多くのジャンルの音楽がそうであるように、プログレッシブ・ロック(略してプログレ)と呼ばれるロック音楽にも様々な音楽性を持ったバンドが存在した。
有名どころでは、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、エマーソン・レイク&パーマー、ムーディ・ブルース、ジェネシス・・その他多数。
今回取り上げるキャメルというバンドもまた、プログレバンドとして捉えられていたと思う。
キャメルはイギリスのバンドで、結成は1971年だというから、長い歴史を持つバンドだ。
キャリアの割には、日本ではピンクフロイドやイエスなどに比べたら知名度はいま一つかもしれない。
だが、その音楽性は幻想的で美しくて深く、哀愁も漂う素晴らしいものだ。
私はキャメルを、個人的に「叙情派プログレ」として捉えているのだが、その美しく哀愁ただようサウンドは、日本人の感覚には非常にマッチすると思うので、もっと日本でも知られてほしいなあ・・・といつも思っていた。
男性だけでなく、あの美しいサウンドは女性にも受け入れやすいサウンドではないかと思っている。
「ゆるやかな飛行」という曲は、「ムーン・マッドネス」というアルバムに収録されていた曲で、原題は「Air Born」。
この曲がまた大傑作で、もうイントロが流れてきただけで、キャメルのファンタジー世界に包み込まれてしまう。
以前このブログで、タイフォンというバンドの「シスター・ジェーン」という曲を取り上げたことがあるが、「シスター・ジェーン」がややメロドラマが似合いそうな感じの曲だったのに比べると、この「ゆるやかな飛行」は風景が浮かんでくるような感じ。
しかも、夜の静かな風景。そして、幻想的で美しく、どこか物悲しい。
かといって、決してお涙ちょうだい系の曲ではなく、ロマンチックで、優しく包み込んでくる感じ。そして、やがて宇宙にでも吸いこまれていくような感じ。
フルートと鍵盤で静かに始まるイントロ、そしてエレキが入ってきて一気に盛り上がるイントロだけでも圧巻。
その後歌が始まるのだが、ボーカルパートのメロディラインはさほど起伏はなく、その分優しく歌っている。
ボーカルパートは、もやにつつまれたような感じで、優しくささやくような歌い方、ただようようなサウンド。
そして間奏に入ると、センチメンタルで繊細でロマンチックなサウンドで引き継がれ、曲の色合いを深くしてゆき、やがて深海や宇宙でも孤独でさまよっているような流れに。
やがて再びボーカルが入り、以前のボーカルパートよりやや盛り上がった感じになる。それは、この後にやってくる壮大なクライマックスへの序章。
そして・・・壮大で感動的なクライマックス。一本の映画を観終わったようなドラマ性があり、音の叙事詩ともいうべき世界がそこにある。
5分たらずの曲なのに、その5分の中に1本の映画がつまっているような濃密なドラマがある。まさにドラマチックなアレンジであり、サウンド。
キャメルのセンスや才能がほとばしっている名曲だと思う。
この曲は昔から大のお気に入りで、カセットでオリジナルベストを作る時は、この曲は欠かせない曲の一つだった。
特に、夜のドライブなどでこの曲がかかったら、言うことなしだと思う。
その時、周りに黒シルエットの山々がある高速道路や、下界を見下ろす山道や、霧がかかっている湖畔や、多数の星が輝く夜空が見えるシチュエーションの時にでも聴いた日には・・・まんまトリップしてしまいそうな幻想曲だ。
私にとっては「心の曲」のひとつであることは間違いない。
キャメルは2000年の9月に来日してたそうな。
悔しい・・知らなかった。
知ってれば、間違いなく見に行ったのに・・・。
ともあれ、日本でもっともっと知られてほしいバンドではある。
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