Apu の All That I Am

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死のバルド(死の直後)

2011年10月01日 | チベット 死者の書
師僧 : 「呼吸が止まる…。するとあなたの前には生命の根源を作る眩い光が現れる。この光こそチベット密教が伝えてきた始まりの光と言われるものなのです。」

~ 自分の死に気付きはじめるソナム・チェリン ~

師僧 : 「その光だ。あなたの前に現れてきたその光と溶け合うのです。この光は色や形の無い、全く穢れが無く『空(くう)』にして至福な輝きに満ちている。この光こそが生と死を超越した命の流れその物なのです。この光に包まれるのです…。」



小僧 : 「(視聴者に向けて)死者を解脱に導くこの光。死の瞬間こそ死者の心が身体という一種のくびきを離れ、まったき自由に帰っていこうとする、それは晴れがましい瞬間なのです。」



~ 悲しむ家族 ~

師僧 : 「いよいよ、身体と意識の分離が始まったようだ。」

~ 動揺する家族 ~



小僧 : 「(視聴者に向けて)この時になると死者は自分が死んでしまったのか、まだ生きているのか分かりません。でも家族のことは見えるし、悲しんでいる声も聞こえます…。」



師僧 : 「ソナム・チェリンよ、良く聞きなさい。あなたにはあの死というものがやってきたのです。でも、寂しがってはいけない。死は誰にでもおこるのです。この世に執着や欲望を持ってはいけない。もうこの世にとどまることは不可能なのです。」



~ 意識が身体から抜けていく ~

バルド・トゥドルの声 : 「今や、汝の意識は既に身体を離れて周りの世界を見ているのだ。家族や親戚の者が泣いているのが見える。」

~ 死者の意識がその場を浮遊する ~



バルド・トゥドルの声 : 「汝は自分の寝ていたベッドに行ってみる。だが、そこにいるのはもはや汝ではない。汝が見るのは自分の抜け殻だけなのだ。」

バルド・トゥドルの声 : 「家族や親戚の者が名前を呼んでいるのが見える。しかし、それに応えようとしても彼らには分からない。汝はとても悲しい気持ちに襲われていくのだ…。」



師僧 : 「ソナム・チェリンよ、良く聞きなさい。あなたには死がやってきたのです。でも、寂しがってはならない。この世界から外に行くのはあなた一人ではないのです。死は誰にでもおこるのです。」

師僧 : 「根源の光の体験が終わると、次には様々な光や音や色を体験するでしょう。それを怖がってはいけない、慄いてはいけないのです。」

師僧 : 「その光も音も色も実体は無く、あなたの意識が投影されて現れているのに他ならないのです。」



バルド・トゥドルの声 : 「死後に体験する不思議な光をチベット語では存在の根源から発する光『オプセル』と呼ぶ。最近では臨死体験者の多くがこうした不思議な光を体験することを証言している。」





※出典 … 1993年 NHKスペシャル「チベット死者の書」 第2回 死と再生の49日 脚本/中沢新一




 
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