カトリック情報 Catholics in Japan

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ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父23 帰天

2018-08-24 17:39:14 | ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父
『愛と潔白の殉教者 ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父』企画:デルコル神父 文:江藤きみえ 23

 ふたりが殉教したのは、1930年の2月25日でした。その死体は、すぐみつけられ、3月4日にシュチョウに運ばれました。まず6日にカラヴァリオ神父の葬式が行なわれて、ホサイの神学校に葬られました。次いでウェルシリア司教の葬式が行なわれたのは、3月13日です。葬式というよりも、凱旋の雰囲気がただよっていたと、みんなは言いあいました。墓は、司教座聖堂の庭にあります。まもなく、ふたりのとうとい殉教は、ゆたかな恵みの雨をふらせはじめました。

 殉教があってから7か月が過ぎていました。ヴェルシリア司教のあとをついで司教に任命されたのは、カナゼイ神父です。

「いったい、どこに収まっているのだろう」とかれは、大切な布教地の書類を探しあぐねて、となりの寝室に退きました。

 ふと、ま夜中に目をさました新司教は、「おや?」と思いました。事務室から光がもれています。「きっとわたしは、石油ランプを消し忘れたにちがいない」と考え、戸を開けますと……!

 かれは、自分の目を疑わないではいられません。事務室のまんなかにヴェルシリア司教が輝く姿で立っているではありませんか!

「あなたの探している書類は、この戸棚の奥にありますよ」といって、ほほえんでいます。大急ぎで探すと、ちゃんとありました。新司教は、どうしても聞かないでいられないことを聞きま」た、「司教さま、あなたは、殺されたとき、すぐに天国に行かれましたか?」

 ヴェルシリア司教の姿は、そのときさらに輝きをまし、中国語の答がかえってきました、「チニク・カット」(「直接」の意味)。

 かれの姿は、その声を残して消えましたが、なんとすばらしいことでしょう!

ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父22 身代わり

2018-08-23 18:36:21 | ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父
『愛と潔白の殉教者 ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父』企画:デルコル神父 文:江藤きみえ 22

 匪賊たちは、まもなく竹やぶのもっと奥ふかく女性たちをかくし、宣教師たちを他の場所に移しました。何ごとかとしのび寄る村人に司教の声が聞えてきました。

「わたしは、もう年です、殺されてもかまいませんが、若いこの人は殺さないでください」

「だめだ、ふたりとも死刑だ」と匪賊の声。草むらからのぞく村人の目に天をあおいで祈るふたりの姿が見え、とたんに5発の銃声がとどろきました。かけつけようとする女性たちを妨げる匪賊の罵声!10分ほどして、ふたりの匪賊が死骸に近づき、その死を確実なものとするために、銃尻でめちゃめちゃに打ちはじめました。やがて、司教の頭骸骨はたたき割られ、カラヴァリオ神父の頬骨はうち砕かれて、今は見るも無惨な姿です。ここに訪れた他の宣教師が、ふたりの殺された場所に小さな十字架を立てて、めじるしにしましたが、それはあとのことです。

 匪賊がどんなにかくそうとしても、たちまち殉教の噂は広まり、遺体は掘り出されて、丁重にシニチョウに移されました。こうなったら、いつまで逃げおおせるものでもありません。ついに匪賊は、3人の女性を解放しなけれはならなくなりました。蒋介石の軍隊の手から無事に連れ戻されたとき、かの女たちは、いのちの恩人である司教の墓前にひざまずいて、感謝しました。

ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父21 残忍な匪賊

2018-08-22 14:16:20 | ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父
『愛と潔白の殉教者 ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父』企画:デルコル神父 文:江藤きみえ 21

 平気な匪賊は、「ふん、神なんか、そんなものに祈るより、このおれさまに祈れ」というと、かの女の兄に、顎をしゃくって、「おまえたちは帰れ」といいました。男の子といっしょにリンコンハウの町に逃げた兄は、すぐ父に手紙を書きました、「あの匪賊は、チャング・ハート・カイの命令で動いていると思います。そのことばで分りました」と。

 「さあ、岸にあがるんだ」と匪賊はどなりましたが、司教にはその力がありません。命じられて男の先生アントニオが船に戻って、司教を岸にあげました。匪賊たちは、うしろ手に縛りあげた宣教師を、竹の棒に結んで引きたててゆきます、「ざまあみろ、こうなっちゃ逃げられまい、観念して、さっさと歩け」

 銃の台尻が、宣教師たちをよろけさせます。

 近くの竹やぶに宣教師たちは引きすえられ、女性たちは、そこから3メートルほどの所に置かれました。ささやき合っている宣教師たちは、互いに最後の告白をしたと思われます。かれらは、そのあと、女性たちを眺めると、ひとみで空をあおいでみせました。天国の希望をはげますかのようです。ロザリオと十字架を握りしめて祈る女性たちに、荒々しい匪賊の腕がのびてきました、

 「なんだ、こんなもの」という声とともに、聖具は遠く投げとばされてしまいました。



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ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父20 受難

2018-08-21 16:09:57 | ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父
『愛と潔白の殉教者 ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父』企画:デルコル神父 文:江藤きみえ 20

 司教は、どうすることもできず、薄れゆく意識のなかから、かの女を見て、やっと2度くりかえしました、「信仰を強めてください」と。

《こんな不潔な匪賊の手におちるより、死んだほうがまし》と考えたマリアは、ほんのちょっと匪賊が手をはずしたすきに、さっと身をひるがえして川のなかへ! でも水は浅く、追いかけて飛びこんだ匪賊に、髪の毛と腕をつかまれて岸にひきあげられました。そこへ、クララとパウラもひつばられてくると、匪賊のひとりがいいました、

「おまえたちは、中国人のくせして、なぜ外人について行って死のうとするのか?おれたちのかしらチャング・ハート・カイが将介石を倒したら、女性なんかもう勉強もおしまいだ。恐ろしい罰が待っているぞ。とにかく、おとなしくついて来い。いうことをきかぬと、殺してしまうぞ」

 そのことばが終わらないうちに、マリアはひざまずいて祈りはじめました。それほど遠くない所にいた兄が、そのときの会話をあとで告げたところによると、匪賊はマリアに、

「おれさまに、ひざまずいてみせたって、むだだよ、どうせ、連れていくんだから」といったのです。

「悪党のおまえになんか、ひざまずくものか、わたしは、天のおん父である神の前にひざまずいたのさ。きっと神はおまえたちの魔手から救い出してくださるにちがいない」と、しゃくにさわった調子でマリアはやりかえしました。平気な匪賊は、「ふん、神なんか、そんなものに祈るより、このおれさまに祈れ」というと、かの女の兄に、顎をしゃくって、「おまえたちは帰れ」といいました。

 男の子といっしょにリンコンハウの町に逃げた兄は、すぐ父に手紙を書きました、「あの匪賊は、チャング・ハート・カイの命令で動いていると思います。そのことばで分りました」と。

ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父19 運命の日

2018-08-19 01:22:29 | ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父
『愛と潔白の殉教者 ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父』企画:デルコル神父 文:江藤きみえ 19

 翌年の2月になりました。司教さまが、一番遠いこのリンチョウの視察に来られるのです。カラウァリオ神父は大喜び、川をくだってシュチョウまでお迎えに行きました。途中で匪賊に襲われても、いのちは無事でした。

 司教と出かける前日、かれは、一日じゅうご聖体の前で祈りつづけました。当時チャング・ハート・カイ将軍が将介石に背いて内乱が起きていました。これに乗じたのは、匪賊です。とくにシュチョウからリンチョウのあいだで川や道を旅する人を悩ませていました。そのときまでは、教会の旗を船に立てれば、匪賊は手をつけなかったのです。

 さて、きょうは、いよいよ出発の日です。途中まで汽車で行き、それから翌2月25日の朝、教会の旗を立てた小船に乗りこんだのは、司教とカラヴァリオ神父のほかに、3人の女の先生とふたりの男の先生、ひとりの男の子と船頭ふたり、そして船の所有者の老女です。一行は祈りながら、冷い川をさかのぼって行きます。昼までは、なんとか無事でした。みんなはお告げの祈りをしました。

 急に騒々しくなり、罵声と乱れる足音に人々は、はっとします。

「止まれ!止まらぬと撃つぞ」とだれかが叫んでいます。

 やむなく船を岸に寄せた一向に、銃を突き出したのは、ぞっとするはど残忍な顔をした匪賊の一団!

「いのちがおしいなら500ドルよこせ」と、のどかな田園を地獄に変えてどなります。

 そんな大金をもっているはずもないのですから、この要求は口実にすきません。船に乱人した数人の匪賊が若い女性をみつけました、

「この外人の妻を取ろう」と匪賊。なかのひとりが、「あのときの、あまがいる」とにやりとしました。かれが前に学校に侵入し、共産党の宣伝をしようとして妨げられたのは、このひとりの女性のためでした。今こそ復しゅうのチャンスと思ったのです。今こそ復しゅうのチャンスと思ったのです。

 宣教師は、女性たちを渡そうとしません。どんなことかあっても守る覚悟です。司教は叫びました

「この人たちを取らないでください。教会の生徒です。何も悪いことをしていないのに、なぜ理由もなくこの子たちを奪おうとするのです?」

「渡さないならこの船を燃やすぞ!匪賊は、火をつけようとしますが、薪はまだくすぶっています。

 司教が火を消すと、怒った匪賊は、ふたりの宣教師を棒でなぐり、半死半生にして女性に襲いかかります。今はこれまでと、女性のひとりは息たえだえの司教の手にすがりました。匪賊は、司教の手を棒でたたいて、やっと引きだすのに成功しました。司教のかすかな声が悲しげにそのあとを追います、「ああ、その人に悪いことを、残酷なことをしないでくたさい」。

 次に引きだされるのは、マリアの番です。「神さま、助けて! 助けて! マリアよ、わたしのために祈って!ああ、イエズス、マリア、ヨセフよ・・・」と叫ぶかの女を引きずりだした匪賊は、手におえず縛ろうとします。かの女が、その必要はないといいつづけるので、匪賊も縛るのをやめました。