阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

狂歌家の風(9) しらけかけたる

2018-11-07 10:04:08 | 栗本軒貞国

栗本軒貞国詠「狂歌家の風」(1801年刊)、今日は冬の部から三首、

 

     初冬

 今朝ははや板ひく山もかんな月しらけかけたる横雲の空



     残菊 

 添竹の杖にすかりてよはよはと霜をいたゝく翁くさかも



     寺冬枯 

 こからしの御剃刀をいたゝいてかみなし月の寺の冬かれ

 

 今日は立冬ということで、冬の部の最初の三首を見てみよう。一首目は「板ひく」「かんな」はすぐにわかる。「しらけかけたる」にも鉋の縁語があるはずと調べたら、「しらける」の前の項目に「精(しら)げ鉋」というのがあり、これは仕上用の刃の薄い鉋だそうだ。この「しらげ」という言葉は「精げ米」(しらげよね)とお米にも使うようだ。するとこの歌は、神無月の朝、山に精げをかけて横雲は鉋屑、という趣向だろうか。

 二首目の「翁くさ」は山野草のオキナグサではなく、菊の別名。杖にすがりて弱々と霜をいただく、から残菊を白髪の翁に見立てている。

 三首目は「寺冬枯」という題。御剃刀は真宗で「おかみそり」だけど、そしたら一文字足りない、おんかみそりと読んでおこう。お寺の冬枯れの景色を、木枯らしの御剃刀で髪無し月と詠んでいる。

 今日は立冬にしては暖かい朝だけど、一瞬寒風が吹き過ぎるような三首だっただろうか。



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