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ソークラテースの思い出

2021年07月04日 | 日記
わたくしはギリシア語は読めない。それでも、岩波文庫のクセノフォーン『ソークラテースの思い出』の訳と注とが素晴らしい出来であることを疑わない。一流の香りが立っている。

手がけたのは佐々木理(ただし)である。講談社学術文庫からは、この著者の『ギリシア・ローマ神話』という本が出ていて、これは神話や文芸、古代文化に関心がある人ならぜひ読むべきだと思う。その奥付や解説(大林太良)の教えるところでは、佐々木は1900年生まれ。仙台で専門学校の教授をしたり、東北帝大大学院特別研究生の肩書を得たりした後、1950年に名古屋大学文学部教授となって定年まで勤めた。その後は帝塚山大学教授、椙山短期大学教授を歴任。1991年に亡くなった。

岩波文庫から『ソークラテースの思い出』が出たのは、1953年、名大に着任して4年目である。無論、訳業には名大以前から取り組んできただろう。仙台時代の蓄積に名古屋で磨きをかけて、満を持しての出版だったのだろうか。終戦前後のたいへんな時代だから、「ゆっくり学業にいそしむことができた」わけではないだろうが、出来上がったものを見て感じるのは、腰を据えてじっくり取り組んだ成果だなということである。

現在の大学の先生たちは、空襲や食糧難とは戦っていないが、書類仕事、校務、その他いわゆる「雑務」がとてつもなく増えているそうである。じっくり研究にいそしむ時間も体力もないという。