亡き次男に捧げる冒険小説。アメブロからの転載です。
一八
伏兵の《ウォーグ》は目を見開いていた。嫌な予感が当たった。こいつらは普通じゃない。武術とかいうやつを使う人間が、仲間を殴り殺した勢いのまま、俺に向かってくる。伏兵の《ウォーグ》は恐怖で立ち竦む。駆け寄って来たナーレは躊躇なく伏兵の《ウォーグ》に蹴りを入れた。その動きは正に神速であった。蹴りは《ウォーグ》の顎に命中した。ダメージは思ったほどではなかったが、《ウォーグ》の闘争心は完全に折れた。《僧兵》の勢いに駆られて、目の前のテーリと呼ばれる人間が大きく振りかぶる。石が飛んでくる。そう思った瞬間、《ウォーグ》の顔がひしゃげた。テーリの投げた石は、寸分違わず《ウォーグ》の顔面を撃ち抜いたのだ。流血に耐えて《ウォーグ》がよろよろと立ち上がる。まだ戦える、しかしこれ以上戦っても生き残れる見込みはない。《ウォーグ》は傷つくことを覚悟の上でナーレの横を駆け抜けた。逃亡を試みたのだ。そんな隙をナーレが見逃すはずがなかった。ナーレの手刀が《ウォーグ》の背中を強かに打つ。《ウォーグ》は大きくよろめくも、そのまま森の奥に駆けていく。テーリたち三人が追いかける理由はなにもなかった。三人は魔獣の群れに勝ったのだ。
【第1話 一九に続く】
次回更新 令和6年12月24日火曜日
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用語解説
なし