ソフィスト(9)の続き
アンティフォン(Antiphon)、[3)p57-61]、[4)p101-102]、[5)第7章]には同名の複数人物がいたようですが、その異同に関して文献3-5で違いがあります。書き出してみると次の6名が区別できます。
1) 前411年の四百人寡頭政(The Four Hundred)の一人で死刑にされた人物。アテナイのラムヌゥス区出身。「法廷弁論家3)」「弁論家4-5)」でもあったとされる。
2) 『四部作』と称される三組の模擬弁論作品を残した人物4,5)。
3) クセノフォン『ソクラテスの想い出』第一巻六章でソクラテスと対決するソフィスト4)。
4) 『真理』3-5)および『協和』3)『心の一致について』5)の著者3)
5) 『夢の解釈について』の著者5)。文献3では「夢判断などを主とした占師」と表現。
6) 劇作家として知られ、シシリイ島のシュラクサイにおいて、独裁者ディオニュシオス(Dionysius,405-367 B.C.)の怒りに触れて殺された人物3)。
文献5では1と2は別人の可能性が強いとしていますが、3と4では弁論家アンティフォンとしてまとめているようです。そして各文献で「ソフィストのアンティフォン」と呼んでいるのが1~6のどの人物を指すのか、どうも読み取りにくいのです。文献3では4の人物だけが確実にソフィストと呼べるとしており、文献4では3と4を同一人物として「ソフィストのアンティフォン」としているようです。文献5では4と5を「ソフィストのアンティフォン」としているようです。
ここで、1の政治家で弁論家のアンティフォンと4のソフィストのアンティフォンとの異同について、文献5では「こんにちでは、両者を区別すべきであるという共通了解が充分形成されているように思われる」、文献4では「今日では、「ソフィスト・アンティフォン」と「弁論家アンティフォン」を共通に理解する方向が優勢である」と、真っ向から対立しています。いやー、歴史の謎ですねえ。真理は時の娘、そして多産のこともある、なんてね。
さて『ゴルギアス』に登場する、ゴルギアスの宿泊先の主であり、ソクラテスの論敵ともなったカリクレス(Callicles/Kallikles)ですが、LとRを区別しない日本語では別人のカリクレス(Charikles)と混同しそうです。後者は前404年の三十人僭主(Thirty Tyrants)による政権の一人ですので、やはりその一人であったクリティアス同様、前者のカリクレスと似た思想の持主とも考えられます。
現時点でウィキペディアの記事を見てみると、日本語版では実在のカリクレスしか独立した記事がありません。逆に英語版ではプラトン著作の登場人物しか独立した記事がありません。ドイツ語版では両者ともあります。当たり前かも知れませんが、必ずしも英語版が一番充実しているというものでもないようです。
ソクラテスの論敵ともなったカリクレス(Callicles/Kallikles)について。
Callicles(英語版)
Kallikles(独語版)
実在のカリクレスについて。
Charikles(日本語版)
Charikles(独語版)
アンティフォン(Antiphon)、[3)p57-61]、[4)p101-102]、[5)第7章]には同名の複数人物がいたようですが、その異同に関して文献3-5で違いがあります。書き出してみると次の6名が区別できます。
1) 前411年の四百人寡頭政(The Four Hundred)の一人で死刑にされた人物。アテナイのラムヌゥス区出身。「法廷弁論家3)」「弁論家4-5)」でもあったとされる。
2) 『四部作』と称される三組の模擬弁論作品を残した人物4,5)。
3) クセノフォン『ソクラテスの想い出』第一巻六章でソクラテスと対決するソフィスト4)。
4) 『真理』3-5)および『協和』3)『心の一致について』5)の著者3)
5) 『夢の解釈について』の著者5)。文献3では「夢判断などを主とした占師」と表現。
6) 劇作家として知られ、シシリイ島のシュラクサイにおいて、独裁者ディオニュシオス(Dionysius,405-367 B.C.)の怒りに触れて殺された人物3)。
文献5では1と2は別人の可能性が強いとしていますが、3と4では弁論家アンティフォンとしてまとめているようです。そして各文献で「ソフィストのアンティフォン」と呼んでいるのが1~6のどの人物を指すのか、どうも読み取りにくいのです。文献3では4の人物だけが確実にソフィストと呼べるとしており、文献4では3と4を同一人物として「ソフィストのアンティフォン」としているようです。文献5では4と5を「ソフィストのアンティフォン」としているようです。
ここで、1の政治家で弁論家のアンティフォンと4のソフィストのアンティフォンとの異同について、文献5では「こんにちでは、両者を区別すべきであるという共通了解が充分形成されているように思われる」、文献4では「今日では、「ソフィスト・アンティフォン」と「弁論家アンティフォン」を共通に理解する方向が優勢である」と、真っ向から対立しています。いやー、歴史の謎ですねえ。真理は時の娘、そして多産のこともある、なんてね。
さて『ゴルギアス』に登場する、ゴルギアスの宿泊先の主であり、ソクラテスの論敵ともなったカリクレス(Callicles/Kallikles)ですが、LとRを区別しない日本語では別人のカリクレス(Charikles)と混同しそうです。後者は前404年の三十人僭主(Thirty Tyrants)による政権の一人ですので、やはりその一人であったクリティアス同様、前者のカリクレスと似た思想の持主とも考えられます。
現時点でウィキペディアの記事を見てみると、日本語版では実在のカリクレスしか独立した記事がありません。逆に英語版ではプラトン著作の登場人物しか独立した記事がありません。ドイツ語版では両者ともあります。当たり前かも知れませんが、必ずしも英語版が一番充実しているというものでもないようです。
ソクラテスの論敵ともなったカリクレス(Callicles/Kallikles)について。
Callicles(英語版)
Kallikles(独語版)
実在のカリクレスについて。
Charikles(日本語版)
Charikles(独語版)
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