(「人生の唯一の目的、それを生きること」。
ラティガンとか申す劇作家のセリフかと。
そんなセリフより「人生は一幕の劇」とでも言って欲しいものでございます。わたくしごときにわかりますのは、人間界で通じるのは「力」のみということ。善とは自分にとって都合がよいもの、悪とは自分に刃向かうものに与えるべき名。ワラキアの「串刺し公」と畏れられながら戦い続け、従うものには安らぎと恩賞を、刃向かうものには恐怖と罰を与えてきたのは、その故にございます)
(冥界で大将軍となった姿をストーカーとかもうす作家に夢枕に見られて、魔人の汚名をきせられたのは不憫であったがのう)
冷酷で意地が悪くとも、残忍や邪悪でないプルートゥは時折こうしたやさしさを垣間見せる。
(ドラクールよ。最高神たちの議論の話は聞いておろう。ネプチュヌスは「ゲーム」と言ったが、儂は端からゲームなどをする気はない)
(「審判」でございますな・・・・・・)
かつての大将軍とは信じられぬほど今やドラクールの思念は弱かったが、切れはいささかもにぶっていない。
(その通り。儂は「裁くもの」として、人間たちの自滅を待つつもりであった。だが、あやつら自らがタンタロスへ落ちることを望むのならばよろこんで後押しをしてやろうでないか。おそらくはアポロノミカンをめぐる争いとなろう)
アポロノミカンという言葉に、思わずマクミラがガクッと崩れ落ちる。
(初めてじゃな。お主がそんな姿を見せるのは。自分のことになると予知が働かぬというのも、まんざら謙遜ばかりでもないか?)
ドラクールは思った。ムリもない。アポロノミカンこそ、儂が死より苦しい思いをすることになった原因。斜に構えていても誰よりの親思いのマクミラが我が過去を一度のぞき見て以来、二度と見まいと決心したのも知っておる。
当時、跳梁跋扈していたある錬金術師から「不死の肉体と不屈の精神を与えよう」という誘いを民のためと受け入れたのがきっかけだった。
あやつ、名は何と言ったか?
たしか、パラケルススとか・・・・・
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