石ころ

ゲッセマネの祈り(マルコ14章)

 

 そして、賛美の歌を歌ってから、みなでオリーブ山へ出かけて行った。
イエスは、弟子たちに言われた。「あなたがたはみな、つまずきます。『わたしが羊飼いを打つ。すると、羊は散り散りになる』と書いてありますから。
しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先に、ガリラヤへ行きます。」
すると、ペテロがイエスに言った。「たとい全部の者がつまずいても、私はつまずきません。」(26~29)

 

「わたしが羊飼いを打つ。すると、羊は散り散りになる」父なる神が愛する御子を十字架で打つことは、神のご計画によることである。羊の群れを散らすことは、御子を信じる多くの者を集めて、永遠に迎えるためのご計画によることである。

 

理不尽な出来事が起こる時、それは神の良きご計画の始まりかも知れない。何ごとにも神のご存じないことは起こらず、神を信じる者には、ひとり子をたまわるほどの愛なるお方であるから

 

ペテロは自分の信仰を証明することに心を奪われて、
「わたしは、よみがえってから、あなたがたより先に、ガリラヤへ行きます。」
という大切なイエスのことばを聞き逃していた。自分を証明することに心を奪われると、みことばが聞こえなくなる

 

イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたは、きょう、今夜、鶏が二度鳴く前に、わたしを知らないと三度言います。」
ペテロは力を込めて言い張った。「たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。」みなの者もそう言った。(30~31)

 

彼らが誓ったのは、きちんとみことばを聞いていなかったので、イエスさまを知らず、自分をも知らなかったからである。

私の兄弟たちよ。何よりもまず、誓わないようにしなさい。(ヤコブ5:12)

 

しかし、イエスさまはその弱さの中に祈り備えてくださった。私たちの勝利はすべて、主があらかじめ祈り備えてくださったことによるのだ。

 

しかし、わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りました。だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」(ルカ22:32)

 

ゲツセマネという所に来て、イエスは弟子たちに言われた。「わたしが祈る間、ここにすわっていなさい。」
そして、ペテロ、ヤコブ、ヨハネをいっしょに連れて行かれた。イエスは深く恐れもだえ始められた。
そして彼らに言われた。「わたしは悲しみのあまり死ぬほどです。ここを離れないで、目をさましていなさい。」(32~34)

 

イエスさまはもっとも苦しい時に、愛する弟子たちを近くに置かれた。それまでのイエスさまはひとり退いて御父に祈っておられた。此処にイエスさまの人の子としての弱さと悲しみなどのお心があったのかも知れない。それはペテロたちへの特別な親しみであり光栄なことであった。

 

それから、イエスは少し進んで行って、地面にひれ伏し、もしできることなら、この時が自分から過ぎ去るようにと祈り、
またこう言われた。「アバ、父よ。あなたにおできにならないことはありません。どうぞ、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願うことではなく、あなたのみこころのままを、なさってください。」(35~36)

 

これから受ける杯の中身は、罪の無いイエスさまが経験されたことのない、人の過去、現在、未来のすべての罪を知ることであり、その罪故に御父に捨てられることであった。
この祈りはイエスさまだけのものである。このような経験はイエスさまだけであるから。

 

それから、イエスは戻って来て、彼らの眠っているのを見つけ、ペテロに言われた。「シモン。眠っているのか。一時間でも目をさましていることができなかったのか。
誘惑に陥らないように、目をさまして、祈り続けなさい。心は燃えていても、肉体は弱いのです。」(37~38)

 

一時間のイエスさまの悲しみと苦しみの祈りのあいだ、ただ、少し離れたところに座っているだけでも、ペテロは悲しみと不安の中で、心が折れて眠り込んでしまったのだろう。
イエスさまのこの祈りの重さに、誰であっても人には耐えられないと思ってしまう。

すると、御使いが天からイエスに現れて、イエスを力づけた。(ルカ22:43)

 

イエスは再び離れて行き、前と同じことばで祈られた。
そして、また戻って来て、ご覧になると、彼らは眠っていた。ひどく眠けがさしていたのである。彼らは、イエスにどう言ってよいか、わからなかった。(39~40)

 

信仰生活の中で、主にどう言っていいのかわからない時がある。今は思うようにはならない弱さに在って、ペテロの心が染みる。また、イエスさまの優しさが染みる。「心は燃えていても、肉体は弱いのです。」

しかし、やがてこのままならない肉体を脱ぎ捨てて、思いのままに主に仕える日が来るのだ。


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