眼の前に一歩を踏み出す工夫に精神を集中している人が、 馬鹿と言われ、 卑怯と言われ乍ら終いには勝つであろう。 四百年も前にデカルトが 「 精神には懐疑、 実行には信念を 」 という一見馬鹿みたいな教えを書いた。 人々は困難な時勢にぶつかって、 はじめてそういう教えに人間の智慧の一切がある事を悟るのであるo
「 文芸雑誌の行方 」 10 - 八八 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.64)
「 文芸雑誌の行方 」 10 - 八八 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.64)
現代の言語が非常に乱れているのは周知の事だが、 一般生活者には言語が乱れていようがいまいが問題は起らぬ筈である。 何故かと言うと言語という社会の共有財産は、 幾時の時代でも社会の生活秩序と喰い違わない様に出来ているからだ。 混乱した社会に生活する人々は混乱した言葉を使っているのが一番便利なのである。
「 言語の問題 」 7 - 一九九 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.53)
「 言語の問題 」 7 - 一九九 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.53)