冥界は、精神世界を管轄するために元々魔界からの波動攻撃を受けやすい。侵入する大物魔物たちをかたはしからコキュートスの牢獄に閉じこめた結果、ここ数千年は「平和」が保たれていた。
かつての冥界親衛隊長ブラド・ツェペシュとマクミラ親子の相性は理想的であった。足下からのオーラで百匹の魔物をたじろがせ、一睨みで千匹の魔物を打ち震えさせた“ドラクール”にひるんだ魔物たちは、気づいた時にはマクミラの爪で魂を切り裂かれ、マクミラの兄アストロラーベとスカルラーベの部下たちになすすべなく捕捉された。
魂を切り裂かれた魔物は、心が打ち震えるほどの情念に苦しんだ。なぜなら冥界一の美女の気高さは、消えることのない痕跡を彼らのハートに刻んだから。だが反乱者が魔女であった場合には、心に一生消えない怨みを残した。
(マクミラと魔女たちのいさかいに、ナオミがどうかかわるか見物するのも一興か)ユピテルも応じる。
(いや、興ざめというものじゃ!)プルートゥは、例によって何かよからぬことを企んでいる。(あの禍々しい力を持つ四人にかかれば、今のマクミラを相手にするなど赤子の手をひねるようなもの。それでは、ゲームが終わってしまうではないか?)
(では、どうする?)ユピテルが、けげんな顔で思念を送る。
(助太刀を送っては、どうじゃ? ルールが変わったと思えばよかろう。ただし、冥界のことは冥界のものによって始末をつける。天界と海神界からの助太刀は不要じゃ)ネプチュヌスが、思念を送り返す。
(ゲームとは、ルールにしばられるもの。しかし、参加者たちが同意すれば、ルールを変えられるのも、またゲームか・・・・・・)
最高神には、人間のようにくだらない思惑で相手をやりこめる趣味はない。長き時を生き過ぎた彼らが嫌うものは倦怠、そして望むものは興味をかき立ててくれる展開。
ユピテルが思念を送って宣言する。(よかろう、ゲームはルールを変えて続行とする! ただし、今回、助太刀に向かうメンバーは人間界に行ったきりとはいかぬぞ。すでに多くの神々が人間界に降臨しすぎている。誰を送るかは冥界にまかすとするが、決着がつき次第、送られた神々は冥界に戻ることとする!)
ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
にほんブログ村