『愛と潔白の殉教者 ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父』企画:デルコル神父 文:江藤きみえ 18
翌年の2月になりました。司教さまが、一番遠いこのリンチョウの視察に来られるのです。カラウァリオ神父は大喜び、川をくだってシュチョウまでお迎えに行きました。途中で匪賊に襲われても、いのちは無事でした。
司教と出かける前日、かれは、一日じゅうご聖体の前で祈りつづけました。当時チャング・ハート・カイ将軍が将介石に背いて内乱が起きていました。これに乗じたのは、匪賊です。とくにシュチョウからリンチョウのあいだで川や道を旅する人を悩ませていました。そのときまでは、教会の旗を船に立てれば、匪賊は手をつけなかったのです。
さて、きょうは、いよいよ出発の日です。途中まで汽車で行き、それから翌2月25日の朝、教会の旗を立てた小船に乗りこんだのは、司教とカラヴァリオ神父のほかに、3人の女の先生とふたりの男の先生、ひとりの男の子と船頭ふたり、そして船の所有者の老女です。一行は祈りながら、冷い川をさかのぼって行きます。昼までは、なんとか無事でした。みんなはお告げの祈りをしました。
急に騒々しくなり、罵声と乱れる足音に人々は、はっとします。
「止まれ!止まらぬと撃つぞ」とだれかが叫んでいます。
やむなく船を岸に寄せた一向に、銃を突き出したのは、ぞっとするはど残忍な顔をした匪賊の一団!
「いのちがおしいなら500ドルよこせ」と、のどかな田園を地獄に変えてどなります。
そんな大金をもっているはずもないのですから、この要求は口実にすきません。船に乱人した数人の匪賊が若い女性をみつけました、
「この外人の妻を取ろう」と匪賊。なかのひとりが、「あのときの、あまがいる」とにやりとしました。かれが前に学校に侵入し、共産党の宣伝をしようとして妨げられたのは、このひとりの女性のためでした。今こそ復しゅうのチャンスと思ったのです。
翌年の2月になりました。司教さまが、一番遠いこのリンチョウの視察に来られるのです。カラウァリオ神父は大喜び、川をくだってシュチョウまでお迎えに行きました。途中で匪賊に襲われても、いのちは無事でした。
司教と出かける前日、かれは、一日じゅうご聖体の前で祈りつづけました。当時チャング・ハート・カイ将軍が将介石に背いて内乱が起きていました。これに乗じたのは、匪賊です。とくにシュチョウからリンチョウのあいだで川や道を旅する人を悩ませていました。そのときまでは、教会の旗を船に立てれば、匪賊は手をつけなかったのです。
さて、きょうは、いよいよ出発の日です。途中まで汽車で行き、それから翌2月25日の朝、教会の旗を立てた小船に乗りこんだのは、司教とカラヴァリオ神父のほかに、3人の女の先生とふたりの男の先生、ひとりの男の子と船頭ふたり、そして船の所有者の老女です。一行は祈りながら、冷い川をさかのぼって行きます。昼までは、なんとか無事でした。みんなはお告げの祈りをしました。
急に騒々しくなり、罵声と乱れる足音に人々は、はっとします。
「止まれ!止まらぬと撃つぞ」とだれかが叫んでいます。
やむなく船を岸に寄せた一向に、銃を突き出したのは、ぞっとするはど残忍な顔をした匪賊の一団!
「いのちがおしいなら500ドルよこせ」と、のどかな田園を地獄に変えてどなります。
そんな大金をもっているはずもないのですから、この要求は口実にすきません。船に乱人した数人の匪賊が若い女性をみつけました、
「この外人の妻を取ろう」と匪賊。なかのひとりが、「あのときの、あまがいる」とにやりとしました。かれが前に学校に侵入し、共産党の宣伝をしようとして妨げられたのは、このひとりの女性のためでした。今こそ復しゅうのチャンスと思ったのです。