1995年9月3日、ナオミの22才の誕生日前日。
人間界に一人送り込まれたマーメイドは祖母トーミのまじないのおかげか、教え導くものと助けてくれる仲間にはたしかに恵まれてきた。
でも、これまで私は十分「人生」を切り開いてきたのだろうか。トラブルに引き寄せられて、仲間を救いたい一心で闘って来ただけじゃない。
気がかりがひとつあった。
いつの間にか、孔明の姿がキャンパスから消えていた。おばあさま、もしも孔明がトラブルに巻き込まれていて、わたしがトラブルに引き寄せられるマーメイドだったら、孔明のところに呼び寄せて。
その日、ナオミは夢を見た。
マーメイド姿のナオミの前に、伝説の巫女であった母ユーカが立っていた。
(ナオミ、わたしはあなたを愛していなかった。あなたはすてられたの)
(いいわ。わたしには、尊敬するシンガパウム様がおります。それに、元々、あなたは記憶にありませぬ)
ユーカの姿が消えると、今度は父シンガパウムが現れた。
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(ナオミ、お前にはがっかりさせられた。もう見捨てることにした)
(シンガパウム様らしくもない物言い。それに、すでに親衛隊長様とのお別れは済んでございます)
シンガパウムの姿が消えて、次に、育ての父ケネスが現れた。
「ナオミ、助けてくれ。やられた。背中のキズが痛むんだ」
いつの間にか、ナオミの姿は人間に戻っていた。
「あなたは誰? ケネスなら、そんななさけないこと口が裂けても言わない。いつでも自分よりも、わたしを心配してくれるはず」
次に、ケネスの姿が消えて、目の前に夏海が現れた。
「ナオミ、あなたの弟を助けて」
「夏海、トミーのことを言っているの?」
「そうよ。トミーの名前は、あなたのおばあさまトーミから取ったのよ」
「なぜ?」
「それは、トミーの父親がケネスだから」
「そんなはずない。いつも酔っぱらうと『俺はタネ無しスイカ〜』と唄ってた」
そこで、ナオミは目が覚めた。不思議な夢だった。気になっていることが夢に出るというが、それならなぜ孔明が夢に出てこないのか?
まだ、ナオミはおかしな夢を見た理由には気付いていなかった。
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