国から出て行ってくれ」

アプリコット
「家康様! 何かありましたか?」

家康
「大有りじゃよ・・・・」
「あの猿めが忌々しい奴じゃ・・・・」

アプリコット
「猿・・?」
「秀吉様のことですか?」

家康
「そうじゃ!
その猿めが、お主を殺せと言いおった!」

アプリコット
「マァ・・・
それでわ、家康様は秀吉様の家来なんですね?」

家康
「馬鹿を言うな!
猿の家来になるくらいなら死んだほうがましだ!」

アプリコット
「では、秀吉様にこうおっしゃたらいいわ」

「儂はお主の家来ではないぞ!
アプリコットを殺したければ、ご自分でなさってください」

「やりたくなければ、断ればいいのよ」

家康
「それが出来れば苦労はせんわ・・・・」

アプリコット
「秀吉様を止められるのは家康様だけよ
理不尽なことや国民を苦しめる政策は断ってもいいのよ」

家康
「たとえ儂が断っても姫は殺されるぞ」
「とにかく、早くこの国から出て行ってくれ」

アプリコット
「そうね、出ていくわ」
「でも、もう一度、秀吉様にお会いしたいわ」

家康
「悪いことは言わぬ、もう猿に構うな!
早く出ていけ!」




秀吉
「ちび助!」

アプリコット
「王女様に対して、ちび助は失礼ですよ」

秀吉
「まだ生意気な口が直らんようじゃのお」
「まぁ良いわ 今に泣き面を晒して許しを請うことになる」

アプリコット
「私の涙が見たいのね・・・」

秀吉
「儂わのぉ お主の涙など見たくわない
儂が見たいのはのぉ、お主の服従心じゃ
あの魔王と呼ばれた信長殿にも従わぬ
お主の服従心が欲しいのじゃ!」

アプリコット
「前にもお話したわよ」
「私はそんなことには興味が無いわ」
「私はすべての人々が
幸せに暮らせるようにして欲しいだけなのよ」

秀吉
「それなら、手は打っとるぞ!」
「儂わのぉ、この大阪の町を大商業地域に発展させたのじゃ」
「儂わ太っ腹じゃ 
この町で商売するものから場所代を免除してやったわ」
「場所代が要らぬと分かった商売人がワンサカ集まってきよったわい」
「儂わのぉ 場所代を免除して代わりに売り上げからの納税をしたのじゃ」
「商売人が集まると物が大阪の地の溢れ返る
すると、その物を目当てにして人々が集まる。
人々が集まれば住居が必要になり大工が儲かる。
大工が増えれば木材が売れる。
木材は遠方から安く仕入れて大阪で高く売るのじゃ」
大工だけではないぞ!
歌舞伎や芝居小屋も大盛況じゃ」
「みんなが儲かっとる」
「儲かったら、みんなが幸せになっとる」
「どうじゃ これなら文句はなかろーが」

アプリコット
「秀吉様は立派ですわ」

秀吉
「なんじゃ それだけか?」
「儂が立派なのは当たり前じゃ」
「そんなお世辞を聞いて喜ぶ秀吉ではないぞ」
「どうじゃ、儂を尊敬して敬服せんか?」

アプリコット
「では、海を隔てた隣の国と戦をするのは、如何してですか?」

秀吉
「ちび助よ!
口を慎め!
今回の戦を咎めたものが如何なったか知っとるじゃろーが」
奴らはその場で首が胴体から離れて飛んで行ったわ」
「即刻、打ち首じゃ」

アプリコット
「では、私も打ち首ですか?」

秀吉
「そんなことは聞かんでも決まっとる」
「お主の命は無いものと思え!」

アプリコット
「人々が豊かに幸せになったのに
戦を続けるのは、不幸の始まりですよ」
「この神聖世界では勝ち逃げは許されていないのです」
「秀吉様は多くの人々を幸せにしたと言いますが、
それ以上の不幸を招き寄せたのです」
「秀吉様は常勝、負け知らずで天下人になりましたから
これからは負け続けることになります」
「これは、天命ですよ」

秀吉
「儂を本気で怒らせたようじゃのぉ」
「後で泣き言を言うなよ」
「いや、泣いても許さんぞ」
「おもろいのぉ」
「おもろい」
「いや、腹が立つ」
「儂は頭が壊れてしもーたようじゃ」
「おもろいのか、腹立たしいのか
分からんようになってしもーた」






アプリコットは千利休に会いに行った。

利休
「何方かと思いましたら、なんと可愛らしい異国の姫様じゃった」

アプリコット
「私、秀吉様から嫌われちゃたのよ」

利休
「んぅ・・・・・ 何かございましたか?」

アプリコット
「秀吉様は、私が生意気だと仰って、
言うことを聞かなければ打ち首だと申されたのです」

利休
「ところで、太閤様は何を仰ったのですかな?」

アプリコット
「自慢話よ!」

利休
「ははは・・・・
太閤様らいしのぉ

ところで、太閤様の自慢話を聞いて、
姫は何と答弁されたのかな?」

アプリコット
「『前にも申し上げたことですが、
私はそんなことに、興味ないわ』と言ったのよ」

利休
「だいたい話は読めたぞ、
姫様が失礼な物言いを為されたのを
戒め申されたのじゃのぉ」

アプリコット
「私、利休さんに、お願いがあるのよ」

利休
「何じゃ・・・」

アプリコット
「利休さんは秀吉様の先生だと聞いています」
「秀吉様を戒めて欲しいのです」

利休
「なんと!
天下人の太閤様を戒めよと・・・・」

アプリコット
「これから、秀吉様は戦に敗れ続けます」
「海を渡ってまで、戦をするのは大きな災難の始まりです」
「この国の人々だけではなくて、
ほかの国の人々も不幸にしてしまいます」

利休
「ただの可愛い子供だと思うておったが、
そんなことを考えておったのか・・・」

アプリコット
「そうよ、子供だと思って侮ってはいけないわ」

利休
「いや、申し訳ない」
「しかし、侮るなと申されても・・・」

「儂は、ただの茶人じゃ」




秀吉は血相を変えて利休のもとへ現れた。

秀吉
「利休殿、これはいったいどういうことじゃ!」

利休
「どういうことと仰いますと?」

秀吉
「しらばっくれるな!」

利休
「な、、何と仰います、
利休めにはとんと分からぬことにございます」

秀吉
「ちび助が来たであろう」

利休
「はい、かわいい王女様が訪ねて参りましたが、
如何なされましたか?」

秀吉
「密約を取り交わし、
儂を亡き者としようとする計略じゃ
そうじゃろーが」

利休
「滅相もございません」
「利休は茶室のこと、
わび茶のことのみに生きております」

秀吉
「そうじゃの!
じゃから、城内に参らんのじゃのぉ」

利休
「利休の茶道はわび茶にございます」
「おそれながら、太閤様の好みには合わぬものと思いまして」
「わび茶のお手前であれば、この茶室がちょうどよいと思いまして」

秀吉
「利休殿!」
「わび茶は禁止じゃ!」
「儂は、天下人に相応しい豪華絢爛な茶を嗜みたいのじゃ」

利休
「それでしたら、この利休ではなく
わび茶壊しの茶を嗜むことが良いと思いますが?」

秀吉
「むぅぅぅぅ よーぉ、分かった」
「利休! 儂はもうお主が不要になった」
「もうお主は必要ない」
「終わりじゃ!」

利休
「・・・・・」




アプリコット
「こんにちは、わたしアプリコットよ!」

政宗
「?・・・異国の姫君か?」

アプリコット
「そうよ、チューリップ国の王女よ!
政宗様、はじめまして」

政宗
「噂は聞いておるぞ」
「なんでも、天下無敵の信長公に逆らい、
今は天下人の太閤様に恐れられているという・・」

アプリコット
「変な噂が広まっているのね」
「私は何もしてないのよ」

政宗
「なんの用か知らぬが、力にはなれんぞ
徳川殿にも聞いておるが、
其方は災いの元じゃ」

アプリコット
「どうして、私のことを怖がるのかしら?」

政宗
「ははは・・・怖がるものか!」
「儂は地獄の魔王も恐れはしない!」

アプリコット
「よかったわ、ではお話しできますね」

政宗
「しかし、不思議なものよ・・・
信長殿をはじめ名立たる武将が
お主のことを気にしておったのは何故じゃ!」

アプリコット
「わたし、怖がられたり、気にされたりしてるのね」
「でも、この国の人々は、みんさん優しいお方ばかりです」
「私がお腹を空かしていれば、おにぎりをもらえますし、
暗くなれば、宿をとらせてもらえます」

政宗
「んむ・・・ 
なんでも、太閤様から死罪を命じられているとか?」

アプリコット
「そうよ、絶対に許さないとのことでした」

政宗
「なぜ?」

アプリコット
「どうしてかしら?」

政宗
「儂は死に装束で秀吉に会いに行ったんじゃ」
「そして、首を差しだして命を捨ようとしたことがある」
「しかし、秀吉は儂を殺さんかった・・・」
「お主も殺されることは無かろうと思うぞ」
「安心しておれば良い 分かったな!」

アプリコット
「政宗様は秀吉様に気に入られたのね!」

政宗
「秀吉は他のものどもが如何思っているのかが
気になってしかたがないのじゃ」
「儂が首を差し出して殺せと言えば
逆に生かすことを考える」
「逆に、命乞いをして逃げ回れば、
面白がって殺すのじゃ」

アプリコット
「命乞いをしている人々を・・・
酷いことだわ」

政宗
「面白がっておる!」

アプリコット
「面白くありません!」

政宗
「秀吉は人心を思い通りに操り天下人になった」
「だから、思い通りに成らぬ者が恐ろしいのじゃよ」
「たとえ小さな子供といえども
思い通りにならんと、力ずくで鳴かそうとする」
「その点、信長殿は悠長なこと無く鳴かした」
「其方が信長殿に逆らって生きておるのが奇跡じゃ」

アプリコット
「わたし、逆らってないわ・・・」




秀吉
「ちびすけ!」

アプリコット
「天下様!ご機嫌如何ですか?」

秀吉
「貴様も、挨拶の仕方が分かってきたようじゃのぉ」

アプリコット
「いいえ、不束なことお許しください」

秀吉
「まあ、お主も他国の者ゆえ無礼な態度は許しておこう」
「しかし、儂の機嫌を伺って死罪を免れようとしても無駄じゃ」

アプリコット
「私のような子供を殺しても面白くありませんよ」

秀吉
「面白いかつまらぬかは、儂が決めることじゃ」
「天下人に逆らった者が惨めに悲惨な死に方をするのじゃ」
「お前の殺し方は家康に頼んでおる!
「貴様が泣き叫び許しを請いながら死んでいく姿を
皆で酒を交わしながら見届けてやるわ!
ガッハハハハ!」

アプリコット
「わたし、秀吉様に逆らった罪で殺されるのですね・・」

秀吉
「何じゃ? その通りじゃろーが」
「天下人に逆らえば死罪じゃ!
これは当たり前のことなんじゃ!」

「如何じゃ 怖かろーが」
「許しを請わぬのか」


アプリコット
「私が殺されることが運命ならば従います」
「しかし、秀吉様が殺したいのであれば
家康様に頼むのではなく、
ご自分でなさったら如何ですか?」

秀吉
「天下に名を示すためじゃ!」
「家康は儂の命令に従わねばならぬのじゃ」
「儂の命令に従わぬ者は家康とて只では置かぬわ」

「どうじゃ分かったか!」
「儂わのぉ天下人じゃ力で屈服させてやる!」

アプリコット
「わたしを殺させて、天下に名を刻むのですか?」

秀吉
「家康は実に残酷な奴じゃ
恐ろしい殺し方を用意しておるぞ・・・ヒヒヒヒィ」

「殺しの席は、盛大にやらねばのぉ」
「天下人に相応しい盛大な処刑を催すのじゃ」

「これがつまらぬことがあるものか・・・ギヒヒヒヒ」

アプリコット
「秀吉様は可哀そうな方ですわ・・涙」

秀吉
「何だと(怒り)」


アプリコット
「きっと、苦しんでおられるのですね」

秀吉
「むむむ・・・ギリギリ(歯ぎしり)」

アプリコット
「日出吉様は策略を巡らして光日出様を利用し、
大殿様を亡き者としました」
「そして、天下泰平のこの時期に海外に戦を仕掛け、
多くの不幸を招き寄せてしまったのです」
「何故、戦を止められないのか?」
「きっと、苦しんでおられるからです」
「しかし、戦を始めても
苦しみから逃れられないのではありませんか?」
「いいえ、かえって苦しみが大きくなって
手に負えなくなっていませんか?」

秀吉
「煩い! 黙らっしゃい(怒り)」


アプリコット
「・・・・・・・・」

秀吉
「・・・・・・・・・・・・・」

アプリコット
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



秀吉
「何で黙る!」

アプリコット
「やはり、苦しんでおられる」

秀吉
「・・・・・」

アプリコット
「もう戦はお止め下さい」

秀吉
「あのなぁ・・
おめーは何か勘違いしとるんとちゃうか」

「儂ゃーのぉ ちっとも苦しんどりゃせんど」

「信長は光日出にやられたんじゃし、
戦で殺しとるは、儂じゃのーて家来とどもじゃ」

「儂は知らんが」

アプリコット
「殺戮を止めさせられるのは秀吉様だけですよ」

秀吉
「・・・・・・・・・・」

秀吉
「・・・・・それよりも・・・・
お主は、儂に謝って
儂を尊敬し、敬い、従わぬか?」

アプリコット
「先ずは、戦を止めることです」

秀吉
「戦は止めん!」

アプリコット
「秀吉様は得た名声よりも
多くの苦しみを背負いこむつもりのようですね」

秀吉
「あの魔王と呼ばれた信長殿に逆らったお主だからこそ
儂には従わねばならんのじゃ
お主が従わねば示しがつかんのじゃ
儂は絶対に戦は止めん!」



秀吉
「茶の湯じゃ」
「天下人に相応しい黄金の茶屋で盛大な茶会じゃ!」

利休
「はい、用意は出来ております」

秀吉
「わびさびなどと申しておったが、天下には逆らえんぞ、、なあ利休」

利休
「わたくしはただの茶人にございますれば、
天下様の命令に従うまでに御座います」

秀吉
「そうじゃ、そうじゃろーが
天下に逆らえば身の破滅じゃ
お主は頭がええのぉ ニヒヒヒヒヒ」

利休
「頭が良いかどうか分かりませんが、
天下様を尊敬しお慕い致しますがゆえに、
利休めは茶道で貢献いたしたいのでございます」

秀吉
「今回の茶席は家康を呼んで面白き施行を考えておる」
「あのちび助を酷い目に遭わせてやるのだ」

利休
「ちび助?」

秀吉
「ムフフフフ」

秀吉
「あのちび助の奴が泣き叫び、儂に許しを請うのじゃ」
「ギヒヒヒヒヒ」

利休
「・・・・・・」

秀吉
「なぜ黙る」

利休
「いいえ、黙っておりますは、利休の無粋ゆえ
話の内容が分からぬためでございます。

秀吉
「おもろくないぞ!」
「実につまらん!」
「・・・・」

利休
「もしかしまして、ちび助と申します者
アプリコット姫のことでございましょうか?」

秀吉
「決まっておろーが
たわけ者が!」

「ちび助には皆で酒を飲みながら
高みの見物と洒落こむぞと言っておいたが、
盛大な茶会で披露したほうがおもろいからのぉ」

利休
「利休めも催しを知れば、
相応の茶席を用意いたしますが、
如何様なことにございましょうか?」

秀吉
「あ奴を殺すのじゃ」

利休
「アプリコット姫を殺すのでございますか?」

秀吉
「のお利休 お主も知っておったのではないか?」

利休
「まさか、茶席で処刑など・・・・」

秀吉
「ハハハハ・・・」
「ダハハハハハ・・・・」
「ギヒヒヒヒヒヒヒ・・・・・・・・」
「そうじゃ 利休殿 ちび助に合ったら
処刑のことを教えてやってくれんかのぉ
皆が残酷な処刑を楽しみにしておるとな」

利休
「わかりましてございます」

秀吉
「酷く惨く醜く苦しむ方法を考えろ」

利休
「かしこまりました」

秀吉
「絶対に手加減するな」
「手加減する者はその場で打ち首じゃ」

利休
「仰せの通り、深く肝に銘じてこざいます」

 

天下
「大納言、茶会が楽しみじゃのぉ」

家康
「太閤様も悪趣味じゃ」

天下
「悪趣味じゃて?」

家康
「なんでも、天下一の茶会で
アプリコット様を処刑する催しをするとの事、
聞いておりますぞ」

天下
「そうじゃ!」
「天下一の茶会を利休に準備させておる」
「そして、その茶会で大納言殿が
ちび助をいたぶりながら残酷に殺すんじゃ!」

家康
「茶の席はわびさびの嗜みにて、
いかような理由があるにしても、
血生臭いことはご遠慮なさいまし」

天下
「なんじゃ 大納言ともあろう大御所が
怖気付いたか!」

家康
「世間では、太閤様が幼気な異国の姫様を
虐めておると噂されておりますぞ!」

天下
「むうぅぅぅぅ・・
誰じゃ・・誰が噂を広めたのじゃ・・」

家康
「太閤様がご自分で広めて御座いますぞ!」

天下
「嘘じゃ・・誰かが儂の悪口を言っておるのじゃ」
「儂には見当が付いておる」
「利休じゃ!」
「利休の奴は、最初はわびさびなどといっておきながら
儂を恐れて遜ってきおった」
「奴は儂を欺いて、儂の悪口を言いふらしておるのじゃ!」

家康
「利休殿は信長様からの長きお使いでありますぞ」

天下
「奴め、信長様からひいきされておったのを良い事に
儂を見くびっておるのじゃ」

家康
「噂は天下様が御自分で広めたもので御座いますぞ!」

天下
「利休は儂を殺す計画を考えておるのじゃ」
「奴は儂を恐れておるが
儂を馬鹿にしておる」
「奴は最初はわび茶壊しなどとほざいておったが
気持ち悪い変貌ぶりじゃ」
「儂を恐れ、儂が死んだ方が良いと思っておるのじゃ」
「儂は騙されんぞ!」
「利休め・・・儂は騙されんぞ・・」

家康
「天下様はお疲れのようじゃ・・・・」



天下
「ちび助!」

アプリコット
「天下様、お迎えですか?」

天下
「お主に聞きたいことがあるのじゃ」
「ちび助はこの世で誰を尊敬しておるのじゃ?」

アプリコット
「多くの方々を尊敬しております」

天下
「いや、誰を尊敬しているのかを聞いておるのじゃ」
「儂を尊敬しては如何じゃ?」

アプリコット
「・・・・」

天下
「んーーー 何故黙るのじゃ」
「儂のことは嫌いか?」

アプリコット
「いいえ、お優しい天下様を愛しております」

天下
「何と!・・・・」
「この儂を愛すると申すか!」
「では何故、儂を尊敬せんのだ!」

アプリコット
「天下様は平安な世を乱しております」
「すぐに惨い戦をお止めくださいませ」

天下
「戦は止めん!」
「儂は戦のために生きておのじゃ」
「儂から戦を取り上げんでくれ・・・」

アプリコット
「この戦で多くの人々が殺され、苦しんでいます」
「私は苦しんで耐えて生き抜いている人々を尊敬しています」

天下
「何と!
儂よりも、惨めに殺されかけた哀れな者たちを尊敬すると申されるか?」

アプリコット
「いいえ、天下様は戦を止めることができるお方です」
「この戦をお止め下さい!」

天下
「・・・・・・・・・・・・
・・・・それは出来ん!」この
「んぅ・・・・・・・
あのなぁ・・・では、お主は儂と家康と何方を尊敬するのじゃ?」

アプリコット
「お二方共に、愛しております」

天下
「いい加減にせい!
この国では簡単に愛などということを口に出すことは無いのじゃ」
「儂は生まれてこのかた愛などと言った覚えはないぞ」

アプリコット
「天下様は愛に恵まれていないようです」

天下
「馬鹿言う出ない!
儂は数えきれんほど恵まれておるし、子もおる」
「そうじゃ!儂は子を愛しておるぞ」

アプリコット
「そうね、天下様は愛を持っていらしゃる」

天下
「んぅ 話をはぐらかすな!
お主は、儂と家康の何方を尊敬するのじゃ?」

アプリコット
「天下様は何と答えても、お気に召さないはずです」

天下
「儂を尊敬し服従すれば命を救おうと言っておるのが分からぬのか?」

アプリコット
「いいえ、天下様を尊敬すると申しても、
家康様を尊敬すると申しても、納得頂けない筈です」

天下
「何故じゃ!」

アプリコット
「利休様がわびさびの茶を極めておりましたところ
天下さまはわびさびの茶はお気に召さぬと豪華絢爛な茶会を
命令為されました。

天下
「?」

アプリコット
「利休様はわびさびの茶を立てても、
豪華絢爛な茶を立てても、
天下様の怒りに触れたのです」

天下
「貴様!何を言いたいのじゃ!」

アプリコット
「私が天下様を尊敬すると申しても
天下様には納得して頂けないということです」

天下
「分かったような事を、
抜け抜けと、
・・・・・・」

「嘘でもいいから、
儂のことを尊敬すると申してみよ」

アプリコット
「天下様が戦をお止めになれば
太閤様を、心から尊敬し、敬服致します」



天下
「のう、利休よ、儂は裏で信長様を殺したのだと噂されておる」

利休
「そのような噂を、お気に召す必要は御座いますまい」

天下
「歴史は、如何にでも書き換えられる
儂が黒幕であったことを消しておきたいのじゃ」

利休
「それでしたら、ご安心召されたら宜しい」
「いろいろ手を打ってございます」

天下
「いや、まだ不十分だ」
「庶民の噂は打ち消すことが出来んぞ」

利休
「分かりまして、ございます」
「それでは、秀吉様は少し前の書状を書いて
利休めにお渡しください」
「利休はその書状を骨董屋に売りつけてまいります」

天下
「んー。。。
儂が信長様をどれだけお慕い申していたか、
どれだけ深い悲しみに打ちひしがれていたのか
書状にして残しておくのじゃな!」

利休
「天下様の書状は畏れ多いと言って、
大切に扱われ、代々の家宝として
いつまでも残っていくことでしょう」

天下
「んんん。。。。
書状だけだと心もとないのぉ」
「あの頃、略奪された金品を返しておけ」
「そして、信長の子孫に
儂が特別な配慮をし、特別な処遇をしてきたことを
示しておくのじゃ」



秀吉
「やいチビ助!
もう誰も儂に逆らう者は居らんようになったぞ」

アプリコット
「天下様は女性に苦労しそうですね」

秀吉
「んー。。。
そうかのぉーーー。。。」

馬鹿言え!

危うく本音を漏らしそうになったわい」

アプリコット
「本音を言えば楽になりますよ」

秀吉
「話をはぐらかすな!
もういい加減、儂のことを尊敬してみては如何じゃ」

アプリコット
「それでは、戦をお止めになる
決心をなされたのですね!」

秀吉
「しかしのぉ
儂はこの戦に意見した奴ら皆を殺してきたのじゃぞ
示しが付かんじゃろーが」

アプリコット
「私が進言したことを伏せておけば良いのよ」

秀吉
「チビ助の話など如何でも良いのじゃ」
「このまま負け戦で終わらすことは成らんじゃろーが」

アプリコット
「天下様は日の出国の王様ですから、
この国が安泰ならば何も恥じることはありませんよ」

秀吉
「馬鹿言え!
儂が恥じる訳があるめーが」

アプリコット
「でも良かったわ
戦をお止めになれば
日の出国の人々も幸せになるのよ」

秀吉
「だから、止めるなどと言ってはおらん」
「儂は戦が好きなんじゃ」
「儂から戦を取り上げんでくれ」

秀吉
「そういえば、おめー
利休の事でオモレー事を言っとったのー」
「利休がわびさびの茶を貫こーが、
儂の天下の茶を嗜もーが
何方も叶わぬと申しておったな」

秀吉
「おめー
利休と通じて何を企んどるんじゃ」
「利休はとっくに儂の手の中で転がっとるぞ」

アプリコット
「利休様には
天下様が戦をお止めになるように
進言してくださいとお願いしたのよ」

秀吉
「利休からはそんな話は聞いとらんぞ」

アプリコット
「利休様は天下様の茶道の先生と
聞いておりましたから
天下様を説得してもらえると思って
お願いしたわ」

秀吉
「んんんんーーーーーー」
「面白くない!」
「利休めは、チビ助よりも計算高いという訳だな」
「奴は今になって
儂に命を懸けて仕えるとおべんちゃらを言い出した」
「裏では、儂の先生気取りか!」
「気持ちわりー奴じゃ」

アプリコット
「利休様は先生気取りなど
絶対になさってはいません」
「利休様はわびさびの茶を極めた茶人として」
「天下様と茶を嗜みたいと申されている
それだけなのですよ」

秀吉
「だから!
利休めはわびさびなど言って
儂の怒りを踏みたく無いだけなんじゃ」

アプリコット
「そんなに、お疑いになっては
利休様がお可哀そうです」
「私は利休様に大変な迷惑をお掛けしてしまいました」

秀吉
「ははははは。。。にひひひひひ」
「チビ助。チビ助は甘いのぉ」
「利休はのぉ
茶の席でお主を惨い方法で処刑することを
快諾したのじゃぞ」

「それでも、利休を許せるのか?」

アプリコット
「それは、天下様が望まれたことで、
利休様の意思ではありませんわ」

秀吉
「むぎゅゅゅゅゅゅゅう」
「貴゛様 儂を馬鹿にする気か!」
「むむむむむむむむ」

アプリコット
「本音を言えれは楽になりますよ」



秀吉
「のお、大納言」
「大納言が変なことを言うんで、
チビ助の処分が遅れとるぞ」

家康
「太閤様は、まだ異国の姫様を
お気に召しておられるのですか?」

秀吉
「チビ助と思って侮っておった」
「あのチビ助には、どんな脅しも通じんのじゃ」

家康
「小さな子供、異国の地で
健気なことですなぁ」

秀吉
「そこで、脅し方を変更しようと思うとるんじゃ」
「チビ助めは、情にもろいところがあるけーのぉ」
「従わぬとあらば、他の者が生贄になると脅すんじゃ」
「誰を生贄にしようかのぉ」
「大納言は誰を生贄にするがいいと思うかのぉ」

家康
「もう、あの者に関わるのをお止めなさい」
「放っておいて害はあるますまいに」

秀吉
「なんじゃと、儂に指図する気か!」

家康
「どうも、太閤様は怒りっぽくなられとる」
「何故、あの者に執着為されるのか、
か弱い女子で御座るが?」

秀吉
「大納言であっても、儂への指示は許さんぞ」
「これ以上庇い立てすれば、容赦せんぞ!」

家康
「太閤様、ご冷静になさいませ」

秀吉
「儂はのぉ お主と争いたくないのじゃ」
「しかし、必要とあらば戦国の世に戻しても良いと思うとる」
「どうも、戦の勘が鈍ってきとる
儂はのぉ 戦が無いと面白く無いのじゃ」
「戦をして勝利することが
儂の生きがいなんじゃ」

家康
「・・・・・・」




利休
「秀吉様は、断固として思い通りにしたいようですな」
「申し訳ない事じゃが、戦を止めることは諦めて、
秀吉様を敬愛し、お父様のように慕って下さらぬか?」

アプリコット
「はい、秀吉様を愛しております」
「秀吉様も、家康様も、利休様も神としてお慕い申しています」

利休
「・・・・・」
「では、秀吉様が納得しないのは、
心から慕っていないことを見透かされているのじゃろうな」

アプリコット
「私は、心から秀吉様を愛しております」

利休
「・・・・・」
「では、何故、納得されないのか?????」
「戦を止めて欲しいと言ってはおらんか?」

アプリコット
「はい、天下様に会うたびに申し上げていますよ」

利休
「うむぅ、戦を止めて欲しいとお願いすることは
止めた方が良いとは思わぬか?」

アプリコット
「いいえ、私は言い続けることが必要だと思っています」

利休
「貴方が指図すれば、秀吉様は意地でも言うことを聞きませんぞ!」

アプリコット
「では、私が戦を褒めたたえれば、
戦を止めるとお思いでしょうか?」

利休
「少なくとも、貴方の身に迫っている危機からは
脱せられる筈じゃ」

アプリコット
「天下様は、私に危害を与えたことは一度もありませんよ」
「むしろ、利休様をはじめ
ご家来の方々の身の上が心配です」
「十分に注意してください」

利休
「実はな。。。。
姫様の心配が現実のものとなりつつある」
「天下様は戦乱の世で輝きを取り戻したいと
考えておるようでな」
「戦が無い平安な世の中が
退屈でしょうがないような」
「戦が叶わぬことで、
権力を持て余して苦しんでおられる」

「お願いするのも変なことなのだか、
戦をする天下様を敬愛して、
戦を正当なこととして、褒めたたえては
下さらぬか?」

アプリコット
「戦をもっとしてほしいとお願いするのですか?」

利休
「いかにも、秀吉様の機嫌を良くして欲しい」

アプリコット
「断れば、如何なりますか?」

利休
「責任を取ることになります」

アプリコット
「いいわ、私が責任をとります」

利休
「いいえ、貴方は責任が取れないのです」
「貴方の代わりに、誰かが責任を取らされます」

アプリコット
「変なことだわ」

利休
「もう、意地を張るのはお止めなさい」

アプリコット
「意地なの。。。。。」

利休
「抵抗しても無駄です」
「諦めることです」




家康
「どうじゃ、秀吉との話し合いは無駄であったろう」
「これ以上関われば、利休殿の命はありませんぞ」

アプリコット
「そうなのね」
「秀吉様は、私が服従しなければ
利休様を代わりに処罰するといっているのですね」

家康
「秀吉は、お主の手に負える相手ではない」
「今すぐ、この国から出ていくのじゃぞ」

アプリコット
「分かったわ。
ただし、条件があります」
「私の代わりに、家康様が秀吉様を戒めて下さい」

家康
「馬鹿を言う出ない」
「秀吉を戒めるどころか、意見することも出来ぬは」

アプリコット
「出来ますとも」

家康
「お主なら出来るがのぉ」

アプリコット
「私ではなくて、
秀吉様の奥方に戒めてもらえば良いのよ」

家康
「それは、最も危険な方法じゃ」

アプリコット
「では、私が頼んでみましょうか?」

家康
「絶対に成らん」
「絶対ダメじゃ」

アプリコット
「ダメなの?」

家康
「分かった」
「儂が責任を持って、秀吉を戒めよう」
「どうじゃ、これで許して貰えんか?」

アプリコット
「ダメよ」
「具体的に如何様な国作りをするか分からないもの!」

家康
「何を言っとるのじゃ」
「天下は秀吉が握っとるのじゃぞ」
「儂は、関東に隠居の身じゃ
国の方針は秀吉が決めることになっとる
無茶を言うな」

アプリコット
「具体的な国の方針が分からないのでは、
責任を持って戒めることにはならないわ」

家康
「んぅ。。。
えい、分かった、国の方針じゃな」

「先ず、侵略した他国に謝罪して、
その国の儒教を取り入れようと思うぞ」
「儒教により、人々に正しい教えを広め、
年配者を敬い、村の長に従い、長は大名に、
大名は幕府に忠誠を誓うのじゃ」
「下々の人々が儒教によって秩序だった生活をすれば、
おのずと国は規律正しい統治国家になるのじゃ」

「如何じゃ、儒教が国の方針じゃ」
「儒教を取り入れれば、
侵略した人々の怒りも少しは癒えるのではあるまいかのぉ」

アプリコット
「分かったわ」
「やはり、家康様は天下人よ」
「秀吉様を戒めて、侵略を止めさせてくださいね」
「私は、今の言葉を信じて船出しようと思います」

家康
「えらい約束をさせられたものじゃ」

アプリコット
「何か言いましたか?」

家康
「ははは。。独り言じゃ」