アストロラーベが気を取り直して言う。
「唄姫よ、鏡をはりめぐらして我が半透明の槍を使った秘技を封じたつもりか? だが、透明になれば鏡があろうとなかろうと私の姿を見ることはできないぞ」
「何もわかってはいないでありんすな、冥界の軍師」リギスが応じる。「鏡を用意したのは、秘技ファントム・パラダイスを使うためでありんす」
リギスが、高々と両腕を高く上げた。
ファントム・パラダイス!
リギスの全身が光につつまれた次の瞬間、そこにいたのは数千の鏡に写ったマクミラだった。
「妹の姿になれば、このアストロラーベが気後れするとでも思ったのか?」
「バカなことを、お兄様」リギスが、マクミラのハスキーボイスで答える。「闘ってみれば、そんなことが狙いでないのはすぐにお分かりいただけます」
「よかろう。魔術には魔術で応じるが礼儀。そちらがシェイプ・シフターなら、こちらは奥義ボーダー・クロッシングで応じるとしよう」
そこまで言うと、アストロラーベが呪文をとなえ始めた。
あなたの悪夢が私の夢になる
私の悪夢があなたの夢に
いざ、つむぎだす言葉によって呪いを払わん
冥界の神官の姿を取った歌姫よ
我が妹マクミラの姿を借りたリギスよ
私を闘う芸術家と思っているのか
いや、そうではないのだ
私は闘う芸術そのものにならん
奥義ボーダー・クロッシング!
呪文をとなえながらアストロラーベが半透明の槍をゆらゆら動かすにつれて、その姿が半透明になっていく。その姿が、今にも完全に透明になろうとした時。マクミラの両手に握られた真っ赤な鞭が、一閃した。
バチーーン。
鞭の先が、何かを捕らえた。アストロラーベの肩であった。
ファントム・パラダイスを使っている時のリギスは自分以外になれるだけでなく、その能力まで自分のものにできる。リギスは、マクミラの心眼によってアストロラーベの居場所を感じていた。鞭が当たった肩が裂けて、冥界の業火が吹き出していた。まさしく、マクミラの編み出した必殺技ピュリプレゲドン・フィップであった。
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