おいしいコーヒーのいれ方SecondSeasonⅤより
あの時の激烈な痛みは、今はもう遠い。こんなふうに痛みや苦しみを忘れていってしまうからこそ、人間は次もまた愚かな無茶を繰り返すんだろう。
けれど、すべての痛みや苦しみが均等に遠くなるものかといえば、それは違う。自分が原因の、自分に落ち度のある過ち──身の裡から突きあげるその苦痛は、他者からもたらされるものよりもはるかに深く心に食込み、はるかに長く残る。おまけに当人は、その苦痛が早く取り除かれることを必ずしも望まない。なぜなら、できるだけ長く続くことこそが罰則であり、罰に耐えることによって、罪を償っているかのように錯覚できるからだ。実際には何の償いにもなってなんかいないのに。
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