僕は、高等学校時代、 妙な読書法を実行していた。 学校の往き還りに、 電車の中で読む本、 教室で窃かに読む本、 家で読む本、 という具合に区別して、 いつも数種の本を平行して読み進んでいる様にあんばいしていた。 まことに馬鹿気た次第であったが、 その当時の常軌を外れた知識欲とか好奇心とかは、 到底一つの本を読み了ってから他の本を開くという様な悠長な事を許さなかったのである。
「 読書について 」 11 - 八〇 (人生の鍛錬 P.74)
「 読書について 」 11 - 八〇 (人生の鍛錬 P.74)