倒産回避コンサルタントからの救命ロープ

倒産回避コンサルタント・中逵努のブログです。
恩師村松謙一弁護士ご本人のブログではないことを予めご了解ください。

リストラに対する考察

2006年04月05日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年6月21日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

第2 安易な人員整理(整理解雇)は慎むべし

みんなで渡れば怖くないの掛け声よろしく、世間では
リストラの名を借りた安易な人員整理には厳しい
警鐘を鳴らす必要があろう。

1.会社経営者にとって、会社の従業員はいわば自分
の子供と同様である。
 いかに経営者といっても、当該従業員とその家族
の人生を左右するような独裁者的権限を与えられて
いるものではないし、決して支配者などではないので
ある。
 自分が助かりたいからといって、子供を見捨てる
ような親がどこにいようか。

 会社経営者としては、まず自己の食いぶちを減らし
てでも、子たる従業員の食事は確保してあげる姿勢
が肝要である。
 それをあの人とあの人は辞めてくれという名指しの
解雇は、最後の最後の手段でなければならないし、
労働法上も、色々な手を尽くした、その後での
「せざるを得ない」といった最後の手段であることが
必要である。
 整理解雇の適正要件としては、①客観的な必要性
逼迫性、②解雇回避の処置済み、③人選の妥当性
客観性、④労働者との十分なる協議との厳格な
4条件を全て満たす必要がある。
 現在行われているリストラの名のもとの整理解雇が
これらの4条件を全て満たしているかは、大いに疑問
が残るところである。
 そもそも従業員は、家族を守るために働いている
のである。
 その従業員の気持ち、生活を無視する権限は、
いくら会社経営者といえども与えられてはいない。

2.かといって、沈没しそうな船に潤沢な食糧などありは
しないことも十分に承知している。
 とすれば、乏しい食糧を皆で計画的に分け合って
食べるしかない。
 賃金を1人当たり20%ダウンすることで、5人に1人
を解雇しなくて済むのである。
 親たる経営者はもちろんのこと、従業員同士も
みんなで苦難を分け合い、1人の犠牲者をも出さない
工夫をすべきた。賃金が右肩上がりなどとは誰も
決めていないのである。ないものねだりは、もはや
やめなければならない。
 役員の報酬は、半減してもやむを得ないであろう。
何も一生そうしなければならないというのではない。
危機水準を脱するための1~2年の辛抱だ。

3.そこで今の会社の人件費等が現在の販管費総額の
約50%を超えているようだと、明らかに人件費水準は
高額傾向といえる。人件費の削減=賃金ダウンを
考える必要があろう。

 案の定、賃金ダウンの指示を受けて、会社に文句を
いう社員が出てくるであろう。
 そのような自己中心的社員は、沈没しかかっている
船の乗組員としては不向きであり、その時は、脱出
してもらって結構だ。
 要は、危機的状況下の会社は、会社全体で犠牲
(リスク)を分散することが肝要であり、何の落ち度も
ない特定少数の従業員を犠牲(スケープゴート)に
してはならない。

4.具体例として、従業員数100人規模の会社を想定
しよう。
 平均給与30万円(賞与割付済み、福利厚生費含む)
として、月額3000万円の人件費が必要となる。
このうち、20名の解雇を実施したとしよう。人件費と
して、月額600万円の節約になる。(年間7200万円)
 これに対し、全従業員に対して、平均15%(4万5千
円)の賃金ダウンをしたとする、月額450万円の節約
になる。(年間5400万円)
 併せて、銀行にも、金利の引き下げ協力依頼をする。
(銀行取引約定書第3条1項の公定歩合の引き下げ
による条件変更)
 ちなみに、従業員100人で人件費年間3億6000万円
規模の会社としては、年商は少なくとも50億円は超えて
いなければいけない。(粗利15%で7億5000万円、
販管費6億5000万円程度、営業利益1億円(売上高
の2%)程度とすれば、当該会社の借入金の限度は
せいぜい20~30億円前後であり、金利3%平均として
年間6000~9000万円を支払っている計算である。)

 この金利につき、3%を平均2%へと、1%のレート
ダウンを実施していただくことで、年間2000万円~
3000万円の金利引き下げ効果が期待できる。
 先の賃金ダウン5400万円と約3000万円の金利
引き下げ効果により、年間合計8400万円の経費削減
効果となり、20名の特定人のスケープゴートを出さなく
て済むのである。
 もちろん以上はひとつの例であり、具体的ケース毎に
経費削減効果は異なるであろうが、要は諸経費の
見直し、金利の見直し、返済期限の延長等の内外一体
となった会社支援で、1人の犠牲者も出さずに難局を
乗り切る努力が肝要なのである。

5.以上、人員整理の前に、金融機関等の債権者に
ついても、若干の犠牲を覚悟(=協力)していただか
なければならないのである。
 企業の再建は、企業にかかわる全ての関係者が
少しずつ犠牲を負い、その会社の復旧に尽力し、
軌道修正後完全に再建のめどが立った時点で、
当該犠牲分を取り戻していけばいいのである。
 債権者としても、目先の利益や損失に目を奪われ
てはならないのである。
 真の債権回収とは、北風と太陽よろしく、良き指導者
の言に耳を傾けることが第一義なのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする