栗本軒貞国詠「狂歌家の風」(1801年刊)、今日は冬の部から三首、
初冬
今朝ははや板ひく山もかんな月しらけかけたる横雲の空
残菊
添竹の杖にすかりてよはよはと霜をいたゝく翁くさかも
寺冬枯
こからしの御剃刀をいたゝいてかみなし月の寺の冬かれ
今日は立冬ということで、冬の部の最初の三首を見てみよう。一首目は「板ひく」「かんな」はすぐにわかる。「しらけかけたる」にも鉋の縁語があるはずと調べたら、「しらける」の前の項目に「精(しら)げ鉋」というのがあり、これは仕上用の刃の薄い鉋だそうだ。この「しらげ」という言葉は「精げ米」(しらげよね)とお米にも使うようだ。するとこの歌は、神無月の朝、山に精げをかけて横雲は鉋屑、という趣向だろうか。
二首目の「翁くさ」は山野草のオキナグサではなく、菊の別名。杖にすがりて弱々と霜をいただく、から残菊を白髪の翁に見立てている。
三首目は「寺冬枯」という題。御剃刀は真宗で「おかみそり」だけど、そしたら一文字足りない、おんかみそりと読んでおこう。お寺の冬枯れの景色を、木枯らしの御剃刀で髪無し月と詠んでいる。
今日は立冬にしては暖かい朝だけど、一瞬寒風が吹き過ぎるような三首だっただろうか。