2/24のウクライナ侵攻のニュースには本当に驚きました。バイデン大統領はしきりに警告を鳴らしていましたが、まさか本当に一国を制覇狙いで侵攻するなど、冷静でしたたかそうなプーチン大統領が行うとは見ていなかったのです。バイデン大統領の厳しい警告も、そうしておいた方が万が一にも魔が差すことをも抑えるためには当然だろう、くらいの感覚でいたのです。
とある作家さんがウクライナ応援のエッセイをいくつも書いていたのですが、ゼレンスキー大統領から見る、緊急時のリーダシップ論(2022/03/03)というのがなかなか興味深かったです[*1]。
① 逃げない
② 死なない
③ 捕まらない
④ 隠れない
⑤ 口を出さない
⑥ 諦めない
⑦ ピンチをチャンスに変える
うーむ、なかなかの無理ゲーですね。オンライン時代ゆえに、国内に留まったままで死にも捕まりもせず、かつ隠れもせず国際会議に参加するなんてこともできるとしてもです。
ゼレンスキー大統領への高評価は AFP BB-News(2020/03/04)のゼレンスキー大統領、コメディー俳優から抵抗の象徴ににも書かれていますが、チャーチルに例えるというのはヨーロッパでは相当な称賛でしょう。
「必要なのは弾薬であって乗り物ではない」という言葉はかなり有名になってるみたいですが、大統領就任演説での「ウクライナの人々を笑顔にするためできることは全てやった」「今度は人々が泣かないためにできる限りのことをしたい」というのも、なかなか気が利いています。
先の作家さんのウクライナの皆さんに寄せて(2020/02/28)では「ミリオタの悪い癖で、現状のロシア軍装備と、ウクライナ軍装備との違いから~まさか、国境線でこれほど頑強に抵抗できるとは・・・」として国土防衛に掛ける意気込みの強さに感心し謝罪されていましたが、軍事専門家の普通の見解もそんなものだったようです。
NHK ニュースウオッチ9(2022/03/04,PM5:00 公開で小泉悠氏は、キエフ、やハリコフは、「あっという間に陥落する」と見られていたと話しています。MAG2 News での島田久仁彦「プーチンを煽りウクライナ侵攻させた“真犯人”は誰か?(2022/03/07)」でも「当初、3日ほどでロシア軍が全土を掌握し、ゼリンスキー大統領を追放するというように見られていましたが」と書かれています。
報道では「ロシア軍はあえてキエフを落とさずに交渉で目的を遂げようとしている」という見解も聞きましたが、当初は一撃で勝利するつもりが当てが外れた、というのがやはり普通の解釈でしょう。第2次大戦でのドイツ軍と同じく雷撃戦で一気に首都陥落、政権転覆、傀儡政権成立と既成事実化することが理想だったはずです。とはいえ、当時のドイツ軍と比べて攻撃側に不利な点もいくつか考えられます。
まず、今回の侵攻は奇襲にはなっていません。なにせ昨年後半から軍が集結し、警戒されていたのです。私のような平和ボケの日本人はともかく、当事者や軍当局は可能な限りの準備をしていたはずです。
しかも侵攻軍の動きは衛星のため隠蔽など不可能で、米国の軍事衛星からの情報もウクライナに提供されていることでしょう。直接支援ができないのだから情報くらい提供しないと逆にアメリカ国民が怒るよね。とはいえ公開情報だけでも隠せないくらいです。
日本経済新聞(2022/02/13)「ロシア軍、三方からウクライナ包囲,衛星写真で見る」
Wired(2022/03/15)「ウクライナ侵攻で存在感、宇宙の“目”となる人工衛星の価値と強まる懸念」
まあ敵の動きがわかるのはロシア軍も同様でしょうが、敵が来るかも知れない所に無駄な兵力を割くことが少なくなるので防御側に有利な気がします。
雷撃戦の主役は戦車で、ロシア軍といえば伝統的に戦車が強いという印象があるのですが、その戦車が徹底的に足止めされているようです。21世紀の兵器であるドローンから弱者の武器とされるモロトフ・カクテルまで活躍しているとか。
National Geographic (2022/03/16)ウクライナ市民が自作する「弱者の武器」モロトフ・カクテルとは。
最近も極東から戦車を載せた船が太平洋へでて黒海あたりへ運ぼうとしているらしいとの報道もありましたし、かなり消耗しているのでしょうね。
さらには未だに制空権を取れていないとのことで、その確たる理由は軍事専門家の間でも謎のようです。本来ならまず航空兵力や対空兵器を叩いてから陸軍を進めるのが現代戦のセオリーであり、そのための新鋭空軍機なども集結させていたとのことなのですが、なぜか最初の空軍による攻撃が不完全なままに陸軍を進めたと。
ウクライナ側を甘く見ていた。汚職で兵器の多くが張り子の虎だった。パイロット等の練度不足。兵士の士気が低い。など色々な推測が語られていますが真相は不明。しかしどうも、推測を断定的に語る人が多い気がして、うかうかと鵜呑みにしないように気をつけましょう。
NHK ニュースウオッチ9(2022/03/04,PM5:00 公開
今回の場合は、空爆も行っていますが、同時に初日から地上部隊が進行してきて、その後もあまりロシア軍の空軍の活動が活発ではないですよね。
その理由ははっきりはしないのですが、ロシア軍がかなり簡単にキエフやハリコフを陥落させられると思っていたのではないかという気がするのです。
News Week (2022/03/14)「ロシア軍の実力は「起きなかったこと」に注目すれば分かる」
原因は精密誘導ミサイルなど、高額兵器の数に限りがあることだ。同様に、効果的な訓練にはカネがかかるからか、パイロットはかなり経験不足のようだ。重要な兵器運搬システムも更新されていない。
長年の通説では、ロシアの軍事攻撃には「破壊的な」サイバー攻撃が伴うはずだった。だが、この脅威は実現していない。
Bloomberg [Yahoo News](2020/03/10)「ロシア軍、士気の低さが問題か-ウクライナで予想外の厳しい戦い」
ロシアがなぜ空軍力を控えめにしか行使せず、ウクライナが制空権を維持し自国の戦闘機が引き続き飛行できているのか、多くの軍事専門家は困惑している。ロシアはSU34など戦闘爆撃機に搭載される精密誘導兵器の使用に加え、ウクライナ側の通信を遮断する電子・サイバー攻撃も控えているようだ。
経済戦と外交戦での苦しさもさることながら、純軍事的にも今後は舐められそうな状況です。ウクライナにとっても世界にとっても幸いだったことですが。
なお私自身はミリオタでもなんでもなく現代の軍事知識など皆無ですから、そのつもりでお読みください。
----------------------
*1) ちなみにこの作家さんに注目したのは銀河英雄伝説論 大人になってから分かるヤンの非常識さを見つけて感心したからです。が、エッセイの多いこの人の数少ない小説が、最近私の好みで読み進めていたものだったのでびっくりした次第です。作家名にはほとんど注目しないたちだったので。
とある作家さんがウクライナ応援のエッセイをいくつも書いていたのですが、ゼレンスキー大統領から見る、緊急時のリーダシップ論(2022/03/03)というのがなかなか興味深かったです[*1]。
① 逃げない
② 死なない
③ 捕まらない
④ 隠れない
⑤ 口を出さない
⑥ 諦めない
⑦ ピンチをチャンスに変える
うーむ、なかなかの無理ゲーですね。オンライン時代ゆえに、国内に留まったままで死にも捕まりもせず、かつ隠れもせず国際会議に参加するなんてこともできるとしてもです。
ゼレンスキー大統領への高評価は AFP BB-News(2020/03/04)のゼレンスキー大統領、コメディー俳優から抵抗の象徴ににも書かれていますが、チャーチルに例えるというのはヨーロッパでは相当な称賛でしょう。
「必要なのは弾薬であって乗り物ではない」という言葉はかなり有名になってるみたいですが、大統領就任演説での「ウクライナの人々を笑顔にするためできることは全てやった」「今度は人々が泣かないためにできる限りのことをしたい」というのも、なかなか気が利いています。
先の作家さんのウクライナの皆さんに寄せて(2020/02/28)では「ミリオタの悪い癖で、現状のロシア軍装備と、ウクライナ軍装備との違いから~まさか、国境線でこれほど頑強に抵抗できるとは・・・」として国土防衛に掛ける意気込みの強さに感心し謝罪されていましたが、軍事専門家の普通の見解もそんなものだったようです。
NHK ニュースウオッチ9(2022/03/04,PM5:00 公開で小泉悠氏は、キエフ、やハリコフは、「あっという間に陥落する」と見られていたと話しています。MAG2 News での島田久仁彦「プーチンを煽りウクライナ侵攻させた“真犯人”は誰か?(2022/03/07)」でも「当初、3日ほどでロシア軍が全土を掌握し、ゼリンスキー大統領を追放するというように見られていましたが」と書かれています。
報道では「ロシア軍はあえてキエフを落とさずに交渉で目的を遂げようとしている」という見解も聞きましたが、当初は一撃で勝利するつもりが当てが外れた、というのがやはり普通の解釈でしょう。第2次大戦でのドイツ軍と同じく雷撃戦で一気に首都陥落、政権転覆、傀儡政権成立と既成事実化することが理想だったはずです。とはいえ、当時のドイツ軍と比べて攻撃側に不利な点もいくつか考えられます。
まず、今回の侵攻は奇襲にはなっていません。なにせ昨年後半から軍が集結し、警戒されていたのです。私のような平和ボケの日本人はともかく、当事者や軍当局は可能な限りの準備をしていたはずです。
しかも侵攻軍の動きは衛星のため隠蔽など不可能で、米国の軍事衛星からの情報もウクライナに提供されていることでしょう。直接支援ができないのだから情報くらい提供しないと逆にアメリカ国民が怒るよね。とはいえ公開情報だけでも隠せないくらいです。
日本経済新聞(2022/02/13)「ロシア軍、三方からウクライナ包囲,衛星写真で見る」
Wired(2022/03/15)「ウクライナ侵攻で存在感、宇宙の“目”となる人工衛星の価値と強まる懸念」
まあ敵の動きがわかるのはロシア軍も同様でしょうが、敵が来るかも知れない所に無駄な兵力を割くことが少なくなるので防御側に有利な気がします。
雷撃戦の主役は戦車で、ロシア軍といえば伝統的に戦車が強いという印象があるのですが、その戦車が徹底的に足止めされているようです。21世紀の兵器であるドローンから弱者の武器とされるモロトフ・カクテルまで活躍しているとか。
National Geographic (2022/03/16)ウクライナ市民が自作する「弱者の武器」モロトフ・カクテルとは。
最近も極東から戦車を載せた船が太平洋へでて黒海あたりへ運ぼうとしているらしいとの報道もありましたし、かなり消耗しているのでしょうね。
さらには未だに制空権を取れていないとのことで、その確たる理由は軍事専門家の間でも謎のようです。本来ならまず航空兵力や対空兵器を叩いてから陸軍を進めるのが現代戦のセオリーであり、そのための新鋭空軍機なども集結させていたとのことなのですが、なぜか最初の空軍による攻撃が不完全なままに陸軍を進めたと。
ウクライナ側を甘く見ていた。汚職で兵器の多くが張り子の虎だった。パイロット等の練度不足。兵士の士気が低い。など色々な推測が語られていますが真相は不明。しかしどうも、推測を断定的に語る人が多い気がして、うかうかと鵜呑みにしないように気をつけましょう。
NHK ニュースウオッチ9(2022/03/04,PM5:00 公開
今回の場合は、空爆も行っていますが、同時に初日から地上部隊が進行してきて、その後もあまりロシア軍の空軍の活動が活発ではないですよね。
その理由ははっきりはしないのですが、ロシア軍がかなり簡単にキエフやハリコフを陥落させられると思っていたのではないかという気がするのです。
News Week (2022/03/14)「ロシア軍の実力は「起きなかったこと」に注目すれば分かる」
原因は精密誘導ミサイルなど、高額兵器の数に限りがあることだ。同様に、効果的な訓練にはカネがかかるからか、パイロットはかなり経験不足のようだ。重要な兵器運搬システムも更新されていない。
長年の通説では、ロシアの軍事攻撃には「破壊的な」サイバー攻撃が伴うはずだった。だが、この脅威は実現していない。
Bloomberg [Yahoo News](2020/03/10)「ロシア軍、士気の低さが問題か-ウクライナで予想外の厳しい戦い」
ロシアがなぜ空軍力を控えめにしか行使せず、ウクライナが制空権を維持し自国の戦闘機が引き続き飛行できているのか、多くの軍事専門家は困惑している。ロシアはSU34など戦闘爆撃機に搭載される精密誘導兵器の使用に加え、ウクライナ側の通信を遮断する電子・サイバー攻撃も控えているようだ。
経済戦と外交戦での苦しさもさることながら、純軍事的にも今後は舐められそうな状況です。ウクライナにとっても世界にとっても幸いだったことですが。
なお私自身はミリオタでもなんでもなく現代の軍事知識など皆無ですから、そのつもりでお読みください。
----------------------
*1) ちなみにこの作家さんに注目したのは銀河英雄伝説論 大人になってから分かるヤンの非常識さを見つけて感心したからです。が、エッセイの多いこの人の数少ない小説が、最近私の好みで読み進めていたものだったのでびっくりした次第です。作家名にはほとんど注目しないたちだったので。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます