即答だった。
僕はまた目を逸らしてしまった。
会計は彼女が払い、外にでるとアーケードは昼間と変わらず明るく、人がたくさん行き来していた。
僕は立ち止まり彼女に問いかけた。
「どこか、いきたいところはある?」
うーんとそう呟くと、博之くんに任せるといい、僕の肩をポンと叩いた。
「わかった。一度は行ってみたい場所があるんだ」
彼女が出来たら行きたい場所があった。
でもまだ早い気がしたが、行く宛もなかったので、心に決めていた場所に向かうことにした。
数年前に出来たわりと新しいビル。
玄関近くのエレベーターはすぐに僕らを迎え、二人だけで中に入ることが出来た。
トモはどこに向かうかすぐにわかっていたようだった。
無音に近い状態の中、増え続けるカウントを見ながら、恐る恐る僕は初めて?と聞いてみた。
「友達と来たときがあるよ」
彼氏と来たときがあるといわれなかっただけ安心したが、友達という言葉が少し気がかりだった。
ビルの頂上にある展望台は平日のせいか、そんなに人はいなかった。
ベンチの隅でカップルが景色も見ずに抱擁したまま、動かなかった。
僕らはそれを尻目に街を上から一望した。
走る車のヘッドライトやアーケードの照明のごく日常が見る角度によって、非日常的な一つの芸術作品に姿を変えていた。
たぶん独りで見たなら、何も感じはしないだろう。
違う日にここに立ってみても、今とは違う感想になる。
なぜなら、トモといるこの瞬間は二度と訪れない、今の高揚感はもう味わえないからだ。
僕はトモの手を握りたかった。
展望台は静かで歩く音だけが響いた。
まるでそれは木霊のように反響していた。
手をつなぐタイミングやそれを抑える感情で綺麗だねと会話はそれの繰り返しとなっていた。
トモにはほかにこうして遊ぶ男友達がいる。
自分から聞いといて、やりきれなさや、先に進もうという感情が強くなっていたが、その距離の埋め方が要領よくつかめていなかった。
トモの横顔をまじまじと見る。
アイラインの入った力強い目、そして、唇の下に遠慮しているかのようにある小さなホクロ。
「何?」とトモが僕の視線に気づく、心の中では夜景よりも綺麗なものがあったよと、ロマンチックなことが言えたが、口に出すことは出来ない。
だから、なんでもないといって、また視線を避け、遠くを見つめた。
無言のまま時間だけが過ぎていった。
僕はまた目を逸らしてしまった。
会計は彼女が払い、外にでるとアーケードは昼間と変わらず明るく、人がたくさん行き来していた。
僕は立ち止まり彼女に問いかけた。
「どこか、いきたいところはある?」
うーんとそう呟くと、博之くんに任せるといい、僕の肩をポンと叩いた。
「わかった。一度は行ってみたい場所があるんだ」
彼女が出来たら行きたい場所があった。
でもまだ早い気がしたが、行く宛もなかったので、心に決めていた場所に向かうことにした。
数年前に出来たわりと新しいビル。
玄関近くのエレベーターはすぐに僕らを迎え、二人だけで中に入ることが出来た。
トモはどこに向かうかすぐにわかっていたようだった。
無音に近い状態の中、増え続けるカウントを見ながら、恐る恐る僕は初めて?と聞いてみた。
「友達と来たときがあるよ」
彼氏と来たときがあるといわれなかっただけ安心したが、友達という言葉が少し気がかりだった。
ビルの頂上にある展望台は平日のせいか、そんなに人はいなかった。
ベンチの隅でカップルが景色も見ずに抱擁したまま、動かなかった。
僕らはそれを尻目に街を上から一望した。
走る車のヘッドライトやアーケードの照明のごく日常が見る角度によって、非日常的な一つの芸術作品に姿を変えていた。
たぶん独りで見たなら、何も感じはしないだろう。
違う日にここに立ってみても、今とは違う感想になる。
なぜなら、トモといるこの瞬間は二度と訪れない、今の高揚感はもう味わえないからだ。
僕はトモの手を握りたかった。
展望台は静かで歩く音だけが響いた。
まるでそれは木霊のように反響していた。
手をつなぐタイミングやそれを抑える感情で綺麗だねと会話はそれの繰り返しとなっていた。
トモにはほかにこうして遊ぶ男友達がいる。
自分から聞いといて、やりきれなさや、先に進もうという感情が強くなっていたが、その距離の埋め方が要領よくつかめていなかった。
トモの横顔をまじまじと見る。
アイラインの入った力強い目、そして、唇の下に遠慮しているかのようにある小さなホクロ。
「何?」とトモが僕の視線に気づく、心の中では夜景よりも綺麗なものがあったよと、ロマンチックなことが言えたが、口に出すことは出来ない。
だから、なんでもないといって、また視線を避け、遠くを見つめた。
無言のまま時間だけが過ぎていった。