「予想どおりに不合理」
ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房、2010年10月
従来の経済学では、人は経済的合理性に基づいて個人主義的に行動するものと考えられてきました。
ただ現実には、人は何か行動を起こすときにあらゆるケースを分析し、
合理的に判断を下して行動しいる訳ではないよね、
ということで誕生し発展してきたのが行動経済学です。
日常生活や投資活動において役に立つのではないかと考え、
10年前くらいからときどきこの分野の本を読んでいます。
「予想どおりに不合理」は行動経済学に関心を持ち始めた頃に買った本。
原題は「Predictably Irrational」なので直訳です。
ダン・アリエリー氏は行動経済学の第一人者と表紙裏に書いてあったので買ってみたのですが、
「はじめに」を読んでその生い立ちに驚かされました。
18歳のときに全身の70%に3度のやけどを負ったそうです。
ただその出来事とその後の入院生活を経験して、
行動経済学を研究しようと決めたそうなので、かなり前向きな方です。
本編では様々な実験や事例から、人が不合理な行動をとるものであることを導き出しています。
・パン焼き機を1種類だけ出しても売れなかったが、最初のパン焼き機より大型で、値段は1.5倍のモデルも出すと、最初の安いパン焼き機が飛ぶように売れた【相対性】
・人は数字(価格)の大小を判断する際、 最初に提示された数字(価格)を基準にして、それ以降に提示された数字(価格)の大小を判断してしまう【アンカリング】
・他に最善の利益をもたらす決定があったとしても、「無料!」がついていると、そちらを選んでしまう【ゼロコストのコスト】
・自分が所有しているものを高く評価してしまう【高価な所有意識】
・ただのビタミン剤でも「値段が高くて効き目のある薬」と言われて飲むと効果がある【価格とプラセボ効果】
これらは本書に挙げられている不合理な行動の一部ですが、全部思い当たる節があります。
投資活動においても、ある銘柄の株価を自分がチェックし始めたときを基準に高安を判断してしまったり、
自分が所有している株の株価が下がっても、購入価格以上の価値はあると評価してしまったりしがちです。
行動経済学を学んで、なるべく冷静な判断を心掛けてはいますが、
まだまだ、不合理な行動をとってしまうことが多いです。
いまは文庫版が出ています。
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