【般若心経その13】
=== 別の本の意味と解説その4 ===
*****(7)
① 三世諸仏 さんぜしょぶつ
② 依般若波羅蜜多故 えはんにゃはらみったこ
③ 得阿耨多羅三藐三菩提 とくあのくたらさんみゃくさんぼだい
【意味】
① 過去・現在・未来の三世に出現するすべての仏は
② 般若波羅蜜多(智慧の完成)を拠り所として
③ 無上の完全な悟りを成就している
【解説】
・大乗仏教では、ブッダ(仏)は普遍的なものであり、私たち
ひとりひとりの内なる存在として、自身のなかに見いだされる
ものと考えられている。「三世の諸仏」の背景には、こうした
事情がある。
・本文①の「三世諸仏」が主語で、③の「阿耨多羅三藐三菩提」が
目的語、「得」(得た)が動詞である。
・三世のすべてのブッダの悟りは「般若波羅蜜多による」と
協調しているところがポイントである。
・「阿耨多羅三藐三菩提」は「アヌッタラ・サンミャク・サンポーディ」と
いうサンスクリット語の音写語である。「この上ない完全な悟り」と
いう意味である。
*****(8)
① 故知般若波羅蜜多 こちはんにゃはらみった
② 是大神呪 是大明呪 ぜだいじんしゅ ぜだいみょうしゅ
③ 是無上呪 是無等等呪 ぜむじょうしゅ ぜむとうどうしゅ
④ 能除一切苦 のうじょいっさいく
⑤ 真実不虚故 しんじつぶここ
【意味】
① それ故に知るべしである。般若波羅蜜多の
② 大いなるマントラ 大いなる明知のマントラ
③ この上ないマントラ 比類なきマントラは
④ すべての苦を鎮めるものである
⑤ (このことは)真実であり、虚妄ではないから
【解説】
・観自在菩薩が舎利子に対し、最終的な伝授を行う部分に
さしかかってくるので「それ故に知るべし」という強い口調に
なっている。
・本文②~③では、般若波羅蜜多のマントラ(真言)の4つの
呼び方が書かれている。②の「神」は「神様」ではなく、
「きわめて優れた」という意味である。
・「大神呪」(偉大なる真言)⇒「大明呪」(偉大なる明知の
真言)⇒「無上呪」(この上ない真言)⇒「無等等呪」
(比類のない真言)と段階的に強調している。
・本文①~⑤の意味は「般若波羅蜜多のマントラは、
すべての苦を鎮める確実な信頼のおける効き目の
ある言葉である。なぜなら、矛盾なく、噓偽りのない
ものだから」ということである。
*****(9)
① 説般若波羅蜜多呪 せつはんにゃはらみったしゅ
② 即説呪曰 そくせつしゅわつ
③ 羯諦羯諦波羅羯諦 ぎゃていぎゃていはらぎゃてい
④ 波羅僧羯諦 はらそうぎゃてい
⑤ 菩提薩婆訶 ぼじそわか
⑥ 般若心経 はんにゃしんぎょう
【意味】
① 般若波羅蜜多の修行で唱えるマントラは
② すなわち、(マントラは)次のとおりである。
③ ガテー ガテー パーラガテー
④ パーラサンガテー
⑤ ボーディ スヴァーハー
⑥ 以上で、般若波羅蜜多のマントラ、提示し終わる
【解説】
・マントラは、「考える」を意味する「マン」に「手段」を意味する
「トラ」がついた言葉で「思考の手段」、すなわち「言葉」である。
・言葉の中で、祈りの言葉を「マントラ」と言う。
・マントラは一種の呪文なので、意味を言葉で説明することは
できない。そこで、③~⑤では音写語が使われている。
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(その14に続く)