書く仕事

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「満月の泥枕」 道尾秀介

2020年08月11日 14時33分06秒 | 読書
「満月の泥枕」 道尾秀介


前回の投稿が4月4日なので,4か月以上も読書感想をアップしなかった頃になる.
久々の投稿は,道尾秀介.

自分の落ち度のために大切な人を死なせてしまうという,やりきれない哀しみを抱えた主人公「二美男」
大切な人とは彼の大切な4歳の娘,「りく」だ.
二美男はペンキ塗装業を営んでいるが,うっかり仕事場のペンキ缶の蓋を閉め忘れ,仕事場でかくれんぼをしていたりくが,シンナーが充満した室内で窒息死してしまう.

この事件以来,すべてがうまくいかず,妻とも別れ,めちゃくちゃな退廃生活に陥っている.

そんな二美男と,ひょんなことから面倒を見る羽目になってしまった,10歳の少女「汐子」
汐子は二美男の兄の娘,つまり姪に当たるのだが,兄は死に,兄嫁は育児放棄してしまったことから,親せきから頼まれて汐子を引き取って養うことになったのだ.

幼い娘に死なれ,自分を苛みながら生きる二美男と,親と暮らせずに寂しいはずの汐子.
こんな二人が,ある殺人(未遂?)事件に関わってしまう.

当然,ミステリーなんだけど,道尾秀介さん独特の,人間模様が入り組む複雑な展開を見せる.
気が付くと,一つの殺人事件が,2つの事件になっているという,予測不能な人情ミステリー.

人は哀しみを糧として生きていけるのか?
自分の過ちで人を死なせたら,その罪はどうやって償えばよいのか.

結構,重たいテーマを掲げながら,物語のタッチはかなり,軽くてユーモアにあふれている.
この編の空気は道尾秀介さん独特のものだ.

コメント
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