約束の日に彼女は寝坊が理由で一時間以上遅刻をしてきた。
仕事で疲れているんだからしょうがないだろうし、そんなことを責めても時間が戻ってくることがないのだから、気持ちをすぐに切り替えた。
駅の近くのベンチでクレープを食べた。その時また彼女が質問をしてきた。
タバコを取り出し、僕の目を見た。僕は目を逸らして、遠くを見つめた。
「タバコを吸う女性はどぅ思う?」
電話で話したことがあったが、彼女はかなりのへービースモーカーらしい。
実際にタバコを吸う姿はみたことがなかった。
正直女性でタバコを吸う人は好きではない。
しかし、それを彼女には伝えていなかった。晩冬の空が少し曇りだした。
「吸ってストレス解消になるんだったら、吸いすぎなければいいんじゃない」
僕はタバコを吸うことを否定しないつもりで言った。
「違うの、聞きたいのはそんなんじゃなくて、博之くんが吸う人を好きか嫌いかを聞いているだけなの。嫌に思われたくないから聞いているんだよ」
完全に裏目に出てしまった。
僕は人に目を合わせるのが苦手だが、彼女の大きな黒い瞳にゆっくりと視線を合わせた。
「ぶっちゃけると、あんまり吸ってほしくないかな。タバコの匂いの女性は苦手かも…」
そう言うと彼女はにっこりと笑って
「うん、わかった。なるべく吸わないようにがんばるね」
始めから素直に言えばよかった。
後悔しても過ぎたことは戻ってこない。
戻ってこないなら、新しいものをつくればいい。
「博之くんの地元はどんなところ?」
二月の風は冬の匂いと彼女の匂いを運んだ。
「すごく田舎で、港町で漁業が盛んなところかな。自然はあるけど退屈なところだよ。早くここを脱出したいなって思ってた」
「でもそんな自然がたくさんあるところに行ってみたいな。行ったら案内してくれる?」
「全然構わないよ。電車で片道二時間かかるけどね…」
アーケードの入り口に友達がバイトしているファーストフードがある。
僕はそこでたちどまり、彼女に言った。
「友達のとこに顔出してもいい?」
「でも、まだ彼女じゃないよ」
また、見えないものがまとわりついた。
勘違いしていた自分が恥ずかしかった。しかも、アパートに行きたいや、地元に行きたいなど、いいように振り回されていて、手の平で踊らされている。
まさにそんな状態であったことは間違いではなかった。
仕事で疲れているんだからしょうがないだろうし、そんなことを責めても時間が戻ってくることがないのだから、気持ちをすぐに切り替えた。
駅の近くのベンチでクレープを食べた。その時また彼女が質問をしてきた。
タバコを取り出し、僕の目を見た。僕は目を逸らして、遠くを見つめた。
「タバコを吸う女性はどぅ思う?」
電話で話したことがあったが、彼女はかなりのへービースモーカーらしい。
実際にタバコを吸う姿はみたことがなかった。
正直女性でタバコを吸う人は好きではない。
しかし、それを彼女には伝えていなかった。晩冬の空が少し曇りだした。
「吸ってストレス解消になるんだったら、吸いすぎなければいいんじゃない」
僕はタバコを吸うことを否定しないつもりで言った。
「違うの、聞きたいのはそんなんじゃなくて、博之くんが吸う人を好きか嫌いかを聞いているだけなの。嫌に思われたくないから聞いているんだよ」
完全に裏目に出てしまった。
僕は人に目を合わせるのが苦手だが、彼女の大きな黒い瞳にゆっくりと視線を合わせた。
「ぶっちゃけると、あんまり吸ってほしくないかな。タバコの匂いの女性は苦手かも…」
そう言うと彼女はにっこりと笑って
「うん、わかった。なるべく吸わないようにがんばるね」
始めから素直に言えばよかった。
後悔しても過ぎたことは戻ってこない。
戻ってこないなら、新しいものをつくればいい。
「博之くんの地元はどんなところ?」
二月の風は冬の匂いと彼女の匂いを運んだ。
「すごく田舎で、港町で漁業が盛んなところかな。自然はあるけど退屈なところだよ。早くここを脱出したいなって思ってた」
「でもそんな自然がたくさんあるところに行ってみたいな。行ったら案内してくれる?」
「全然構わないよ。電車で片道二時間かかるけどね…」
アーケードの入り口に友達がバイトしているファーストフードがある。
僕はそこでたちどまり、彼女に言った。
「友達のとこに顔出してもいい?」
「でも、まだ彼女じゃないよ」
また、見えないものがまとわりついた。
勘違いしていた自分が恥ずかしかった。しかも、アパートに行きたいや、地元に行きたいなど、いいように振り回されていて、手の平で踊らされている。
まさにそんな状態であったことは間違いではなかった。