書く仕事

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「ロスト・ケア」 葉真中 顕(はまなか・ あき)

2013年06月26日 10時32分36秒 | 読書
「ロスト・ケア」 葉真中 顕(はまなか・ あき)




これは面白かった.

介護保険制度が施行されて久しいが,結果的にはシステムの不備があり,あちこちにほころびが生じている.

「これからは介護ビジネスの時代だ」 と言われて華々しく発足したにも関わらず,多くの介護の企業が次々に倒産や売却を余儀なくされている.

そのような状況で一番被害を受けるのは介護を頼りとする老人とその家族であり,そこで働く現場の介護士である.

この深刻な社会問題に真っ向から取り組んだ社会派ミステリー,という感じで物語は始まる.

介護の現場の種々の矛盾や政府の行き当たりばったりの政策とその変化が次々に露呈する.

特にマスコミの無責任な追求が事態をさらに悪くする.

そのような政府の無策に鉄槌を与えるべく,ある介護士が殺人という方法で世の中に問いかけをする,という大胆なミステリーとなっている.

しかも,物語の最後で,え?,結局犯人は誰なの?

というどんでん返しがあるところが素晴らしい.

社会派,かつ本格ミステリーである.

新人とは思えない骨太で読みごたえ充分の作品です.


第16回2012年 日本ミステリー文学大賞新人賞作品.
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