山手駅から根岸の丘へ

根岸線が桜木町駅から磯子駅までできたのは昭和39年（1964）で、そのとき山手駅もできた。 　現在、ホームから見える斜面には家がたくさん立ち並んでいるけど、何年か前までは樹木が生い茂っていたのよね。 　そんな風景を見て「ここは開発できないだろう」と思っていたのだが、あっという間にこんな風に変化してしまった。 　日本の宅地造成技術ってすごいよなぁ。 　さて、その山手駅だが、当初計画されていた駅名は「竹之丸」とか「立野」だったらしいね。鉄道延伸に関する戦前の新聞記事を読んでいると、そんな駅名が何度も登場しているのだ。 　もう一つ、根岸駅も最初は「競馬場」という駅名が予定されていたみたい。その理由は、近くの丘の上に有名な競馬場（現在の森林公園）があったからだ。 　しかし、戦前の桜大線（桜木町～大船間）計画は第2次世界大戦のため中止。 　戦争が終わってしばらくしてから、計画を練り直し、根岸湾の埋立と一体となって建設が始まった。 　埋め立て地に工場を誘致し、そこで働く従業員や工場で作られた製品を運ぶための輸送機関として、根岸線が敷設されたのである。 　そして汐見台には、従業員のための社宅も用意された。 　つまり、埋立・工場誘致・鉄道延伸・社宅建設が一体になって事業が進められたわけだ。 　そして磯子まで開通したのが昭和39年（1964）、東京オリンピックの年であった。 　当時を知る人の話によると、「竹之丸駅」とか「立野駅」ではちょっと格好がつかない、だから「山手駅」にしたいという動きが起こったそうだ。 　 　やっぱり「山手」というのはブランド地名なんだよね。 　山手とはほど遠いところに建っているマンションなのに、「＊＊やまて」なんて名前が付けられていたりするでしょ。 　この駅名も同じ。 　地図で山手町と山手駅の関係を見てみよう。 　赤いラインの中が山手町。 　「山手駅」との位置関係、どうですか、こんなに離れているのよね。 　この駅から急坂を登って行ったところに横浜国大付属小学校がある。 　その校歌には「山手の丘」なんて言葉は使われておらず、 　♪立野の丘の学校～ 　と歌われている。 　私は今でも山手の丘に行くのに、間違えて山手駅で降りてしまったりすることが度々ある。 　町のことをあまり知らない人も、よくここで迷っているらしい。 　ま、いまさら駅名を変えるわけにはいかないから、みなさん、気をつけましょうね。 　さて、そんな山手駅が一昨年、バリアフリー化のために駅舎を根岸寄りに移動させた。 　そして今年、今まで駅舎があった部分が空きスペースとなり、そこにコンビニができた。 　その裏は駐輪場だ。 　歩道も広くなり、歩きやすくなった。 　だが、工事はこれで終わったわけではない。 　案内板を見ると、来年の３月までかかるようだ。 　新しいタクシー乗り場や中央分離帯もできるようだ。 　なかなか便利になってくる山手駅だが、何年か前にはここから本牧、根岸の丘方面を巡回する小さなバス路線もできている。 　滅多に乗ったことがないので、この日は久しぶりに利用してみた。 　本牧へ行くルート（赤い線）は本郷町からガス山を登り、緑ヶ丘高校の裏を通ってアメリカ坂を下るのだが、問題は高校裏の道路。 　めっちゃ狭いのだ。 　しかも９０度のクランク状が３か所も連続する。 　非常に狭いところにバスを通すため、高校の敷地を削ったようだ。 　こうまでして赤いルートでいかなければならないのか。 　青いルートなら簡単で便利で安全だと思うのだが…… 　帰りは下り坂なので歩いて山手駅に戻る。 　綺麗な壁が続く中に、一か所、妙なものが挟まっていた。 　電柱みたいだな。 　あとから壁を造ったため、電柱を組み込まざるを得なかったようだね。 　そして、いつの日にか電柱も不要になり、途中から伐採したのか… 　山手駅に来たら立ち寄りたいのが「食堂やまて」。 　なかなか庶民的で居心地のいい店なのである。 　目玉焼きでビールを一杯、なんていう呑み方もできるが、この日は鯵フライ定食に。 　サクサクのコロモをまとった鯵がウマイ！ 　 　夜なら、隣の焼き鳥「だいわ」がお勧め♪ ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね