Bokutoh ICU Blog

墨東病院集中治療科の日々の活動を広めていきます

ICUで集中治療と緩和ケアは両立するのか

2022-05-27 18:33:16 | 日記

みなさんは、緩和ケアと言えばどのようなイメージを抱くでしょうか?

 

我々が働く集中治療室(ICU)では、緩和ケアというと患者(家族)さんも医療スタッフも  まだまだ癌患者さんの終末期をイメージすることが多いようです。

 

そのため、ICUで緩和ケア介入を口にすると“治療撤退ですか”と主治医を始めスタッフも一瞬微妙な雰囲気になることがあります。

 

しかし、悪性疾患だけではなくても慢性心不全や認知症、救急疾患においても終末期が存在することが徐々にではありますが知られるようになってきました。

 

我々が日頃接することの多い脳血管・循環器疾患などの救急症例では、慢性疾患患者と異なりこれまで健常に過ごしてきた人がある日突然何の予兆もなく死を迎える急性期の終末期が問題となっています。

 

急性期の終末期医療における大きな問題は、患者の予後予測が難しい上に、患者家族も医療者も現実を受け入れまでの時間や患者家族と医療者の間で関係を構築するまでの時間が限られていることです。

 

そのような状況において、“生命を脅かす疾患による問題に直面している患者・家族のQOLを改善するアプローチ”としての緩和ケアが期待されています。

 

急性期の終末期では、苦痛のコントロールや患者(家族)の精神的ケアだけではなく、患者の予後予測やお試し期間(Time limited trial)、医学的無益などの医学的情報を考慮した上で緩和ケアチームとともに患者の意思決定支援を行ってゆきます。

 

当科では、ICU滞在日数が長い(あるいは長期化が予想される)症例や予期せぬ合併症でICU入室した症例、社会的・経済的な問題を抱えている症例を対象にICU多職種倫理カンファレンスを開催しています。

 

さらに、普段忙しくてなかなか多職種が集まれないことから、当科でユニークな取り組みとして上記多職種倫理カンファレンスの対象となる症例に対してICU入室時から情報を集め始めて入室後7日(1週間)時点で、集中治療科医師とICU看護師でミニカンファレンスを行っています。

 

このミニカンファレンスでは、現在の課題を明らかにした上で次の1週間でその課題を克服できるか(Time limited trialなど)を確かめます。ここで、解決できなかった場合には、1週間後の入室後14日(2週間)時点で先述したICU多職種倫理カンファレンスを行っています。

 

COVID-19パンデミック以降は、患者家族と医療者が接する機会が著しく減ってしまい患者の意思推定が難しくなっていますが、多職種連携チームで結束して少しでも患者の意向に寄り添った医療やケアを目指して活動しています。


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