小説投稿サイトである小説家になろう(または小説を読もう)には膨大な作品が載せられていて、とても全てに目を通すことはできませんが、私が今、気に入ってフォローしているのが『魔物の国の外交官』という作品です。
作品世界では1つの大陸に主要な4つの国があります。西のアルビオン王国(Albion)、北の神聖シュバルツシルト帝国(schwarzschild)、南の商業国家ルミエルージュ公国(Lumierouge)、そして主人公が転生した魔族の国テネブラ(Tenebra)です。人間族の3ヶ国間は牽制しあいながらも貿易も行うという普通の国家間の関係ですが、“強い者が偉い”という国柄の魔族の国テネブラと、魔族など人とは見なしていない人間族との間には根深い対立があります。そこを武力ではなく外交で解決していこうという理想に燃える主人公の物語です。そう、人が死ぬのはいやだ、という点で飛び込んだ異世界の常識とは少しずれているのは『本好きの下克上』の主人公と共通してますね。そこが魅力的なところも。
で、外交の裏づけとして重要な武力、いや国ではなく主人公の個人的武力もこの世界の最高レベルで、さらに現代世界からの科学技術や歴史における国家間交渉の知識等を持つ転生者という利点を併せ持つ主人公。あまりのスーパー振りで襲い掛かる危機をサクサク解決していくので、安心して読んでいられると言えばそうなのですが、はらはらどきどきしたい読者にはお勧めしません。
それと低年齢層にはお勧めしかねるシーンも多発しますので御注意を。いや絶対に18禁というほどでもないとは思いますが。
そして 現在、主人公は初めての大きな挫折に直面しました。明るくひょうひょうと仕事をこなしていた主人公が初めて罵倒の言葉を口にするほどの挫折を。我々の現代社会の常識に染まっていた転生者ゆえの隙と言えるのでしょうが、痛いですねえ。私の胸も痛いです。いよいよこれからが真の苦闘の始まりなのでしょうか。楽しみです。本来は人の死ぬのが嫌いな平和主義者なのに、いざ戦略を持って戦う場面では結構えげつない手段も冷静に使う、という主人公には何かデジャ・ビューを感じたのですが、そう、羅門祐人&中岡潤一郎『覇・信長記』の織田幸村でした。まあ他にもこういう軍師タイプの主人公はいそうですが、小説家になろうサイトの作品をざっと見た限りでは、あまり見かけなかったようです。
外交によって世界を救おうとする主人公は上田早夕里『華竜の宮』にも登場しましたが、これは現実の地球の未来の物語なので、存在する国家は百以上です。対して『魔物の国の外交官』の世界では主要4か国のみ。他に小国はあるかも知れませんが無視できる程度なのでしょう。各国の利害を利用して駆け引きをするにはちょっと国が少ないような気もします。1ヶ国でも強くなりすぎるとバランスが崩れて、強くなった国が我を通してしまう展開になりがちなので。逆に1ヶ国が弱くなりすぎても消滅してバランスが崩れる恐れがありますが、最新の戦争の結果は大丈夫なのでしょうか?
さて魔族というのは我々の世界の伝説に登場するような、実に多様な種族たちが含まれていて、これほど違う民族がどうして1つの国にまとまっていられるんだと思うほどの多様性があります。特に「この違いは社会問題になりそうだよなあ」と思ったのが寿命格差です。人間族(human)と同程度の寿命の獣人族からメタセコイア並みの樹精族(ドライアド,dryad)までいますし、主人公の一族も母親が200歳(第5話)、祖父が800歳以上(第4話)という家系です。世が世なら(人間族+獣人族)vs長寿命族という対立軸ができてもおかしくないところです。『まおゆう魔王勇者』にも様々な魔族が登場しましたが、こちらは8つの種族に分かれていて、各種族内での多様性は一つの生物種の常識的範囲に収まっていました。
たぶん『魔物の国の外交官』の世界では、人間族との対立が大きくて、魔族同士は互いに違っていてもまとまらざるを得なかったのではないでしょうか。しかし寿命の違う一族でも成人年齢は同じらしく、主人公も人間族同様に中学卒の年齢で就職することになります。「この世界は魔力の高い種族程寿命も長い傾向にあり、その反面子供が生まれにくくなる[4話]」とのことなので、20-30歳くらいで結婚しても百数十年たってようやく子宝誕生ということもあるわけです。確実ではありませんが、主人公の両親がそんなケースだと想像できます。この辺りは物語の主題でもないので、最後までさらっと流されるだけかも知れません。
なお魔族の主な例を挙げると、肉体的に難があり魔力に秀でた魔眼族(イビルアイ)、竜の血を引く角と瞳と背中の翼と強靭な尾が特徴的な竜人族(ファフニール)、青い金属質の肌に鋭い角と爪と蝙蝠のような翼の獄魔族(グレートデーモン)、本体は樹木で人の姿は端末に過ぎない上述の樹精族(ドライアド)、名前通りの吸血族(ヴァンパイア)に人魚族(ローレライ)に歌鳥族(セイレーン)、とまあ、ほぼ伝説通りに登場させています。
さらに獣人族も哺乳動物種と同じくらいいそうですが、虎や獅子は力強く、狼や黒豹は俊敏など、動物種の特性をほぼ持つようです。それで「平均的に闘争心が強い」というのも・・・、まあおとなしそうな獣でも野生は野生だからいいかな? でも闘争心が強いというのはつまり、人間族とか魔眼族と比較してということなのでしょうか? なお今のところ登場しているのは哺乳類だけだったと思います。文字通り獣であって、さすがに作者の言葉使いは正確ですね。
他には虎族や獅子族なみの力強さを誇るらしき鬼人族(メーガ)、テネブラからも孤高を保つ一族のエルフ族、テネブラの一員であり剣士を輩出するらしい黒妖精(ダークエルフ)などもいます。
で、いまだ謎なのは異なる種族同士の混血はどれくらい可能なのかということ。人間族とエルフの混血が可能だということは確かなのですが、他の組み合わせは不明です。
いずれにせよ主人公のスーパー外交官振りはなかなか楽しいです。
作品世界では1つの大陸に主要な4つの国があります。西のアルビオン王国(Albion)、北の神聖シュバルツシルト帝国(schwarzschild)、南の商業国家ルミエルージュ公国(Lumierouge)、そして主人公が転生した魔族の国テネブラ(Tenebra)です。人間族の3ヶ国間は牽制しあいながらも貿易も行うという普通の国家間の関係ですが、“強い者が偉い”という国柄の魔族の国テネブラと、魔族など人とは見なしていない人間族との間には根深い対立があります。そこを武力ではなく外交で解決していこうという理想に燃える主人公の物語です。そう、人が死ぬのはいやだ、という点で飛び込んだ異世界の常識とは少しずれているのは『本好きの下克上』の主人公と共通してますね。そこが魅力的なところも。
で、外交の裏づけとして重要な武力、いや国ではなく主人公の個人的武力もこの世界の最高レベルで、さらに現代世界からの科学技術や歴史における国家間交渉の知識等を持つ転生者という利点を併せ持つ主人公。あまりのスーパー振りで襲い掛かる危機をサクサク解決していくので、安心して読んでいられると言えばそうなのですが、はらはらどきどきしたい読者にはお勧めしません。
それと低年齢層にはお勧めしかねるシーンも多発しますので御注意を。いや絶対に18禁というほどでもないとは思いますが。
そして 現在、主人公は初めての大きな挫折に直面しました。明るくひょうひょうと仕事をこなしていた主人公が初めて罵倒の言葉を口にするほどの挫折を。我々の現代社会の常識に染まっていた転生者ゆえの隙と言えるのでしょうが、痛いですねえ。私の胸も痛いです。いよいよこれからが真の苦闘の始まりなのでしょうか。楽しみです。本来は人の死ぬのが嫌いな平和主義者なのに、いざ戦略を持って戦う場面では結構えげつない手段も冷静に使う、という主人公には何かデジャ・ビューを感じたのですが、そう、羅門祐人&中岡潤一郎『覇・信長記』の織田幸村でした。まあ他にもこういう軍師タイプの主人公はいそうですが、小説家になろうサイトの作品をざっと見た限りでは、あまり見かけなかったようです。
外交によって世界を救おうとする主人公は上田早夕里『華竜の宮』にも登場しましたが、これは現実の地球の未来の物語なので、存在する国家は百以上です。対して『魔物の国の外交官』の世界では主要4か国のみ。他に小国はあるかも知れませんが無視できる程度なのでしょう。各国の利害を利用して駆け引きをするにはちょっと国が少ないような気もします。1ヶ国でも強くなりすぎるとバランスが崩れて、強くなった国が我を通してしまう展開になりがちなので。逆に1ヶ国が弱くなりすぎても消滅してバランスが崩れる恐れがありますが、最新の戦争の結果は大丈夫なのでしょうか?
さて魔族というのは我々の世界の伝説に登場するような、実に多様な種族たちが含まれていて、これほど違う民族がどうして1つの国にまとまっていられるんだと思うほどの多様性があります。特に「この違いは社会問題になりそうだよなあ」と思ったのが寿命格差です。人間族(human)と同程度の寿命の獣人族からメタセコイア並みの樹精族(ドライアド,dryad)までいますし、主人公の一族も母親が200歳(第5話)、祖父が800歳以上(第4話)という家系です。世が世なら(人間族+獣人族)vs長寿命族という対立軸ができてもおかしくないところです。『まおゆう魔王勇者』にも様々な魔族が登場しましたが、こちらは8つの種族に分かれていて、各種族内での多様性は一つの生物種の常識的範囲に収まっていました。
たぶん『魔物の国の外交官』の世界では、人間族との対立が大きくて、魔族同士は互いに違っていてもまとまらざるを得なかったのではないでしょうか。しかし寿命の違う一族でも成人年齢は同じらしく、主人公も人間族同様に中学卒の年齢で就職することになります。「この世界は魔力の高い種族程寿命も長い傾向にあり、その反面子供が生まれにくくなる[4話]」とのことなので、20-30歳くらいで結婚しても百数十年たってようやく子宝誕生ということもあるわけです。確実ではありませんが、主人公の両親がそんなケースだと想像できます。この辺りは物語の主題でもないので、最後までさらっと流されるだけかも知れません。
なお魔族の主な例を挙げると、肉体的に難があり魔力に秀でた魔眼族(イビルアイ)、竜の血を引く角と瞳と背中の翼と強靭な尾が特徴的な竜人族(ファフニール)、青い金属質の肌に鋭い角と爪と蝙蝠のような翼の獄魔族(グレートデーモン)、本体は樹木で人の姿は端末に過ぎない上述の樹精族(ドライアド)、名前通りの吸血族(ヴァンパイア)に人魚族(ローレライ)に歌鳥族(セイレーン)、とまあ、ほぼ伝説通りに登場させています。
さらに獣人族も哺乳動物種と同じくらいいそうですが、虎や獅子は力強く、狼や黒豹は俊敏など、動物種の特性をほぼ持つようです。それで「平均的に闘争心が強い」というのも・・・、まあおとなしそうな獣でも野生は野生だからいいかな? でも闘争心が強いというのはつまり、人間族とか魔眼族と比較してということなのでしょうか? なお今のところ登場しているのは哺乳類だけだったと思います。文字通り獣であって、さすがに作者の言葉使いは正確ですね。
他には虎族や獅子族なみの力強さを誇るらしき鬼人族(メーガ)、テネブラからも孤高を保つ一族のエルフ族、テネブラの一員であり剣士を輩出するらしい黒妖精(ダークエルフ)などもいます。
で、いまだ謎なのは異なる種族同士の混血はどれくらい可能なのかということ。人間族とエルフの混血が可能だということは確かなのですが、他の組み合わせは不明です。
いずれにせよ主人公のスーパー外交官振りはなかなか楽しいです。
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