『ウォルテニア戦記』は現在XII巻[Ref-1]まで出版されています。例によって「小説家になろう」からのデビューでウェブ版もあります。
これは典型的というか昔懐かしいというべきスーパーヒーローが主人公です。190cmに近い長身で体重は100Kgを超えるというアントニオ猪木と同じような恵まれた体格を持ち、東洋の神秘的かつ実戦的な戦闘技術である日本古武術の継承者にして、(たぶん)趣味の読書とゲームから学んだ戦略眼および人心掌握や組織運営の見識をも併せ持つ、若干16歳の男子高校生。まるでコナン(Conan)の肉体的能力とアール・デュマレスト(Earl Dumarest)の冷静さを兼ね備えたような、これほど万能なヒーローも珍しいというほどの完璧なスーパーヒーローです。完璧過ぎて「俺ツエー系じゃないか」と苦情を言う読者もいるようですが、能力もないのに運の良さだけで危機を乗り切るようなヒーローよりも、危機を乗り切れるだけの能力を持つ主人公の方が、ストーリーに説得力があって私は好みです。
16歳でこんな完璧なはずがない? 確かに普通はあり得ないと思えそうです。でも人間の範疇を越えているわけでもなく、ありえないとは言えません。いくつかの分野において、若くして優れた能力を示す人間は歴史上にもいくらでもいます。私はむしろ、能力の高い仲間との出会いがちょっと都合良すぎるのではないかという方を感じました。主人公に人を見る目があるという点は助けになっているでしょうけど。具体的に言うと、ベルグストン伯爵、ゼレーフ伯爵、シグニス、ロベルトとの出会いは眼力によるもの、マルフェスト姉妹や厳翁達との出会いは偶然の賜物、リオーネ、ボルツ、エレナ・シュタイナーなどとの出会いは半々、といったところでしょうか。まあ能力の高い敵との出会いもあるので、拮抗して話がおもしろくなっています。
さて主人公の御子柴亮真(みこしば りょうま)はいきなり異世界に召喚されます。召喚したのは法術と呼ばれる魔術的な力を使う法術師です。目的は異世界人(彼らから見た異世界人、つまり地球人)を戦奴隷として使うこと。この世界では他の生物を殺すと殺した相手の力の一部が自分のものになるという法則があるのですが、その際の吸収率が地球人の方が高いので強い戦士に育てることができるのです。もちろんそんな強い戦士に反抗されては困りますから、召喚してすぐに反抗できないように服従の術式(第5章第3話に詳しい説明あり)というものをほどこされます[*1]。
ということで目の前には西洋風の甲冑にコリュス式兜、別名コリント式兜(Corinthian helmet)と斧槍(Halberd)で武装した4人の男と老齢の法術師が待ち構えていたのですが、実に実戦的な戦い方で危機を乗り切り逃亡します。なお4人の男は「身長と体格は亮真とさほど変わらない」というのですから、さすがに強国の精鋭ですねえ。でもアングロサクソン系なら普通でしょうか? そうでもないような。
召喚されたのは城の中でしたが、そこから脱出した主人公は生活のために冒険者となりました。そう、例によってこの異世界にもモンスターがありふれていて、それらを狩ることを仕事にする冒険者という職種があり、その依頼を仲介する冒険ギルドという組織も存在しました。
そして預金を預かってくれる銀行という機関も存在し、カード1枚に個体情報を登録[*2]しておけばいつでも引き出せます。おかげで持ち運べないほどの財宝をたまたま手に入れたとしても、銀行に預ければ安心という、地球の前近代だったらありえないような超便利な世界だったのです。
ではこの銀行について、他の作品世界との比較も含めて日を改めて考察してみましょう。
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Ref-1) 保利亮太『ウォルテニア戦記XII (HJ NOVELS)』ホビージャパン (2019/03/22) ISBN-10:4798618861
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*1) このように人間の意志を縛る術が存在するため、この異世界の奴隷の境遇は極めて絶望的なものだ。そしてこの術式にもいくつかのレベルがあり、地球人に使われるのは最高レベルの術式である。
*2) web版は固体情報だったが明らかに誤植。個体情報ってどんな情報かというと詳細は不明。DNA情報かな?
これは典型的というか昔懐かしいというべきスーパーヒーローが主人公です。190cmに近い長身で体重は100Kgを超えるというアントニオ猪木と同じような恵まれた体格を持ち、東洋の神秘的かつ実戦的な戦闘技術である日本古武術の継承者にして、(たぶん)趣味の読書とゲームから学んだ戦略眼および人心掌握や組織運営の見識をも併せ持つ、若干16歳の男子高校生。まるでコナン(Conan)の肉体的能力とアール・デュマレスト(Earl Dumarest)の冷静さを兼ね備えたような、これほど万能なヒーローも珍しいというほどの完璧なスーパーヒーローです。完璧過ぎて「俺ツエー系じゃないか」と苦情を言う読者もいるようですが、能力もないのに運の良さだけで危機を乗り切るようなヒーローよりも、危機を乗り切れるだけの能力を持つ主人公の方が、ストーリーに説得力があって私は好みです。
16歳でこんな完璧なはずがない? 確かに普通はあり得ないと思えそうです。でも人間の範疇を越えているわけでもなく、ありえないとは言えません。いくつかの分野において、若くして優れた能力を示す人間は歴史上にもいくらでもいます。私はむしろ、能力の高い仲間との出会いがちょっと都合良すぎるのではないかという方を感じました。主人公に人を見る目があるという点は助けになっているでしょうけど。具体的に言うと、ベルグストン伯爵、ゼレーフ伯爵、シグニス、ロベルトとの出会いは眼力によるもの、マルフェスト姉妹や厳翁達との出会いは偶然の賜物、リオーネ、ボルツ、エレナ・シュタイナーなどとの出会いは半々、といったところでしょうか。まあ能力の高い敵との出会いもあるので、拮抗して話がおもしろくなっています。
さて主人公の御子柴亮真(みこしば りょうま)はいきなり異世界に召喚されます。召喚したのは法術と呼ばれる魔術的な力を使う法術師です。目的は異世界人(彼らから見た異世界人、つまり地球人)を戦奴隷として使うこと。この世界では他の生物を殺すと殺した相手の力の一部が自分のものになるという法則があるのですが、その際の吸収率が地球人の方が高いので強い戦士に育てることができるのです。もちろんそんな強い戦士に反抗されては困りますから、召喚してすぐに反抗できないように服従の術式(第5章第3話に詳しい説明あり)というものをほどこされます[*1]。
ということで目の前には西洋風の甲冑にコリュス式兜、別名コリント式兜(Corinthian helmet)と斧槍(Halberd)で武装した4人の男と老齢の法術師が待ち構えていたのですが、実に実戦的な戦い方で危機を乗り切り逃亡します。なお4人の男は「身長と体格は亮真とさほど変わらない」というのですから、さすがに強国の精鋭ですねえ。でもアングロサクソン系なら普通でしょうか? そうでもないような。
召喚されたのは城の中でしたが、そこから脱出した主人公は生活のために冒険者となりました。そう、例によってこの異世界にもモンスターがありふれていて、それらを狩ることを仕事にする冒険者という職種があり、その依頼を仲介する冒険ギルドという組織も存在しました。
そして預金を預かってくれる銀行という機関も存在し、カード1枚に個体情報を登録[*2]しておけばいつでも引き出せます。おかげで持ち運べないほどの財宝をたまたま手に入れたとしても、銀行に預ければ安心という、地球の前近代だったらありえないような超便利な世界だったのです。
ではこの銀行について、他の作品世界との比較も含めて日を改めて考察してみましょう。
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Ref-1) 保利亮太『ウォルテニア戦記XII (HJ NOVELS)』ホビージャパン (2019/03/22) ISBN-10:4798618861
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*1) このように人間の意志を縛る術が存在するため、この異世界の奴隷の境遇は極めて絶望的なものだ。そしてこの術式にもいくつかのレベルがあり、地球人に使われるのは最高レベルの術式である。
*2) web版は固体情報だったが明らかに誤植。個体情報ってどんな情報かというと詳細は不明。DNA情報かな?
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