阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

短歌 その4 (2011年)

2014-04-19 11:23:53 | 短歌(まとめ)

 

 

       安佐サッカー大会 

  せり合ったあかしの深きあしあとをならすトンボに春の風吹く

 

       悲震災

  双葉なる市町村会提供の絵皿かかげた十七の君

  優勝の幸せ胸に見た海がなぜ家をのむなぜ祖母をのむ 

  東電とかかわり深き場所なれどピッチの上のヘリぞかなしき 

  今月は会えぬ君から頼まれたJヴィレッジの良太の写真

 

       応援心

  90分叫び続けて1センチ押せたかどうか でもたぶん愛

 

       牧のうどん

  博多なる牧のうどんの汁吸いて麺増えゆくをひたすらに食う

 

        啓太君母上曰

  牛肉はノムラじゃないと 子供らの胃袋語る三篠川橋

 

       夏夕猫 

  川土手の石にひっついてる猫の気持ちわからぬ夏の夕闇

 

        すし蔵浜田本店

  イカ納豆置かぬ寿司屋にゃ行かないっと決まり文句で もう一皿じゃ

 

        李忠成は立ち上がりのゴール多ければ

  友の会ナルミさんらが見逃したチュン君ゴールは前半2分

  あっち側チュン君ゴールの解説は一番遠目がきくハルキ君

 

       サンカレー 

  八丁堀福屋の裏のサンカレーは水を飲まずに上あごで食え

 

       Nちゃんと打ち上げ

  O型と思っていたよとゆっている芋焼酎は二杯目にして

 

      タイミング 

  キーパーのキャッチのたびに声止めて左目で見る君の横顔

 

       あんかけスパ

  三口まで微妙なれどもじわじわと名古屋に染まるあんかけスパかも

 

       1年生

  GKのフィードをトラップふりむいて低く走ればヒビキの見せ場

  右上にループを決めてワッと叫ぶトワをし見れば物思ひもなし

 

        逃恋

  荷物のけ隣を指せば体よじりウナギのように逃げてゆく君

 

 


ランダムにサンフレ昔話 その10 洋次郎の海

2014-04-19 09:49:33 | サンフレ昔話

 数日前に洋次郎がパパになったといううれしいニュースが入ってきた。今回は洋次郎が故郷に錦を飾った2003年8月3日のクラブユース選手権決勝(Jヴィレッジスタジアム)について書いてみたい。ご存知のように3年前の大震災で大津波がこの地域を襲い、洋次郎の実家や家族にも大変な被害があった。また、この大会の会場であったJヴィレッジは東電の資金で作られており、今や原発事故と無関係に語るのは難しい。しかしながら、2011年3月11日のことをふまえて03年のJヴィレッジのことを書くのは、私の能力を超えている。そこで03年当時書いた文章をそのまま読んでいただくことにする。したがって、内容がおちゃらけているのはご容赦いただきたい。選手の説明を本文に挿入するのは面倒なので、最初に予備知識として書いておく。当時のチーム構成は、3年に田村祐基、西山貴永、田坂祐介、2年が藤井大輔、洋次郎、一誠、森脇、くわしん、佐藤アキ、冨成慎司、大屋翼、1年に槙野というのが主なベンチ入りメンバー。2年前田俊介はJヴィレッジに入ってから怪我して離脱、1年柏木陽介はまだベンチ外だった・・・

 土曜日の平塚でのゲーム前、ユースの準決勝はとっくに終わってるはずなのにS子さんも知らないし情報が入って来ない。メインスタンドの向こうに夕焼けの富士山が美しかったけど、ちょっとイライラしながらサポの後ろに加わった。

 ゲームは相手前半唯一のシュート決められてこっちは動き悪い。一人だけ元気で動きのいい茂木はシュート入らん、ってぶつぶつ言いながらハーフタイムの集合場所にしてたS子さんの席に行ったけど見当たらない。しばらくそこでぼんやりしてたら、サポのたすきの中から走って戻ってくるのが見えた。かなり向こうから、いい知らせだとわかった。「勝ったよ、Vゴールだって!」 なんとS子さん、サポの中にいた吉田安孝さんに思い切って聞いてみたそうで、そしたらゴリさんに電話してくれたそうだ。私にはそういうことはできんな。昨日の朝、中電坂Gでトップの前日練習見てそのまま海田市から鈍行で東へ向かったから、家を出るときはメンバーわからず幕3枚(龍朗、洋次郎、ユース必勝)ともカバンに入ってる。もしユース負けてたら1枚も出さずに無駄に持ち運んだ事になるところだった。トップはぶさいくなゲームでそのまま1点が返せずタイムアップ。でも、私は落ち込んではいられない。ブーイングし始めたサポから抜けて自分の荷物まとめてS子さんの下田幕のところへ。相手サポは「ラララ~」って勝手にシンドバッド歌ってる。幕をくるくる巻くの手伝って外へ。

 シャトルバスは出たばかりで、Yさんから満員にならないと出ないと聞いてたのでタクシー拾って平塚21時29分発の東京行きに間に合った。「品川が好き」というS子さんの意見で品川で乗り換えて御徒町でS子さんと別れてカプセルホテルへ。滞在時間が短いからネットカフェでもいいんだけど、昨夜も大垣夜行で汗ベトベト足パンパンだから、風呂入ってお尻以外のところつけて寝たい。フロの中で今日一日を振り返ると、トップは全然ダメだったけど、久しぶりにS子さんや運良く東京駅で新潟へ向かう栗原ファンのYさんにも会えたし、そして何より、ユースの勝利で帰りの夜行に乗らずにすんでフロに入れて明日はJヴィレッジのスタジアムで決勝見れる。昨日は中電坂Gの前日練習で龍朗も洋次郎も入ってなくてH軍団の人にぶつぶつ言っちゃったけどね、平塚だけで帰る人には悪いことしちゃったな・・・。カプセルに戻ったら11時半、5時半にアラームをセットして、まあ、ぐっすり寝たと思う・・・

 ふと目がさめたら4時18分、常磐線の始発に間に合う。早く行って情報収集するのもいいかなと思って急いでカオ洗って着替える。もちろん洋次郎の35番レプリカ。外へ出て、線路と平行に上野駅に向かって歩く。改札で18きっぷに8月3日の日付入れてもらって9番ホームへ。前の方にロングシートじゃない車両あったからそこに座る。同じボックスに座った人が話しかけてきて、その人は柏サポだという。Uちゃんはレプリカ着た私と一緒に歩きたくないと言うけれど、レプリカ目印に話しかけてくる人もいるから、レプリカ着ての一人旅も面白いと思うけどな。私は昨夜のJ1ファーストステージ最終節の結果知らないから聞いてみたらこの人も他所の結果は興味ないから知らないと言う。サンちゃんやケンさんの話してたら柏に着いて降りていった。

 7時48分高萩で下車。1本遅らせてもどうせいわきで一緒になるから、始発に乗れたときは降りてみようと思ってた。まず窓口で入場券を買う。昨日だったら洋次郎の誕生日だったのに、トップのへぼ試合を見たばっかりに・・・スポーツ紙買ったら、今日の相手は浦和ユース、J1はFマリのVってやっとわかった。10分後の次の電車に乗るために再びホームへ。女子高生のグループがこっち見てるから、わざと背中向けて「萩洋次郎」って洋次郎が書いてくれたサインを見せる。しっかり名前覚えとけよって感じだけど、広島で太郎さんはルンペンの名前だから、高萩にもそーゆー人がいたらイヤだな・・・

 さらに20分乗って、福島県の最初の駅が関所で有名な勿来、その次が植田、洋次郎の中学校と同じ名前で、実家もこのあたりなのかな。

 8時50分いわき着。駅前で朝食買って2両編成のワンマンカーに乗り込む。システムは芸備線と同じだけど、ドアの開閉は乗客がボタンで行うみたいで、「無人駅では、後ろの車両のドアは内側からは開きません」というアナウンスは独特だ。9時41分、木戸着。駅前の酒屋の向こうの三叉路を左に折れて歩いていく。ちょっと坂道を登って振り返ると水田の向こうに太平洋が広がっている。2年前に田森君を応援に来たときも見たはずの風景だけど、洋次郎のふるさとの海だと思うとちょっと違って見えた・・・

 15分歩くとJヴィレッジのセンター棟が見えてくる。ロビーに入るとダイスケの母と姉がいて、昨日は洋次郎のVゴールだった事を知る。トップのへぼい試合を選択したばっかりに、洋次郎17歳のバースデーVゴールを見逃してしまったと思いっきり後悔。そのあとは、スタッフが通りかかる度に笑顔で挨拶。塩さん、寮長さんと握手。トレーナーのナベさんによると、俊介が怪我で帰ってしまった以外は怪我人も出場停止もなく調子は上々とのこと。高橋シンさんも聞きもしないのに「大丈夫!」って自信ありそうだ。ゴリさん「勝ちます」こっちはあまり当てにならん。選手たちも一回チェックアウトしないといけないみたいで、荷物の移動のためロビーを横切った。洋次郎はまっすぐこっちを見て「こんにちは!」もう気合が入ってるようだ。ほかの選手も表情が明るい。去年のJユース決勝で長居スタジアムに入っていく選手たちを見送った時とは全然違う。今日は違う色のメダルがもらえるんじゃないかという期待がますます大きくなる。12時前までロビーでトーナメント表を眺めたりして時間をつぶしてからスタジアムへ移動。くぼ地の1番ピッチの横から遊歩道がつながっていて、アップダウンがけっこうあったけど、ヤマユリや桔梗が咲いてて荷物さえなければステキな山道だった・・・

 最後の上り坂を上がったらそこはメイン側の一般人は立ち入り禁止区域で、関係者受付の人になんでそっちから来るんだという目で見られたけど、わたしゃ案内板どおりにたどって来ただけだからね・・・。はいはい出て行きますよってアウェイゴール裏にある入り口に回って12時半の開門を待つ。パンフ売りのおっちゃんたちと話したら、やっぱりここは福島県、茂木の知名度抜群だね。そしてご当地選手の洋次郎も。また背中見せたらびっくりしてた。

 開門直前に前田カズと桂ちゃんのママも到着。2年前田森君の時の準決勝敗退が今までで最高の成績だったから、ユースがJヴィレッジのスタジアムでゲームをするのは初めて。ずっとここでやりたいと思ってたんだよね、って話をしているうちに開門。気がつけば50人以上の人、楽しみにしている地元の人も多いようだ。スポンサーのサントリーからダカラ、アディダスからスパイクのキーホルダーもらって、次は幕を張らなきゃ。今日は必勝幕のほかに、洋次郎幕も初めて出そうと思う。実はこの幕、ほかの父兄の目もあるし(トップの小野監督が3年生を全然評価してくれないからね、2年生ばっかりひいきしてって・・・)、ユースでは出さずにトップで出たときにデビューさせようと思ってた。だから、今回もユースで出すためじゃなくてトップで出る可能性を考えて持ってきていた。でも、さっき、洋次郎の海(勝手に命名)を見たときに、ここで出したい、という気持ちが強くなった。幕2枚持ってバックスタンドホーム側にしっかり張った。

 ホームのゴール裏は通れないからぐるりと回ってメインホーム側のペナのあたりに荷物を置く。桂ちゃんパパやウマパパも今回は行けるんじゃないかと口をそろえる。トオルも私のところに来て、今回20人(今は俊介帰って19人)のメンバーに入れなくて自費で来たと言う。コウジや駒野も1年生の夏はBチームで全広島に出てたんだよって得意の昔話をしてたらピッチから槙野が近づいてきて、「フラッグ余ってませんか?」って。どーしてか聞いたら、ゴリさんのシナリオでは、V決定の瞬間、槙野がフラッグ振りながらピッチに乱入する事になってるらしい。ゲーム前にそういう話をしてるところがゴリさんらしいけど、そんな事してもいいんだろーか?とにかく、ロスタイムにベンチ横に私のフラッグ持って行く約束をした。

 1時57分、選手入場。そのときバックスタンドの後ろから10発ほど花火が上がる。私も気合を入れ直してフラッグを掲げる。コイントスに勝った桂ちゃん向こうのピッチ取って前半はこっちに攻める。キックオフ直後から、洋次郎がサイドにいいパス出して何度もチャンス作る。馬屋原のポストプレーから西山のドリブルも出ていいリズムになってきた。最近守備で苦戦してる田坂も前でプレーしてるから問題ない。「まだこれからだ、顔上げろ」相手選手の声が飛ぶ。まだ0-0なのに、かなりのプレッシャーを受けているようだ。勝負には相手の嫌な事をするって要素が重要だっていつも言ってるんだけどね、洋次郎はそういう事がわかってる選手で、きれいに点を取ろうなんてあまり考えてないようだ。今日の洋次郎はピッチのどこにでも顔を出してしつこく相手にプレスかけて、たちの悪い借金取りのよう。相手からは鬼のように見えただろうね。

 前半30分、左サイド一誠の前のスペースに逆サイドから大きなパスが出て、中へのファーストタッチでDFを抜き去りGKと1対1、左足のシュートは中腰になったGKが前に出した両手をかすめるようにゴール右上のネットゆらした。 一誠らしい、気持ちの入ったまっすぐなシュートだった。一誠ふり返って大声出しながらベンチに走ってくる。ほんとに嬉しそう。私もうれしい。チャンピオンシップ、3度の天皇杯決勝、去年のJユース、タイトルのかかったゲームで私の見たゲームはことごとく無得点。初めて見る、タイトルへ向けてのゴールだった。

 その後も一方的に押しまくって、西山や馬屋原の惜しい場面もあった。守備はほとんど中盤で片付けて佐藤アキは声出すだけ。そして37分、左CKからのこぼれを田坂が押し込んで2点目。ユースに入った頃の田坂はフィニッシュのところで技におぼれて失敗することが多かったけど、最近こういうゴールが増えてきたのはいい傾向じゃないかな。このゲームは40分ハーフ給水付で、2分のロスタイムを経て2-0でハーフタイム。2点差は油断できないけれど、プリンスリーグの時とは見違えるような動きで、選手たちが頼もしく見える。落ち着かないけど焦っても仕方ないから私も腰をおろして給水タイムにした。

 後半が始まると、さすがに相手も必死になって攻めてきて自陣でゲームをする時間が長くなった。しかし、洋次郎と後半から入った田村がボール追いかけて決定機を与えず、2-0のまま時間が過ぎて、いや何回時計見ても時間がたたなくて困ったけど、とにかくゲーム終盤へ。20分の給水のあたりから相手が落ちてきて、再びこっちのペース。田村が何度もチャンス作って72分に自分で決めて3点目、優勝をぐっと引き寄せた。79分にレフェリーがロスタイムの合図を出すのを見てフラッグをベンチの後ろに落として槙野に目で合図、あとはタイムアップを待つだけだ。

 初優勝の瞬間、槙野はすぐには出て行かずに中央での挨拶が終わってからベンチ全員がダッシュ、スタンドにいたトオルも加わった。歓喜の輪の中に私のフラッグがあるのがうれしい。よく、そのきちゃない旗をなんとかしろって言われるんだけどね、双子や駒野や洋次郎のユース時代のサインが入っていて、Jヴィレッジのスタジアムのピッチのど真ん中で槙野が振ってくれた旗だから、そう簡単に換えるわけにはいかないんだよ・・・。ゴリさんは、優勝のシナリオを書いてただけあって、胴上げのとき空中で変な踊りを踊ってた・・・

 

(まずベンチのメンバーだけで喜んでから)

(ピッチ中央へ)

 閉会式、待望の優勝メダル、そして副賞が結構多い。桂ちゃんから並んでる順番に受け取っていったら、相馬の馬追いが描かれた双葉地方町村会提供の優勝絵皿は洋次郎の番。これは地元出身の洋次郎にぴったりだね。洋次郎受け取って高々とスタンドにかかげたあと、落としそうになっておっとっと、危なかった。このとき、スタンドのサポと多分ゴリさんの脳裏には9年前のチェアマン杯の悪夢が甦った。(落として割った犯人と噂されたゴリさんは今でも無実を主張している。)

 記念撮影を何枚も撮って、最後は父兄も降りて行ったけど、サポはピッチに降りるわけにはいかないから、幕を外して外で待つ。でも、胸が一杯で洋次郎には「おめでとう」ってひと声かけただけ。バスを見送って、再び遊歩道をセンター棟に向かって歩く。人気のない道端で見事な花をつけているヤマユリが、まだ世間にはあまり知られてないけれど素晴らしいプレーを見せてくれるユースの選手たちと重なって見えた。

 

 センター棟で土産にJヴィレッジサブレ買って、S子さんに優勝の報告の電話かけたあと、再び木戸駅に向かって歩く。朝来たときよりずっと、洋次郎の海が美しい。これからここに来るたびに、17才になったばかりの洋次郎のプレーを思い出すだろう。



 木戸駅17時49分発の電車で帰路につく。ここから広島までは18きっぷだと22時間だけど、勝ったあとは頭の中でゲームをリプレイしてればいいから来るときよりはずっと楽。いわき駅の食堂街でラーメン食って(洋次郎にうまい店聞くの忘れた)、再び電車に。勝田でイベント帰りの人がどっと乗ってきたけど全然苦にならない。臨時の夜行の始発の品川駅で、座席の夜行で変な格好で寝ると背番号が痛むから35番ユニ脱いでていねいにしまった。次はトップの試合でこのユニ着たいな・・・。若者たちがホームでだらっと待ってたけど、私はまだまだ元気。結果がよかったから、私も品川駅が好きかもしれない。