以前からずっと気になっている食堂がある。「ビジネス食堂 音羽」。 まず、ネーミングが変わっているでしょ。近隣の会社員や出張で横浜に来られた方の御用達店のような名前だが、その実体は典型的な大衆食堂だ。 行ってみようと思う方のために、まずは道順を説明しておこう。 石川町駅北口を降りたら、中華街方面へは向かわず、反対側の寿町方面へ進む。途中左側に「味香園」が見えてくるが、今回はショーウィンドーを眺めるだけで通り過ぎてください。牡蠣のお好み焼きなどに後ろ髪が引かれるけれど、強い意志を持って突き進む。すると、大きな通りに出る。これから向こうが寿町・松影町である。 この交差点を渡って右へ10数メートル歩くと、「ビジネス食堂 音羽」の看板が見えてくる。 店は雑居ビルの1階にある。冒頭の写真は大通りに面した側の入口。上の写真は店を右に回りこんだところの風景だ。 コチラは大通り側と違って、なんとも懐かしい雰囲気の店構えである。 ガラス戸越しに、店内の壁にさげられたお品書きが見える。 当然、こっち側から店に入りたい。 ガラス戸を引き、中に入るとコの字型のカウンターに、男の客が5人ほどへばり付いていた。店内の構造は牛丼の「吉野家」か、むかし野毛にあった大衆酒場「尾張屋」などと似ている。 こういった食堂では、たいてい黒板にチョークで「本日の日替わり定食」なんていうのが書いてあるものだ。 カウンターに頬杖をつきお品書きを観察すると、あった、あった、今日はアジフライ定食(550円)! ほかにメンチカツ定食(550円)、生姜焼き定食(600円)、サバ焼き定食(600円)、サンマ焼き定食(600円)、豚カツ定食(650円)もある。 ここはご夫婦2人の経営らしく、おじさんが調理場で、おばさんがカウンター内で給仕と洗い場、お会計を担当している。そのおばさんが新入りの私に声をかけてくれた。 「だんなさ~ん、ちょっと待っててねぇ。コチラを出したら伺いますから~。今日の日替わりはアジフライだよ~!」 その間を利用して、ここの客層を素早く観察する。どうやら男5人全員が一人客のようだ。職種は近くの現場から来た建設労働者やガードマン、タクシーの運転手、サンダル履きの事務員だ。 こんな客層に、気さくで元気なおばさんという組み合わせ。典型的な大衆食堂の雰囲気を醸し出している。私の好きな空間である。 しかも、この待ち時間に、おばさんは新入りに対しても気配りしているようで、向かい側の客にご飯を出しながら、帰りがけに私のところへお茶とスポーツ新聞を持ってきてくれる。定食屋のスーパーおばさんだ。 日替わり定食を注文。まずはご飯とアジフライが来た。フライに添えられているのは場末感漂うマカロニサラダとレタス。ソースの瓶はカウンターに1つしかないので、みんなで融通しあってかける。 これに冷奴、シジミの味噌汁、白菜のお新香が付いて「日替わり定食」の完成だ。550円! アジフライを頬張りながら、さらに観察を続ける。湯飲み茶碗とお新香の器はテンデンバラバラ。どれ一つ同じものがない。いいねえ~、こんなの。 そして、おばさんの動きには無駄がない。テキパキとしているのだ。肝っ玉かあさん的なところも感じられる。 しかも仕事が丁寧だ。お茶だって、ポットに入れてカウンターに置いておく、なんてことはしない。ましてやセルフサービスの自動給湯器なんかは使わない。 お客一人ひとりに、茶漉しを使って熱湯を注いでいるのだ。 洗い場はカウンターの中にある。だが、お湯が出ない。この寒い冬場に、冷たい水だけで食器を洗っていた。おそらく手はアカギレでささくれ立っているのではなかろうか。それでも不満を言うわけでもなく、明るく気さくに元気に働いている。「正しい定食屋のおばさん大賞」というのがあったら、この方に差し上げたいほどだ。 単品メニューには、こんなのが掲載されていた。 ・納豆(100円) ・塩辛(50円) ・生姜焼き(300円) ・カキフライ(300円) ・ハンバーグ(300円) ・アジ開き(300円) こんなのを肴に一杯やったらいいんではないかと思ったが、酒類のお品書きがなかった。どうやら禁酒の食堂でもあるらしい。 《参考■石川町駅北口周辺の安くて美味しい四天王》 ①喜久すし(JR高架下)の“ちらし寿司” 500円! ②「さなぎの食堂」(中区寿町2-7-7)の“日替わり定食” 300円! ③「味香園」(中区吉浜町2-18)の“ランチ” 650円! ④そして、ここ「ビジネス食堂 音羽」(中区松影町2-5)の日替わり定食 550円! ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね |
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ぜひ、行ってみてください。ちょっと勇気が要るけど。
◇フロ梅さん
懐かしいですよ。こういう定食屋さんがまだ残っているんですよ。
最近は寿地区に行ってないから、音羽食堂にもご無沙汰しています。
そろそろ行こうかなぁ