「帰ろうか」
楽しいはずなのに、話したいことが口に出せずにいるもどかしさが、重圧のようにのしかかった。
とも子ともっと近づきたいのに、会う度に話すことがなくなるようでもあった。 一緒にいるだけで幸せの余韻に浸れるはずなのに、圧迫される何かがあった。
人を好きになった後に過ぎ去ってしまう恐怖。
信じていた人が目の前からいなくなる孤独。
無意識に防衛本能が働く気がした。話す話題は、線香の燻らす煙に似て、話しては消え、次第に本体がなくなるようだった。
「雪が降ったときにまた来ない?」
帰りのエレベーターの中で、とも子に言った。
一階に着くと同時にとも子は口を開いた。
「どうかな…」
予想外の答えに一瞬間が空いた。
マフラーを巻きなおし、彼女は歩き出した。
それを追いかける様に僕も続いた。すぐに追いついたが、とも子を遠くに感じてしまった。
見送らなくていいよ、駅に着くと、とも子はそう言って、すぐに僕の視線から消えた。
その一週間後だった。
彼氏が出来たという連絡がとも子からが届いた。
やはりあの時に強引でもいいから、手を繋ぐべきだったのか。
全てが今更のことになった。
詰め将棋のように相手を詰めるところで自分をつめてしまっていた。
メールが届いたのは、いつもように深夜だった。
外はやけに明るかった。
カーテンを開けると、ついに近くに有料駐車場が完成し、そのライトで辺りを照らしていた。
そのせいで、窓からは星は見えなくなっていた。
いつか輝きたいと思っていた星も強い光でかき消されてしまった。
尫弱だった自分と思い込んでいた星も消えた。
つまり、僕自身が消えてしまった。
一段と冷える夜は僕の人生の中で一番寒くて長い夜だった
楽しいはずなのに、話したいことが口に出せずにいるもどかしさが、重圧のようにのしかかった。
とも子ともっと近づきたいのに、会う度に話すことがなくなるようでもあった。 一緒にいるだけで幸せの余韻に浸れるはずなのに、圧迫される何かがあった。
人を好きになった後に過ぎ去ってしまう恐怖。
信じていた人が目の前からいなくなる孤独。
無意識に防衛本能が働く気がした。話す話題は、線香の燻らす煙に似て、話しては消え、次第に本体がなくなるようだった。
「雪が降ったときにまた来ない?」
帰りのエレベーターの中で、とも子に言った。
一階に着くと同時にとも子は口を開いた。
「どうかな…」
予想外の答えに一瞬間が空いた。
マフラーを巻きなおし、彼女は歩き出した。
それを追いかける様に僕も続いた。すぐに追いついたが、とも子を遠くに感じてしまった。
見送らなくていいよ、駅に着くと、とも子はそう言って、すぐに僕の視線から消えた。
その一週間後だった。
彼氏が出来たという連絡がとも子からが届いた。
やはりあの時に強引でもいいから、手を繋ぐべきだったのか。
全てが今更のことになった。
詰め将棋のように相手を詰めるところで自分をつめてしまっていた。
メールが届いたのは、いつもように深夜だった。
外はやけに明るかった。
カーテンを開けると、ついに近くに有料駐車場が完成し、そのライトで辺りを照らしていた。
そのせいで、窓からは星は見えなくなっていた。
いつか輝きたいと思っていた星も強い光でかき消されてしまった。
尫弱だった自分と思い込んでいた星も消えた。
つまり、僕自身が消えてしまった。
一段と冷える夜は僕の人生の中で一番寒くて長い夜だった