「おおすっとん」これは私より上の世代の、しかも方言だろうか。最近あまり聞かなくなった言葉だ。耳で聞いたのはもう何年も前、福山出身の叔父が地元出身のレフェリーの判定について「おおすっとんバァやっとる」と怒っていた。バァは「~ばかり」という備後弁で、もちろん「おおすっとん」はあまり良い意味ではない。「すっとんきょう」の後ろがとれた形だろうか、意味も「頓狂」に近いと思われる。備後だけではなく、広島でも昔はよく聞いていた言葉だった。語源が頓狂だとすると、
頓狂→すっとんきょう→すっとん→おおすっとん
となったはずで、「すっとん」の用例を捕まえたいと思っていた。すると最近読んでいる上方狂歌に「すつとん」が出てきた。「狂歌かゝみやま」から引用してみよう。
花の歌の中に 紫笛
すつとんと腰を抜かした手まり桜さそふ嵐におとすなおとすな
これは腰を抜かした時、また鞠を落とす表現として「すつとんと」と詠んでいる。ということは現代だと「ストンと」だろうか。ストンと落ちる落差を表現したという可能性もあるかもしれないが、「おおすっとん」とは遠いかな、残念ながら外れだったようだ。でも、ここまでを書いておいて、有効な用例を追記できる日を待つことにしよう。