arata-tokyo-jp's blog(Henry Nagata)

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プロになると才能がつぶされる? 

2004年09月28日 13時36分48秒 | エッセイ
音楽でも詩でもデザインでも何でも、アマチュアの中級、上級者の人たちにとっては、プロになる事は大きな夢でしょう。
そこには華やかな世界が待っているような気がします。
自分の才能を思う存分発揮して仕事をこなしていく。
そして有名になる。良いですねぇ。

ところがアマチュアとして才能があるのに、プロになれない人たちが出てくるのです。



あるテレビ番組で、有名なカメラマンに
「アマチュアで優秀な人が、どうしてプロになるとダメになるのだろう」という質問をしていましたが、それに対して
「そりゃそうだよ。だってアマチュアは良い作品を作る事だけを考えていればいいけど、プロは注文で作るんだから」
とそのカメラマンは話していました。

手塚治虫氏でさえ、「鉄腕アトムは最初は女の子だったのに、出版社の注文で男の子になったのだ」と言っています。
ここでまず、この「注文」に対して「イヤだ!」と逆らっては、まずプロになれない訳です。

テレビの鉄腕アトムは手塚治虫の考えていたアトムとは違うと思います。
テレビの注文に合わせてある筈です。
漫画本のアトムでは、暗くてテレビには向かないのです。
多分「人間とロボット」の関係に、人種差別の問題が含まれているからでしょう。
ロボットは人間の奴隷なのか?・・・という問題です。

世界的な発明家として有名な糸川博士も、こんな事を著書に書いていたと思います。
「嫌な仕事を引き受けている内に、良い仕事も入って来る」
「嫌な仕事を断っていると、良い仕事も入って来ない」



ではこの「注文」をする人たちとは、どんな人たちなのでしょうか。

作曲家でもデザイナーでも、まずディレクターの注文を受けます。
ディレクターはクライアント(企業)の注文を受けます。
ディレクターは「板ばさみ」の状態になります。
なぜならクライアントにとっては、ただ「イメージ良く、商品が売れれば良い」というのがあって、作曲家やデザイナーの「個性」や「作品の良し悪し」などは考えてはくれないからです。
例外は勿論ありますが・・・

プロになるにはまず、この自分を理解してくれないクライアントの気持を、理解出来る人でなければならないと思います。

こんな風に考えて見ると分かりやすいかもしれません。
もし自分がCDでもDVDでも本でも購入する立場の時に、「優れた作品」や「個性的な作品」だけを購入しているのか?
・・・と、自分に問うてみればよいのです。
そうすると、案外「通俗的」な物も購入している自分に気が付く事と思います。




ではもしプロになって、ディレクターの注文に応えられるような作品を書けるようになったら、素晴らしい事でしょうか?

あるデザイナーは、プロになって10年ほど同じ様な内容の仕事ばかりをやっている内に、自分本来のやりたい事が出来なくなってしまったと言って、デザイナーを辞めてしまいました。
あるコピーライターは、若い時には詩や脚本などを書いていましたが、長い間仕事をしている内に、詩も脚本も書けなくなってしまったと言っていました。

私は40歳を過ぎてからラジオCMの作曲の仕事をを始めましたから、プロになって嬉しい反面、このような話を見たり聞いたりしていますから、充分注意しなければならないと思っています。
私は一流ではないので・・・。

一流のプロというのは、注文に従いながらも自分の個性を発揮しています。
つまり、かなり「強い個性」を持っている人たちなのです。
「注文」によって自分の個性的な部分を、何度も削り落とされても、それでも個性が輝いています。

確か作曲家のいずみたくという人が、「仕事の時には必ず自分の個性をどこかに入れる。もし入れなければ仕事は来なくなる」というような事を言っていたと思います。

私が作曲の仕事を引き受ける時に、良くディレクターから言われた事は、
「あなたの曲は暗いし、クセがあるから、あなたにとっては明る過ぎる曲や、クセのない曲を書いて下さい」という事です。

私は「はい、分かりました」と言って仕事を引き受けますが、内心「本当にクセのない曲を書いていたら、その内に仕事は来なくなってしまう」と思っていますから、少しはクセのある部分を残して仕事をしようと思っています。
誰にでも書けるような曲を書いていたら、その内に仕事は他の人に行ってしまうでしょう。
そこが難しく、また面白いところです。



ディレクターにこんな事も言われます。
「あなたもその内につぶされてしまいますよ」
つまり「仕事を長年やっている内に、本来自分のやりたかった音楽が書けなくなってしまいますよ」という訳です。

私がそうならないように気を付けている事は・・・
仕事で個性のない曲を要求されても、必ずどこかに個性を入れる事。
また仕事以外に、金儲けなしで「趣味」で作曲を続ける事。
つまりアマチュア精神を大切にする事です。
プロのたくましさを持ちながらも、アマチュアの繊細さや純粋さを持ち続けたいと思っているのです。
上手く行くでしょうか?
これはやってみなければ分からない事です。
とにかく、もし仕事で毎回20秒のラジオCMだけをやり続けていたら、作曲の才能などはすぐにつぶれてしまうのは確実です。




まとめますと、プロになるには先ず・・・
クライアントというのは、自分の個性や作品の良し悪しなどを理解してくれない人たちなのだ、という事を理解してあげる事。

またディレクターというのは、クライアントと自分との間で板ばさみ状態でいてくれて、両方の立場を理解してくれる人である事。
ですから、意見が合わなくても絶対に争ってはいけないという事。
基本的には一応「注文に従う」という事。

それからプロになったら、個性をつぶされてしまわないように(自分の個性を仕事で失くしてしまわないように)、アマチュア精神を持ち続ける事。
仕事で個性的な部分を削り落とされても、それでも個性が出るように工夫する事。

ところが、いつだったかディレクターからこんな事を言われてしまったのです。
「あなたもだんだん仕事に慣れて来たねぇ、良い事か悪い事か分からないけど・・・」
つまり「仕事には慣れて来たけれど、個性を失くしてしまったのではないか?」という意味なのです。
怖いですね。
仕事を始めた時から、もうつぶされ始めているのです。

これから逃れる為には、少しでも新しい部分を仕事に取り入れて行く事だと思っています。
こんな事を考えている今日この頃です。
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