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> 「お父さん、ご苦労様。お弁当作ってきたよ。」
>
> そう、家族の帰省に際して父親が一人で順番を待っていたのでした。
> この夫婦に少しだけ密着してみたいと思います。
彼らは、どうも大分に帰省するみたいです。
根津たちは、テントの中をもう少し警戒のために歩くことにしました。
日が暮れてくると、スリや置き引きの被害が増えるほか、乗客も緊張の緩みから犯罪に巻き込まれやすくなるからです。
そこで、根津たちが聞くともなしに聞こえてくるのは次のような会話でした。
「日向に乗れば、もう帰ったようなもんさ。明日には大分に着くからな。」
「でも、列車に乗れるのかしら。」
「ほら、そのために朝から並んでこれを手に入れたんだから少なくとも子供だけでも座らせられるだろう。」
彼の胸には、「第2日向」と書かれたワッペンが見えました。
フェルト製のしっかりしたもので、1回きりの乗車に使うには少しもったいないような気もするほどの立派なものです。【このワッペンも晩年は簡略化され、紙製の安っぽいものになりましたが、昭和30年代はかなり立派なものが使われていました。)
「これが、乗車整理券と呼ばれるものでこれがあれば、改札も優先的に行われるからな、はぐれると大変なことになるから気をつけるようにな。」
父親が威厳を込めて妻と子に渡しながら諭します。
当時は、まだまだ父親の威厳は強く、怖いもの=「地震・雷・火事・親父」と呼ばれたものでした。
最近はどうなんでしょうね。「地震・雷・火事・女房」でしょうか?
彼らの乗車する列車は、1201レ 急行「第2日向」大阪始発 22:18発 宮崎行の列車です。
1等寝台車1両に、2等寝台車4両、1等車1両、2等車6両の座席と寝台が半々の編成で寝台専用列車が増えつつある中輸送力列車【いわゆる庶民列車として親しまれていました。】といっても、2等寝台車は当時は1両に54人も詰め込むのですから決してゆったりとした車内とはいえませんけどね。
時刻は19:00を少し回り、テント村にも照明がともり始めます。
再び彼らの様子を見てみましょう。
親子は、母親が作ってくれたお弁当を広げて食べ始めました。
大きな丸いおにぎりに、ゴマがまぶしてあるだけの粗末なおにぎり、おかずはと言えば少しこげた玉子焼きだけのそんな決して華やかとはいえない食事でしたが、親子3人はそれでも楽しそうに食事をしているのでした。
「おとう、この汽車に乗ったら明日は、けんぼうにあえるの?」
子供は、同い年のいとこに会うのが楽しみで仕方がありません。
「そうさ、明日には会えるぞ、義男がいい子にしていないとお年玉もらえないかもしれないぞ。」
「おとう、ぼくはいい子だもん。」
「そうか、そうか。義男はいい子だ。」
父親は、笑いながらも弟の子供に渡さなくてはならないであろうお年玉のことで頭が痛いのでした。
さて、この続きはまた後ほど
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> そう、家族の帰省に際して父親が一人で順番を待っていたのでした。
> この夫婦に少しだけ密着してみたいと思います。
彼らは、どうも大分に帰省するみたいです。
根津たちは、テントの中をもう少し警戒のために歩くことにしました。
日が暮れてくると、スリや置き引きの被害が増えるほか、乗客も緊張の緩みから犯罪に巻き込まれやすくなるからです。
そこで、根津たちが聞くともなしに聞こえてくるのは次のような会話でした。
「日向に乗れば、もう帰ったようなもんさ。明日には大分に着くからな。」
「でも、列車に乗れるのかしら。」
「ほら、そのために朝から並んでこれを手に入れたんだから少なくとも子供だけでも座らせられるだろう。」
彼の胸には、「第2日向」と書かれたワッペンが見えました。
フェルト製のしっかりしたもので、1回きりの乗車に使うには少しもったいないような気もするほどの立派なものです。【このワッペンも晩年は簡略化され、紙製の安っぽいものになりましたが、昭和30年代はかなり立派なものが使われていました。)
「これが、乗車整理券と呼ばれるものでこれがあれば、改札も優先的に行われるからな、はぐれると大変なことになるから気をつけるようにな。」
父親が威厳を込めて妻と子に渡しながら諭します。
当時は、まだまだ父親の威厳は強く、怖いもの=「地震・雷・火事・親父」と呼ばれたものでした。
最近はどうなんでしょうね。「地震・雷・火事・女房」でしょうか?
彼らの乗車する列車は、1201レ 急行「第2日向」大阪始発 22:18発 宮崎行の列車です。
1等寝台車1両に、2等寝台車4両、1等車1両、2等車6両の座席と寝台が半々の編成で寝台専用列車が増えつつある中輸送力列車【いわゆる庶民列車として親しまれていました。】といっても、2等寝台車は当時は1両に54人も詰め込むのですから決してゆったりとした車内とはいえませんけどね。
時刻は19:00を少し回り、テント村にも照明がともり始めます。
再び彼らの様子を見てみましょう。
親子は、母親が作ってくれたお弁当を広げて食べ始めました。
大きな丸いおにぎりに、ゴマがまぶしてあるだけの粗末なおにぎり、おかずはと言えば少しこげた玉子焼きだけのそんな決して華やかとはいえない食事でしたが、親子3人はそれでも楽しそうに食事をしているのでした。
「おとう、この汽車に乗ったら明日は、けんぼうにあえるの?」
子供は、同い年のいとこに会うのが楽しみで仕方がありません。
「そうさ、明日には会えるぞ、義男がいい子にしていないとお年玉もらえないかもしれないぞ。」
「おとう、ぼくはいい子だもん。」
「そうか、そうか。義男はいい子だ。」
父親は、笑いながらも弟の子供に渡さなくてはならないであろうお年玉のことで頭が痛いのでした。
さて、この続きはまた後ほど
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